京都U-18DF川島功奨は考える葦である。“古都のパスカル”が踏み入れる思索の向こう側

京都U-18DF川島功奨は考える葦である。“古都のパスカル”が踏み入れる思索の向こう側

  • ゲキサカ
  • 更新日:2020/07/01
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[2020シーズンへ向けて](※京都サンガF.C.の協力により、オンライン取材をさせて頂いています)

ここまで淀みなく、自身の想いを言語化できる高校生も珍しい。強気な発言が口を衝く反面、目立つのが好きではないという性格も一層興味を駆り立てる。「僕は今でもまだまだ成長していますし、自分でもその成長がわかるので、これでいいとか自分のラインを決めるんじゃなくて、行けるんだったら行ける所まで行ってやろうと思っているんです」。思い浮かんだフレーズは“古都のパスカル”。踏み入れていく思索の向こう側には、何が待っているのか。京都サンガF.C.U-18の理論家。川島功奨(3年)は考える葦である。

もともと昨シーズンの開幕前はスタメン組に入っていなかったものの、先輩のケガもあって出番を得ると、高円宮杯プレミアリーグWESTでは第10節まで全試合にスタメンフル出場。少しU-17日本代表を意識するあまり、「自分で自分にプレッシャーを掛けていた所もあって、『空回りしていたな』という部分があったんですけどね」とは言いながら、主力の自覚も芽生えてきたタイミングで、真夏のクラブユース選手権に突入する。

群馬の照り付ける陽射しの中、初戦こそ先発で起用されたが、2戦目のスタメンリストには自分の名前がなかった。「スタメン落ちも急でしたし、自分でも要因がちょっとわからなかったので、受け止めづらい所はあって結構キツかったですね」。以降もチームが躍進を続ける中で、川島はキックオフをベンチから見つめる状況が続く。

「1年の時も試合に絡めていたので、外から自分のチームが良い成績を残していく状況をあまり経験したことがなかったんですよね。『その場に自分がいない』という悔しさもありながら、チームが良い方向に行くには、それを押し殺してでも雰囲気作りに貢献しないといけないという想いがあって、その葛藤は自分の中でも難しかったです」。17歳の心は揺れる。

だが、思考を巡らせる。この状況だからこそ、思考を巡らせる。「『何か変えなきゃいけない』と思って、どこを変えないといけないかと考えた時に、『まず頭の中を変えよう』と。それでYouTubeでいろいろ探していたら、ダニエウ・アウヴェスの動画をたまたま見つけて。彼のプレーはちょっと自分と似ている所があって、『ダニエウ・アウヴェスのような戦い方やったら、自分はもっと賢く戦えるんじゃないか』と思ったんです」。

ベスト4まで駆け上がったクラブユース選手権が終わり、短い帰省から帰ってきた川島の頭は、いつの間にかクリアになっていた。トレーニングでも確かな手応えを掴んでいく。「やることを色々変えながら練習すると、パフォーマンスが日に日に上がっていくのは自分でもわかったので、やっぱり“頭の変化”が一番ですね」。結果的にリーグ戦では最終節を除く17試合にフル出場。夏に味わった苦い経験を糧に、一回り成長した姿がそこにはあった。

「あの大会がなかったら『何か変わらなきゃいけない』というきっかけがなかったので、クラブユース選手権は大きかったです。だから、常に変わっていかないといけないかなとは自分の中で考えていて、1か月前と同じプレーをしていては、僕がピッチに立っている意味はないはずですし、日に日に成長欲に飢えています。僕は今でもまだまだ成長していますし、自分でもその成長がわかるので、これでいいとか自分のラインを決めるんじゃなくて、行けるんだったら行ける所まで行ってやろうと思っているんです」。はっきりと言い切るフレーズも心地よく響く。

「利き足は右ですけど、左足でも違和感なく蹴れるというか、精度は右が10であれば、左は7か8ぐらいは蹴れるので、どちらのサイドでもやりづらさはあまりないです」という川島は、昨シーズンだけでも左サイドバックから始まり、右サイドハーフも右サイドバックも経験したが、今年からチームの指揮官を任されている前嶋聰志監督はいろいろな可能性を彼に感じている。

「サイドバックがサイドバックの所だけでプレーしないことが増えてきている現代で、どの景色でもプレーできるようになってほしいなと。それができる可能性があるので、インサイドハーフもやらせているんですけど、本人はサイドバックがいいみたいで(笑) でも、想いが頑なというか、強い所もいい所なのかなと。彼でボールは落ち着きますし、そういう意味でも価値の高い選手だと思います」。

自分の想いを言語化できる力には、正直に言って感心させられた。ところが、本人は目立つことが好きではないと明かす。「もともとあまり目立つタイプじゃないので、目立ちたいともあまり思わないんです。ゴールをジャンジャン獲って、というわけでもないですし、アシストの1個前のパスとか、アシストの方に興味があるので、表に立って目立つのはチームメイトに任せたいですね」。自信と謙虚さが絶妙に同居している佇まいは、良い意味で高校生らしくないとも言えるかもしれない。

滋賀県から通っていたU-15時代を含めれば、今年はサンガアカデミーで過ごした6年間の集大成。懸ける想いは強くないはずがない。「とにかく楽しくやりたいですね。このメンバーでサッカーができるのもあと少しですし、僕らは1年の時にキツい練習も一緒に乗り越えてきていて、そういう絆はどこのチームよりも強い自信はあります。今の僕がいるのも他の3年生8人のおかげやと思っているので、1分でも1秒でも長く、みんなと笑ってサッカーしたいですね」。そう一気に言い切って笑った表情は、やはり高校生のそれだった。

踏み入れていく思索の向こう側には、何が待っているのか。思い浮かんだフレーズは“古都のパスカル”。探し続けている自分の存在価値は、必ず自分自身で証明してみせる。京都サンガF.C.U-18の理論家。川島功奨は考える葦である。

■執筆者紹介:

土屋雅史

「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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