
練習で自ら「一塁手」を買って出る井上ヘッド(東スポWeb)
阪神がシーズンの約4分の1以上となる39試合を消化し、開幕から最下位に低迷している。とはいえ、これまでにない成果を収めている部分もある。リーグ最少、16失策の守備だ。
このところ4年連続でリーグワーストで、77勝をあげた昨季も86失策と守備のほころびは積年の課題でもあったが、今季は確実にペースダウン。リーグワーストの巨人(29失策)の約半分と、課題を克服しつつある現状には、実際に戦ったセ球団のあるコーチも「悪送球とかのたぐいは減ったよね」と進歩を認めている。
もちろん、この守備面の成長は久慈、藤本の2人の内野守備コーチが日ごろから精力的にノックを打ち、技術指導してきた成果でもある。ただ、それだけなら、今に始まった話ではない。今年はキャンプから内野陣の練習に〝もう1人のコーチ〟が本格参戦しているのが効いていると他球団関係者は指摘する。
そのコーチとは井上一樹ヘッド(50)。昨季まで試合前は、打撃指導がメインだったが、今季はもっぱら、練習時の定位置は二遊間の後方か、一塁ベースの上。ひとたび、内野陣がそろい、併殺練習が開始されれば、自らファーストミットで「一塁手」を買って出るだけなく、自分に送球が転送されるまでの一連の流れを判断し「アウト・セーフ」をコールするなど〝審判役〟を買って出る。そんな練習サポート役の〝一塁・井上ヘッド〟にはある隠し味も含まれているという。
「他のチームでもよく見るけど、試合前は選手はノックを受けても、送球する相手が裏方さんだったりすると〝流して〟投げたりすることがあるでしょ? 井上さんが常に一塁にいると選手は練習でも捕るだけじゃダメ。試合と同じように捕って、投げるまでを徹底させられている」(セ球団関係者)
一塁で目を光らせる理由のひとつはシーズン中でも「練習のための練習」を未然に排除する指導者側の意図的なチョイスというわけだ。
井上ヘッドは現在も1メートル84センチ、96キロと現役顔負けのフォルムを誇り、明るく実直な人柄も、見た目には〝こわもて〟。そんな熱血漢が練習からニラミを効かせている。かつてないほど、虎の守備が締まってきた要因はこんなところにもありそうだ。
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