逮捕されたスパコン社長と自民党大物政治家の「疑惑の接点」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/12/07

山口敬之氏との関係

「天才であるのは間違いない。でも、ホラ吹きであるのも確か。結局、どちらが優先するかということで、私は天才を認めたが、検察は『ホラ吹き』であるのを許さなかったということでしょう」

東京地検特捜部は、5日、「スーパーコンピューター(スパコン)の小型化、省エネ化の旗手」といわれたペジーコンピューティング(東京都大田区)の斎藤元章容疑者(49)が、助成金を不正に受け取ったとして逮捕された。斎藤容疑者と長時間にわたって対談したことのある人工知能(AI)の研究者は、事件をこう結論づけた。

ベンチャー界隈の事情に詳しい人ほど、「斎藤逮捕」に同情的だ。斎藤容疑者は、国立研究開発法人「新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)」の2012年度の研究開発費補助金の対象とされた事業で、14年2月、費用を水増しした虚偽報告書を提出、約4億3000万円をだまし取ったという。

水増し請求は間違いなかろう。申請書類だけに証拠も残っている。だが、研究成果はウソではない。ペジー社が開発した省電力スパコンの「暁光」は、毎秒約1京9000兆回(京は兆の1万倍)の計算速度を記録し、11月に発表されたスパコンランキングで計算速度部門第4位だったという。

他にも省エネ性能の「グリーン500」でも首位となり、日経地球環境技術賞を受賞するなど期待の星で、マスコミへの露出が多く最も知られたスパコン開発者だった。12月11日放送のNHK人気番組「プロフェッショナル仕事の流儀」で登場を予定しており、NHKは急遽、差し替えたという。

一方で、斎藤容疑者が著作や対談で語るスパコンの夢は、荒唐無稽と受け取られることが多かった。例えば、次のような衝撃的な未来である。

<人は生きるために働く必要のない「不労」の社会を手に入れます。やがて人体のメカニズムが革新的に解明されることで、人類は「不死」も手にすることになるでしょう>

「不老不死」は、錬金術師や魔術師の世界。ついていくのは難しいが、新潟大医学部を卒業した医師で、渡米したシリコンバレーで数々の企業を立ち上げ、帰国後は、「2番ではダメ、日本を1番にする」と、スパコン業界をリードする斎藤容疑者には、彼を信じるコアなファンがいて、支える業界関係者が少なからず存在した。

しかし、「壮大な夢」に取り組むのにもおカネが要る。「2年後に世界初の次世代型スパコンを完成させたい。そのためには300億円が必要だ」と、訴えていた。

その“夢”を手助けしていたのが、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏だった。

「政界とのつながり」はでてくるのか

2人の関係は、思いがけないところから表面化する。山口氏を準強姦容疑でジャーナリストの伊藤詩織さんが訴えていた事件。『週刊新潮』が今年5月、2週連続でこの問題を報じたが、その過程で、都内高級ホテルの家賃130万円の部屋をオフィスにする山口氏の優雅な生活が明らかとなる。

追撃した新潮記事では、部屋は斎藤容疑者が借りているもので、「山口さんはTBSにいる頃から斎藤社長と知り合いで、去年(16年)5月に会社を辞める時に、顧問のようなポジションを用意されたと聞いています」という業界関係者の言葉を紹介している。

この準強姦事件について、私は詩織さんのインタビューを行ったうえ、本サイトで「『親・安倍』記者への告発が、単なる準強姦の問題では終わらない理由」(17年6月8日配信)と題して記事にした。「単なる事件ではない」というのは、「安倍首相に最も近いジャーナリスト」である山口氏に忖度した捜査が行われた形跡があったからだ。

この時、私は、山口氏に詳細な質問メールを送り、回答をもらった。結局、「容疑者でも被疑者でもない」として事件を否定。また、ペジー社との関係や顧問就任の事実関係、同社の家賃負担などについては、「私の個人情報に関わる質問に答えるつもりはありません」とのことだった。

だが、今回、摘発された事件によって、「個人情報」と、切り離すことはできなくなった。

捜査が続けば…

山口氏の政界人脈の深さは、よく知られたところである。特に、安倍晋三首相、麻生太郎財務相といった政権中枢に太いパイプを持っていた。

また、山口氏と斎藤氏は、志を同じくする財団法人でもつながっていた。渋谷区恵比寿にある一般財団法人「日本シンギュラリティ財団」である。シンギュラリティとは、人工知能が人間の限界点を越してしまう現象で、2045年にはそこに到達するといわれているが、この財団はシンギュラリティにいち早く到達することを目的に、各種事業を行うことになっている。

16年3月、代表理事である山口氏の自宅に設立され、斎藤氏も理事に就いた。山口氏がTBSを退社するのは同年5月だから、在職中に絆が生まれ、その後のフリージャーナリストとしての生活に備えていたことになる。

ペジー社と斎藤氏への捜査は、告発をもとにした税務調査から始まっており、その過程で“余禄”のように不正受給が発覚、「放置はできない」となったのだろう。違法を見つければ処理するのが捜査当局の習性である。

しかし、検察も忖度する役所であるのは、森友学園事件で証明された。おそらく、「斎藤逮捕」は、その不正受給が山口氏に波及するかどうかを現場に確認のうえ、「波及しない」ということで捜査着手したのだろう。12月5日の逮捕は、20日の勾留期限を考えれば、年末に起訴して年内終結の可能性が高い。

ただ、“本丸”の脱税捜査はまた別である。「天才」は、夢を大きく広げたが、そこに資金を投入するだけでなく、別用途に使っていないか。その際、手っ取り早い資金獲得の方法として「政界工作」はなかったか。

そこには、同志の山口氏が絡む可能性がある。そこで、山口氏には、「個人の問題を超えたので」と、斎藤氏との関係に絞って質問書を送ったが、今回、返事はなかった。

だが、捜査は終結したわけではない。シンギュラリティの早期実現を目指した2人は、政界にどんな働きかけを行い、それは実ったのか実らなかったのか。解明はこれからだ。

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