リスクを抱える前に......「空き家対策」4つの選択肢

リスクを抱える前に......「空き家対策」4つの選択肢

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2016/12/01
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「特定空き家」は自腹での強制撤去へ

13.5%――。これは日本全国の住宅に占める「空き家」の割合だ。日本の空き家は毎年増え続け、2013年現在で820万戸にも達する(図1)。

都心部ではマンション価格が上昇傾向にあるなど、住宅への需要は底堅い。だが郊外では、「住む人がいない」「買い手もつかない」「誰も管理しない」という空き家が増えている。富士通総研の米山秀隆上席主任研究員は「最大の原因は市街地が拡がりすぎたこと」と話す。

「これは戦後の街づくりの構造的な問題です。高度経済成長を迎えた日本は、住宅不足のために宅地造成を奨励し、市街地を急拡大させてきました。そこには大量の住宅が建てられましたが、ほとんどが耐用年数の低い『安普請』の住宅だった。さらに人口が減少し、郊外に住宅を求める必要がなくなりました。子供たちは利便性の高い場所に移り住み、戻らなかった」

具体的な仕組みとしては、税制面での優遇がある。住宅取得を奨励するため、日本の税制では、住宅のある土地への固定資産税を6分の1に減額している。誰も住まない空き家であっても、それが建っているだけで固定資産税は安くなる。このため住宅を撤去して更地にする人は少ない。「ゴーストタウン」になった住宅地は、治安や防災の面で不安を抱える。空き家が増えれば、その周囲にさらに空き家が増えるという悪循環になる。

こうした現状を是正するため、2015年5月、「空き家対策特別措置法」が施行された。これにより倒壊の危険や衛生上に問題がある「特定空き家」は、地方自治体が強制的に取り壊し、その費用を所有者に請求できるようになった。さらに「特定空き家」に指定されると固定資産税の優遇措置が受けられない。たとえば評価額が土地2000万円、住宅200万円の場合、これまでの固定資産税は7万5000円だったが、「特定空き家」に指定されると税額は22万4000円に増える(図2)。

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「賃貸」の市場はすでに供給過剰状態

空き家の放置は、大きなリスクを抱えることになる。どのように対策すべきか。米山氏は「4つの選択肢がある」と話す。

「相続などを考えて空き家のままにするなら管理が必要です。遠方で自己管理ができない場合には、業者に『管理代行』を頼みましょう。月1回の見回りや換気などで月額3000円から1万円程度です。

2つ目は賃貸物件としての活用です。ただし立地や条件が整っていなければ借り手は見つかりません。住宅設備が古い場合には更新の必要があります。実は820万戸ある空き家のうち、52%は借り手のつかない賃貸住宅。供給過剰の状態です。

3つ目は解体して更地にするという選択。解体費用はかかりますが、防災や防犯上の責任は果たせ、管理は不要になります。

最後の選択肢が売却です。これから土地や住宅の価格が上がることは考えづらい。見積もりを頼むと、価格の安さに驚く人もいるそうですが、それが現実。早めに判断すべきです」

特に問題が深刻なのが地方都市だ。3大都市圏と政令市を除く県庁所在都市の人口は、1970年から2010年の40年間で約2割増えた。ところが2040年までに2割減り、1970年と同じ水準にまで落ち込むと予想されている。こうした地方都市の市街地はこの40年間で2倍に広がっている。

米山氏は「人口減の状況で、2倍に広がった市街地は維持できない。これから市街地の縮小が進むだろう。そのとき『指定区域』から外れた住宅の価値は著しく下がる」と話す。

「2014年8月、『コンパクトシティ』を促すため『改正都市再生特別措置法』が施行されました。これにより、地方自治体は居住を促す『居住誘導区域』、病院や商業施設などを集める『都市機能誘導区域』を設定できるようになった(図4)。売却に不安のある物件は、区域が設定される前に動いたほうが賢明です」

国は、区域を設定した「立地適正化計画」を、2020年までに150の自治体へ広げることを目指している。動くなら早いほうがよさそうだ。

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富士通総研 上席主任研究員 米山秀隆(よねやま・ひでたか)

1989年筑波大学大学院修士課程経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所を経て、現職。『空き家急増の真実』『少子高齢化時代の住宅市場』など著書多数。

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