勝利の女神は消極的な川崎Fにそっぽを向き、勇敢な浦和に微笑んだ

勝利の女神は消極的な川崎Fにそっぽを向き、勇敢な浦和に微笑んだ

  • Sportiva
  • 更新日:2017/09/15

逃げる側には焦りと怯えの色が見え、追いかける側には余裕と確信が備わっていた。Jリーグ勢対決となったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝は、ホームで圧巻のゴールショーを演じた浦和レッズが見事な逆転劇で、2008年以来となるベスト4進出を決めた。

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逆転勝利で喜びを爆発させるキャプテンの阿部勇樹(中央)

川崎フロンターレのホームで行なわれた第1戦を1-3で落としていた浦和が苦しい状況に追い込まれていたのは間違いない。唯一の救いはアウェーゴールを奪っていた点だったが、その優位性も19分にDFエウシーニョに先制点を奪われ、あっさりと手放すことになってしまった。

この時点で、最低でも3点を奪い延長戦に持ち込むか、4点以上を奪うことが勝ち上がりの条件となった。しかし、2点目を奪われてしまえば、そのシナリオは破綻する。攻撃的にいく必要があるなか、守備もおろそかにはできない。表裏一体の難題を抱えた浦和は、絶体絶命の窮地に陥っていた。

ところが浦和の展開したサッカーに、焦りの色は微塵もにじんでいなかった。4-1-4-1の新布陣によるスタイルが手堅さを備えていたことがそう感じた理由で、バランスを崩してまでもリスクを取ることはせず、サイドを起点に丁寧に攻撃を組み立て、じっくりと得点機をうかがった。

そして35分、FW興梠慎三が同点ゴールを奪うと、試合の流れを完全にその手に掌握する。38分に川崎F左サイドバックのDF車屋紳太郎が退場となり数的優位を手にしてもなお、浦和は決して嵩(かさ)にかかって攻め込むようなことはしなかった。その落ち着き払った試合運びは、ビハインドを背負っていることを忘れさせるほど。もちろん、さらなる失点が終戦を告げることを理解していたのだろう。しかし、得点が求められる状況のなか、このままではいけないという焦りがどこかで生じてもおかしくはなかった。

それでも浦和が落ち着いて試合を運べたのは、川崎Fのほうの問題によるところが大きい。

「川崎は普段はもっと前からプレッシャーをかけてくるチームだけど、(試合前の時点で)2点差あるし、さらに1点獲ったという余裕があったのかなと」

MF柏木陽介はそう推測したが、川崎Fがプレッシャーをかけず、後方での対応を選択したことで、浦和は苦もなくボールを保持し続けることができたのだ。

柏木が「余裕がある」と感じていた川崎Fだが、時間が経つにつれて次第に追い込まれていく。もちろん数的不利に陥ったことは何より痛かったが、ファイティングポーズを取らず、ただただガードを固めるだけの戦いに希望は見出せなかった。余裕を失い、焦りが生じ、そして崩れ落ちる――。彼らはそんな悲劇のシナリオへと突き進んでいたのだ。

「相手に圧力をかけるには、やっぱりアウェーゴールが一番嫌なことだと思いますけど、そこにパワーを注げなかった。それがずっと守るという状態になってしまった。そこのところのパワーの使わせ方というのは、自分のほうでしっかりできなかったと思っています」

試合後、鬼木達監督はそう自らの失態を認めている。

それは闘う姿勢の部分だけでなく、選手起用の面も含まれるだろう。車屋の退場の際、左サイドバックを補填するためにトップ下のMF中村憲剛を交代させている。さらに、浦和がディフェンダーを1枚削り、FWズラタンを投入すると、ボランチのMF大島僚太を下げてセンターバックのDFエドゥアルドを投入した。

もちろんこれは結果論であり、逃げ切りに成功していれば、その采配は讃えられただろう。しかし一発のパスで局面を変えられるふたりの司令塔を欠いてしまったことで、浦和はカウンターを浴びる恐怖がなくなり、より攻撃性を高められるようになったのだ。

勝負を決めたのは、おそらく2点目だった。引いて守るだけの川崎Fに対し、浦和はDF槙野智章とDF森脇良太の両サイドバックが積極果敢な攻撃参加を繰り出して次々にコーナーキックを獲得。そして70分、左からの柏木のコーナーキックをズラタンが頭で合わせて2-1とした。

残り時間は20分。トータルスコアはまだ川崎Fがリードしていたものの、もはや川崎Fは立っているのがやっとの状態。同点、そして逆転されるのは、時間の問題だった。

84分、柏木のパスからFWラファエル・シルバがトータルスコアをタイに戻すゴールを叩き込むと、その2分後には森脇の柔らかいクロスをFW高木俊幸が合わせて、つい逆転に成功。稀に見る逆転劇は、こうして完遂されたのだ。

結局のところ、サッカーは点を獲るスポーツである。その本質を捨て、守りに入り、自分たちの戦いを見失った川崎Fが自滅した、と言える。そして、その隙を見逃さなかった浦和は、ビハインドをものともせず、数的にも精神的にも優位に立ち、90分を通して試合をコントロールし続けた。勝利の女神は消極的な姿勢の川崎Fにそっぽを向き、冷静かつ勇敢に戦い抜いた浦和に微笑んだのだ。

「(相手の退場は)イエローでもおかしくはなかったし、かわいそうだったと思うけど、すべてを含めて俺らの前向きながんばりを、神様が見ててくれたのかなと」

ロマンティックな柏木の発言も、案外、的を射ているのかもしれない。

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