【サッカー日本代表 板倉滉の「やるよ、俺は!」】 第8回  コンディショニングはアスリートの務め

【サッカー日本代表 板倉滉の「やるよ、俺は!」】 第8回 コンディショニングはアスリートの務め

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  • 更新日:2023/11/21
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カタールW杯後、日本に帰国した際の板倉

世界中を飛び回るサムライブルーの選手たち。その中でも海外組のスケジュールは度重なる移動により多忙を極めている。そのような状況で彼らはいったいどのようにコンディションを保っているのだろうか? 板倉滉が語る!

【写真】板倉滉流・コンディショニングの心得とは

■アスリートには移動がつきもの

W杯アジア2次予選が始まった。残念ながら、僕は足首の手術により11月の招集はなかったけど、おかげさまでリハビリは順調なので、しっかり完治させて復帰したい。もしもの話だけど、今回も招集があったら、ドイツから日本への長距離移動が待っていたはず。僕ら海外組の活動には、世界中を飛び回る過密なスケジュールがつきものだ。

例えば、10月17日のチュニジア戦後。ホテルには夜中の1時頃に着いて、そこでやっと解散。でも、朝6時には神戸空港に。そこからドイツへの帰路に就いた。実質、ホテルに滞在できたのは5時間ほど。選手によって、ごはんを食べに行ったり、仮眠をとったり過ごし方はさまざまだけど、僕はなるべく寝ずに空港へ向かうことがほとんど。そうすることで、機内でよく眠れるのだ。

このように、アスリートにはおのおの、自分に合ったコンディショニングというものが存在する。今回のテーマはアスリートと移動、そしてコンディショニングの話や、代表合宿中の生活などなど。これまで語られることのなかった、ニッチな話ばかりだけど、これを知ればアスリートの見え方が変わる......かもしれない(笑)。

アスリートと移動について語る上で避けて通れない強敵、それが時差ボケ。結論、どんなに頑張っても時差ボケを完全に解消するのは難しい。僕の場合、ドイツから日本に戻ってきたときの時差ボケが特にきつい。日本に着いた初日、夕飯後の夜8時頃には睡魔に襲われてしまう。

でも、注意する必要があるのはここでガッツリ寝てしまうと、体内時計の調整がかなり難しくなるということ。そのため、ケアマッサージを入れるなど眠気をごまかすために工夫している。結局、気持ち良くなってうたた寝することもあるけど。

理想は深夜0時まで耐えて、そこで就寝、翌朝7時頃まで熟睡という流れ。とはいっても、朝4時ぐらいにパッと目が覚めてしまうこともしばしば......。代表合宿の初日は、海外組の多くが眠気との闘いに苦しむ。ぜひ、有識者がいたら時差ボケ対策を教えてほしい(笑)。

■長距離移動の必須アイテム

代表に招集されると、所属先の試合日程にもよるが、基本はクラブの試合の翌日に移動が始まる。まず、僕の自宅に送迎車が来て、日程が合えば、近くに住む(田中)碧の家にも寄って、空港へ向かうのが恒例となっている。

持っていく荷物といえば、空のスーツケース(空の理由は後ほど)と、機内持ち込み用のキャリーケース、あとは着替えの下着が1、2枚ぐらい。この話をするとたいていの人が驚くのだが、代表メンバーは合宿地に到着すると、部屋着のTシャツから下着に至るまで、すべてが支給されるから、持ち物は最小限でいいのだ。移動中の服装もW杯のような大きな大会はスーツだけど、基本的には私服だから、楽な格好を心がけている。

荷物を軽くしたり、楽な格好をしたり、細かい部分からストレスを減らしていくのも僕流のコンディショニングだ。

10月の代表遠征のときは、所属するボルシアMGでのリーグ戦(10月6日、マインツ戦)が土日ではなく金曜だったので、ひと足早く日本に到着することは決まっていた。だから、報道陣もいないだろうと、このときは特に楽なジャージを着ていたら、到着ロビーに出た瞬間にカメラのフラッシュが。これは不覚だった。恥ずかしかったので、次からはリラックスしすぎにも気をつけたい。

長距離移動では絶対に欠かせないアイテムというのもある。それがiPadとイヤホン。事前にダウンロードした映画やドラマをそれで見るのだ。ちなみに、最近のお気に入りはNetflixの『トークサバイバー!』。まあとにかく、長距離移動を快適に過ごすことは、気分良く次の活動に切り替えるためにも、かなり意識している。

さて、次は空のスーツケースを持参する理由について。それはズバリ、事前にAmazonで注文した品物を詰め込むため。これは代表メンバーのほとんどがやっている。合宿地に着くと、選手の部屋の前には届けられたAmazonの箱がずらりと並び、依頼主の到着を待っている。

買う商品はさまざま。僕の場合はファッションが好きなので服が多い。ほかの選手は、日本でしか買えない限定品だったり、円安だからこそお手頃価格で買える電化製品だったり。みんなここぞとばかりに買い物をしている。これが案外に息抜きになっているのかもしれない。

10月の遠征では、碧がKindleタブレットを購入していたので、普段はそれほど興味がないけど「なんかいいな、俺もそれ買おうかな」と言ってみたところ、碧からは「絶対にいらなくなるよ」とバッサリ(笑)。なので、代わり(?)にお気に入りのお菓子である「パインアメ」や「めんべえ」を購入。スーツケースには入りきらなかったけど、わざわざ別のボストンバッグに詰め込んでドイツに持ち帰った。

こういったささやかな楽しみがあるだけで、ハードスケジュールも意外と乗り越えられるものだ。アスリートに限らず、自分の機嫌の取り方を理解しておくことは日々のパフォーマンスを維持するためには大事なことかもしれない。

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板倉滉プロフィール●板倉滉(Ko ITAKURA)
1997年1月27日生まれ、神奈川県出身。日本代表CB。川崎Fでプロ入り、2019年に1シーズン在籍したベガルタ仙台からイングランド1部マンチェスター・Cへ移籍。その後、オランダ1部フローニンゲン、ドイツ2部シャルケへと移り、現在はドイツ1部のボルシアMGに在籍。現在は戦列復帰に向けてリハビリ中。

構成・文/高橋史門 撮影/山上徳幸 写真/アフロ

構成・文/高橋史門 撮影/山上徳幸 写真/アフロ

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