捨てられなかった交換日記は、お互いの幸せを願いながらゴミ袋へ

捨てられなかった交換日記は、お互いの幸せを願いながらゴミ袋へ

  • かがみよかがみ
  • 更新日:2022/09/23
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私は、いらなくなった物はすぐに処分をしてしまう性格だ。どれだけ愛着が湧いていても、必要ないと判断した瞬間それは、ゴミになる。かつての恋人からもらったプレゼントや手紙も例外ではなく、いくら実用性があったとしても、別れた瞬間ゴミになり捨ててしまうのだ。

そんな性格だから、人間関係も自分にとって大切な人かそうでない人かを定期的に考え、必要な人だけを大切にしてきた。この生き方を否定する人もいたが、私はそのやり方を貫いてきたし、間違っているとは思っていない。

しかし、唯一捨てられないものがあった。それが、高校一年生の時に初めて付き合った彼氏との交換日記だった。

好きな人を拒んだ私。涙を見せなかったことを今は誇りに思う

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人生で初めて彼氏ができ、今までの中で一番長く付き合った人。当時の私は、彼を運命の人だと疑うことはなかったし、結婚だってすると思っていた。しかし、時の流れは残酷で、私はもっと他の人に目を向けたいと、身勝手な理由で別れを告げた。何度も嫌がる彼に、私は見向きもせずに別れてしまったのだ。

しかし、そんな私を相手にする人など現れるわけもなく、寂しさから勝手に連絡を取り、会いたい時だけ彼を利用する日々が続いた。私は、いつの間にか彼を所有物のように扱い、都合よく使い続けたのだ。

優しい彼は、文句も言わずに会いたい時には時間を作ってくれたが、時間が経てば、魔法が解けていくように彼は、私のことを避けていく。分かっていたのに、簡単には手放すことが出来ずにしがみついてしまっていたのだろう。そして、最後には「もう会うのはやめよう。僕には好きな人がいる、君ではなく、違う人のことが好きなんだ。だから、もう会うことはできない」そう言って、連絡は途絶えてしまった。

失った後に気づいても、遅かった。もしも、あのまま幸せを感じながら相手を想うことが出来ていたら、未来は変わっていたかもしれない。彼からもらった沢山の愛を、自由と引き換えに手放してしまった。だから、あの時二人で育んできた交換日記を捨てることなんて出来なかった。

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ふとした瞬間に彼を思い出し、日記の中に入り込む。彼を感じながら、後悔することしか出来なかった。

もう何年も前の話だから、きっと彼は、真実の愛とやらを見つけて幸せになっているだろう。私のことなんて忘れて、今目の前にいる人と人生を歩んでいるだろう。

そう考えると、胸の奥が少しだけ締め付けられる。日記の中を開いても、どの箇所にも私に対しての愛を綴った言葉が書かれていた。いつか二人で人生を歩んでいこうとか、ずっと大切にするよとか、本当に沢山の愛に溢れていた。だからこそ、あの日記だけは捨てることが出来なかったんだと思う。

彼と別れてからの恋愛は、本当に酷かった。自分が彼にしてきたことが、巡り巡って返ってきているようにも感じた。きっとこれは、神様から罰を与えられているんだと思うしかないほど、惨めなほどに。

そんな時は、つい開いてしまうんだ。彼に愛されていた幸せだった頃の私に会いたくて。一冊分のノートを時間の許す限り、ゆっくりと見返していく。満たされない心の隙間を埋めようと必死だった。

けれど、かつて愛をくれた相手はもういない。だから、私は読むたびに「なんで見ちゃったんだろう」と最後のページの前で日記を閉じてしまう。あれから随分時間は経ち、もう彼の顔も声も忘れてしまった。今頃、どうしているかなんて想像もできないほど、記憶の片隅にすら残っていなかった。

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そんな時に、久しぶりに日記を開いて読んでみた。だけど、昔のような感覚になることはなかった。ただただ、懐かしさと少し恥ずかしさを感じるだけで、惨めで寂しい感情は一つも湧かなかった。

満たされない何かが、私の中で埋まっていたから。お互い別の道を歩み、時には彼を利用し、私も他の誰かに同じようなことをされてきた。そうやって生きてきた。ようやく彼以外に私を心の底から愛してくれる人に出会うことができた。だから、交換日記に頼る必要がなくなったのだ。

私は、妙に納得した後、その日記を可燃ごみの袋に迷わず入れた。しがみついていた過去を捨てる気持ちで、袋をぎゅっと閉めた。そして、「今までありがとう」と言えなかった感謝の言葉と共に、捨てる決意をした。

これからの人生をお互いが幸せに過ごしていけるように、私は回収場にゴミを置いて、その場を立ち去ったのだ。

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