天空でジェット機を撃墜、竜巻に乗って降ってくる、タコと合体...トンデモからA級まで、なぜ「サメ映画」はファンの心をつかむのか?

天空でジェット機を撃墜、竜巻に乗って降ってくる、タコと合体...トンデモからA級まで、なぜ「サメ映画」はファンの心をつかむのか?

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/07/21

皆さんは“サメ映画”という言葉をご存じだろうか。

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かのスティーブン・スピルバーグ監督作、『ジョーズ』(1975年)の大ヒットから端を発する、サメをメインテーマあるいはサブテーマに起用した映像作品の一ジャンルである。さほど映画に詳しくない方でも、試しにご近所のレンタルショップに出向き、ジャンル:アクションの旧作コーナーに目をやってみれば、そこにはやれ『ナントカ・ジョーズ』だの『ナントカ・シャーク』だのといったタイトルの、どこかうさんくさい雰囲気の作品がちらほらと置いてあることに気がつくだろう。そう、それが“サメ映画”だという認識である程度間違いはない。

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1975年公開『ジョーズ』

『ジョーズ』以前にもサメを取り扱った映画は散見されるが、現在“サメ映画”と呼ばれる作品の多くは、多かれ少なかれ『ジョーズ』の影響を受けていると言っても過言ではないだろう。たとえば、同じくサメが登場する大作パニック・アドベンチャー映画『ディープ・ブルー』(1999年)などは、一見して『ジョーズ』とはまったく無関係のストーリーでありながら、実は本編にこっそり“『ジョーズ』で使用されたものと同じナンバープレート”を忍び込ませている。

また、太古の怪物メガロドンが海で暴れるアクション映画『MEG ザ・モンスター』(2018年)では、監督のジョン・タートルトーブが「(自分の手がけるサメ映画で)『ジョーズ』の単純な真似だけはしたくなかった」と、逆説的に『ジョーズ』を意識して作っていた旨のコメントを残している。とにもかくにも、まず『ジョーズ』があり、次に“サメ映画”が生まれた。それを踏まえた上で、このコラムではサメ映画の魅力を読者の皆さんにお伝えしていきたい。

初代『ジョーズ』のプロット=サメ映画の“お約束”

くどいようだが、サメ映画の魅力を語る上で、絶対に欠かせない作品が『ジョーズ』である。『ジョーズ』単体の面白さもさることながら、同作の脚本・展開を、後発の亜流作品がそっくりそのまま流用したり、部分的にオマージュしたり、その他似たようなアニマル・パニック映画を好き放題作っているうちに、いつしか初代『ジョーズ』のプロット=サメ映画全般にも共通して見られる“お約束”となってしまったためである。

たとえば、「物語冒頭の舞台は水辺で、サメが漁師ないし水着姿の美女を殺す」というお決まりのつかみ。「観光地でサメが猛威を振るうが、経済的損失を考慮した地元の有力者が、事件を隠蔽する」という流れ。“生物学者”と“駆除対象の動物に詳しいベテランハンター”がしばしば登場するキャラクター配置。そして、「クライマックスでは、サメが爆発四散する」という決着方法。100パーセントすべてのサメ映画に通じるというわけではないにせよ、その多くの作品が継承しているお約束が、『ジョーズ』一本に網羅されているのだ。

なお、『ジョーズ』とほぼ同じストーリー展開をしているサメ映画の例として、『ジョーズ・リターンズ』という作品が挙げられる。タイトルには“リターンズ”とついてはいるものの、その実『ジョーズ』とは完全に無関係の、いわば二番煎じ作品。その上アメリカ合衆国での上映時、あまりにも『ジョーズ』に似過ぎていたことから、およそ1ヶ月で公開中止となったという、なかなかロックなサメ映画だ。ちなみにこの『ジョーズ・リターンズ』、なまじ『ジョーズ』をそのまま模倣している分、「誠に遺憾ながら、そこそこ見られる」出来であり、また当時の一般客からの評判はそう悪くもなかったことから、商業的には成功している。

『ジョーズ』を“破ろうとする動き”

さて、上記のような“習う型”があれば当然、“それを破ろうとする動き”も存在する。

前述の『ディープ・ブルー』では、詳細は伏せるがオープニングで『ジョーズ』と真逆の展開をいきなりやってみせることで、意外性の演出に成功している。ほか、『フライング・ジョーズ』(2011年)というサメ映画では、クライマックスで『ジョーズ』とまったく同じ作戦でサメを撃退する…と見せかけておいて、そこからさらにもうひとひねり加えるという、なかなかユニークな展開を用意している。この2例、いずれも観客が『ジョーズ』をすでに観ていることが前提のサプライズであるという点が面白い。

“守破離”の概念にも似た試行錯誤の繰り返し

もちろん、『ジョーズ』のお約束を本編に取り入れていないサメ映画もなくはない。やや海洋ソリッド・シチュエーション・スリラー物としての色彩が強いが、たとえば『海底47m』(2017年)などは、「不慮の事故でケージごと海底に沈んでしまった姉妹二人が、辺りを縄張りとする人食いザメや残り少ない空気、暗闇におびえながらも生還する方法を探る」という、『ジョーズ』の内容に依らないプロットで成功した逸品だ。

その他、日本国内での『ジョーズ』人気およびアニマル・パニック映画ブームの全盛期には、「とりあえず人気取りのために、ごく平凡なアクション映画やラブ・ロマンス映画ですら、まるで“サメ映画”であるかのようにジャケットを偽装して宣伝した」脱法サメ映画が何本も見受けられるが、これらはあまりいい例ではないため、具体的な作品名は控えさせていただこう。

まるで伝統芸能の、“守破離”の概念にも似た試行錯誤の繰り返し(もっとも、努力というものを完全に放棄したかのごとき駄作もしばしば出現するが)と共に、『ジョーズ』を起点として今もなお様々なサメ映画が作られ続けている。たかがニッチな映画の1ジャンルのように見えて、そこには確かな歴史の積み重ねがある。その事実こそが、サメ映画の魅力のひとつではあるだろう。

ハチャメチャなトンデモ系サメ映画が続々登場

もうひとつ、特に2009年以降の作品に多く見られる、サメ映画ならではの魅力を紹介しよう。それは“ハチャメチャさ”だ。『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』(2009年)というサメ映画では、巨大なサメが天高く飛び上がり、ジェット機を撃墜するという、インパクト抜群のシーンが盛り込まれている。

続けてサメとタコが合体したトンデモ生物『シャークトパス』(2010年)やら、海から飛び出し砂地を泳ぐ『ビーチ・シャーク』(2011年)やらが台頭。その後「サメが竜巻に乗って空から降ってくる」という斬新なコンセプトで大ヒットした『シャークネード』(2013年)の影響で、同系統のトンデモ系サメ映画が未だかつてないほど短期間に続々と作られるようになり、いわば『ジョーズ』以来の新生サメ映画ブームの幕開けとなったのである。比較的新しいサメ映画としては、家の中に現れる『ハウス・シャーク』(2017年)や、6つの頭を生やした水陸両用のサメ『シックスヘッド・ジョーズ』(2018年)などの作品が印象的だ。

ただし、中には悪ふざけが行き過ぎて、そのハチャメチャさが食傷気味となっている作品、テンションが空回りしてしまっている作品も見受けられる。そして近年では、特にインディー映画界隈を中心に、何の入れ知恵か「とりあえずサメに奇抜なことをやらせておけば、あとはいくら手を抜いても許される」と勘違いしたかのような、ある種の痛々しさを伴う作品が増えていることも事実である。

肩の力を抜いて、くだらなさを楽しもう

とはいえ、適度におふざけを交えたサメ映画や、そのハチャメチャさに腹を抱えて笑うことのできるサメ映画が、同じようにリリースされていることもまた事実。ここは適度に肩の力を抜いて、そのくだらなさを楽しむ方向に心のスイッチを切り替えておいた方がいいだろう。もちろん、何事にも限度はあるが。

というわけで、以上2点がおおまかな“サメ映画”のポイントになってくるだろうか。奥深いようでいて案外そうでもなく、むしろ意外と浅いがやたら横に広い、そんなサメ映画の魅力を、ぜひともあなたも体験していただきたい。

(知的風ハット)

知的風ハット

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