「大迷走続き」の中国が、自民党総裁選に「当選してほしくない候補」の名前

「大迷走続き」の中国が、自民党総裁選に「当選してほしくない候補」の名前

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/09/27
No image

さっぱりわからない恒大集団の実体

中国で企業やネットへの規制が強化され、学校教育で習近平思想が盛り込まれるなど、「文革」と重ね合わせる見方が出ている。背景に何があるのか、こうした動きが日本にどのような影響を与えるのか。

中国への不透明感は最近増している。中国の不動産グループ恒大集団が経営危機に陥っているという。これについて、在阪テレビ局でとりあげるというので、調べてみたが、正直に言って経営実態がよくわからなかった。

No image

photo by gettyimages

実は、筆者は役人時代に不良債権のプロとして各種裁判において専門家鑑定を行った経験がある。中国政府にも何度も呼ばれて日本の不良債権処理についてレクチャーこともある。

不良債権処理手順は比較的簡単で、バランスシートを作成し損失額を算出しその負担者を決めるだけだ。負担は、株主、債権者の順が原則で、場合によっては政府が出てくることもある。

しかし、中国でその当時、強く感じたのは破産法制の不備と開示規定の不備だった。なので、以上の処理原則がまったく適用できなかった。それらの不備は今でもあまり改善されていないようだ。

というわけで、恒大集団の財務状況もさっぱりわからず、どうなるかの予測すらしにくいのが実状だ。習近平氏と距離があるかどうかが、恒大集団が破綻かどうかの分かれ道になるらしい。

現時点で、近くはないが助けられるという意見(在阪テレビ局番組で解説)と、習近平氏と異なる派閥に近いので成り行き任せという意見があり、筆者はどちらかわからない。

ただ、当面恒大集団の社債で元建てとドル建で差がつくかもしないないという未確認情報が出ており、ちなみに、ドル建て短期社債の利回りを算出すると、400~800%にもなっており、ドル建て債務は市場で事実上破綻状態だ。

権威主義化が急加速している

在阪テレビ局から、恒大集団の社債について、日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が100億円程度保有しているので、その影響はどうかと聞かれたので、本番では次のように答えた。

日本の年金は賦課方式なので、積立金が年金給付に与える影響は少ない。仮に20万円の年金給付であれば、今回、恒大集団の社債がすべて損になっても、せいぜい年金給付に与える影響は1円程度あるかどうかだ。

いずれにしても、中国には民主主義とは違うシステムがある。社会科学では、民主主義に対するモノとして「権威主義」があり、それらは数値化されている。

英エコノミストのエコノミスト・インテリジェンス・ユニットが世界167ヶ国を対象に毎年発表している、民主主義指数(Democracy Index)がある。この指数は、各国の政治の民主主義のレベルを、(1)選挙システム、(2)政府機能、(3)政治参加、(4)政治文化、(5)市民自由の5つの観点から0〜10で評価したものである。

最新の2020版トップはノルウェー9.81、最下位は北朝鮮1.08。日本8.13、ロシア3.31、中国2.27、イラン2.20だ。

評価8〜10、6〜8、4〜6、0〜4の国をそれぞれ完全な民主主義、不完全な民主主義、混合体制、権威主義体制としている。それぞれの国数は23、52、35、57で、構成比は13.8%、31.1%、21.0%、34.1%。人口比で見ると8.4%、41.0%、15.0%、35.6%となっている。

権威主義の下では、政治権力は原則として1人の指導者に集中しており、その指導者は選挙されない。全体主義や独裁国家を含む概念であり、対立概念は民主主義だ。今の世界では、中国、ロシアやイランが典型だ。

権威主義では、権威に服従させるためにあらゆる手段が用いられる。冒頭述べたように、企業やネットへの規制や学校での思想教育などだ。

中国は、1949年に共産党政権が樹立されてからの30年間、1978年からの改革開放路線の35年間、2013年からの習近平体制と分けて見るといい。

習近平が思想教育を行うワケ

初めの30年間は、典型的な権威主義で、全体主義とも言えた時期だ。次の35年間の改革解放路線では、個人や企業の自由がある程度確保され、思想統制が薄まった。その一方、国民の政治参加はないので共産党政権の下で大規模な政府投資などが行いやすく、それが経済発展をもたらした。

しかし、習近平体制になると、一定の経済発展の成果があったので、権威主義の維持のため、再び個人や企業への規制強化や学校での思想教育が必要になってきたと、筆者は睨んでいる。

本コラムでこれまでも指摘しているが、民主主義指数が6より大きな「民主主義」にならないと、一人当たりGDPは1万ドルを超えにくい。民主主義国になると、民主主義指数とともに一人当たりGDPが伸びるが、非民主主義国では産油国を除き一人当たりGDPが1万ドルを長期に超えることはこれまでの歴史でなかった。

No image

拡大画像表示

香港は、2019年の民主主義指数は6.02と民主主義だったが、2020年には5.57と急落し、非民主主義になってしまった。香港における中国による香港国家安全法の施行によるものだ。

これで、香港は外国からの魅力的な投資対象でなくなり、香港からも優秀な人材が流出している。

日本としても、香港からの流出人材の受け入れをやってもいいが、香港と従来のように付き合う気になれないだろう。世界から見ても、権威主義国家は避けられるので、日本もよく考えた方がいい。

その中国が正式にTPP加入を申請した。中国は一党独裁の共産主義体制だ。共産主義の基本として生産手段(企業や土地)の国有原則がある。このため、資本の自由化をすると、その根本原理がくずれてしまので、資本の自由化やそれた大いに関係することは共産主義の崩壊に繋がるのでできない。共産主義国が、資本の自由化を言うのであれば、ウソと思った方がいいくらいだ。

TPPについては、モノ・サービスのみならず、投資や資本の自由化までをも含む包括的な多国間協定だ。しかも、その中には国有企業改革も含まれ、共産主義の中国にとって国家体制を改革しないと、協定の達成が困難なものが多く含まれている。この意味で、中国のTPP参加のハードルは高いどころか、共産主義体制を変えないと無理だ。

TPPの「母屋」を乗っ取る

今の時期にTPPへの申請をしてきたのは、今のTPPは日本主導であるからだ。アメリカは離脱したままで不在、イギリスも申請中であるが未加盟であるので、日本だけなら与し易しと見ての中国の対応だろう。日本であれば、いろいろな手段を使って威圧することもできるからだ。

つまり、軍事大国である米英の鬼の居ぬ間に、TPPの母屋を乗っ取ろうとしているのだろう。一旦入ってしまえば、中国の申請中の発言もないものとしたり、ルールを中国流に書き換えることもできると言う魂胆も見え隠れする。そもそも、中国が自らの国家体制を直してまでもTPPに参加したいはずない。

何しろ、南シナ海におけるフィリピンが国連海洋法条約の違反などで常設国際仲裁裁判所に対して申し立てた仲裁裁判で、中国の主張は認められないとした裁決をだしたが、中国は紙切れとして無視したくらいだ。国際ルールは従わないか、自ら書き直すのが中国流だ。

実際、中国は国際機関のトップを次々と取って、自国有利なルール作りをしている。TPPルールについても書き換えをするために参加するといっても不思議ではない。
TPPへの参加については、すべての加盟国の同意が必要なので、中国の加盟はもともとハードルが高い。

早速、中国と貿易問題を抱えるオーストリアのテハン貿易相はTPP協定の高い水準が満たせるかと牽制している。日本の麻生太郎財務相も、国有企業の優遇などを問題としている。

中国に続いて台湾もTPPの加盟を正式に申請した。

TPPについては、イギリスが加盟申請し、ここに来て中国と台湾が続いた。アメリカも一度は離脱したが、再び復帰するという話もあり、韓国も興味を示しているようだ。

かつては日本がTPPに参加すると、自由貿易の結果日本の産業が滅びるというTPP亡国論が一部の人の間で流行ったが、世界からの今の人気ぶりで、このTPP亡国論はどこかに消えたようだ。

中国にとってイヤな「総裁候補」

2000年代からTPP構想がでてきたが、かなり初期段階から中国包囲網の様相があった。ここで、貿易と安全保障は密接につながっているとの国際関係の一般論がある。となると、貿易関係の関係は安全保障にも影響を及ぼす。

QUAD(日米豪印)は対中戦略で第一次安倍政権が発案し具体化されてきたが、TPPやQUADは、それぞれ発足の経緯からみても、貿易と安全保障での対中包囲網だ。自由・民主主義という共通の価値観に基づくもので、不自由・非民主主義の中国国家観とは対局をなすものだ。

ここにきて、安全保障での対中包囲網として、AUKUS(オーカス)と呼ばれる米英豪連携も動いている。これは、英語圏のファイブアイズの中でも枠組みであり、現在の最高軍事機密である原潜についてアメリカからオーストラリアに技術協力するもので、画期的だ。原潜は安保理常任理事国(米、英、ロ、仏、中)とインドだけが保有しているので、それにオーストラリアも加わる。

このAUKUSには、非英語圏ではなかなか参加できない。その代わりに、QUADは非英語圏の日本が主導しているので、非英語圏でも参加ハードルは低いはずだ。台湾がTPPに加盟する先には、台湾も対中包囲網の「一国」とする将来が控えている。

もちろん、TPPは経済活動なので、表向きは安全保障とは無関係だ。しかし、最近においては、経済安全保障という考え方が主流になっているので、安全保障を睨んだ経済活動という意味では、TPPにどのような国が参加するかは大きい要素だ。

台湾は、中国と比べてはるかに民主主義国であるし、資本主義国なのでTPP加入へのハードルは低いので、日本は歓迎だ。

貿易と安全保障が一体となって、今後中国包囲網が形成されていくだろう。その際、原子力潜水艦(原潜)が安全保障ではカギになる。というのは、原潜が現在の世界では最も抑止力があるものだからだ。つまり、中国が最も嫌うものである。

折しも自民党総裁選において、自民党四候補に対し、26日のテレビ番組において、日本の原潜保有について質問が出た。筆者は自民党総裁選の政策論争は社内ブレインストーミングのようなものであるとおもっているので、是非思い切って議論すべきという立場だ。河野・高市氏は原潜保有「検討」、岸田・野田氏は「慎重」という対応だった。この観点からいえば、中国にとってイヤな候補は自ずと絞られてくる。

No image

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加