平岡エスパルス“らしさ”で5試合ぶりの勝ち点3 チームに変化を与えた指揮官の手腕

平岡エスパルス“らしさ”で5試合ぶりの勝ち点3 チームに変化を与えた指揮官の手腕

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  • 更新日:2021/11/25
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清水エスパルスの指揮を執る平岡宏章監督【写真:Getty Images】

【J番記者コラム】広島戦で久々の出番を得た選手たちが期待に応える働き

平岡宏章監督が緊急登板となったJ1リーグ第35節の北海道コンサドーレ札幌戦は、中2日という短い準備期間でそれまで無得点での3連敗を喫していたチームを立て直し、2-2の引き分けとして貴重な勝ち点1を掴んだ。

そこから代表ウィークの2週間の中断期間を挟んで臨んだ第36節のサンフレッチェ広島戦。16位の清水エスパルスと降格圏の17位徳島ヴォルティスとの勝ち点差は「3」。得失点差も「2」しかなく、今節の結果次第では順位が入れ替わり、降格圏へ落ちる可能性もあった。
対戦相手の広島も10月下旬に城福浩監督が退任し、沢田謙太郎ヘッドコーチが新監督に就任したが、その後の2試合を1分1敗とし、いまだに勝利がなくすでに残留は決めているものの新監督とともに早く勝利を掴み、一桁順位を狙いたい試合でもあった。

清水は出場停止や怪我人の関係で前節から3人を入れ替えた。そのうちの2人は怪我で長期離脱し、12試合ぶりにメンバー入り即先発出場のMF後藤優介。そして、6月6日のルヴァンカップ・プレーオフステージ第2戦の鹿島アントラーズ戦(1-2)で頭蓋骨骨折という大怪我を負ったDF鈴木義宜がリーグ戦174日ぶりに先発復帰となり、もう1人のFW鈴木唯人を含めて、それぞれに平岡監督の期待に応える活躍を見せてくれた。

後藤は本来のFWではなく左サイドハーフとして起用されたが、効果的なクロスを何本も上げ、献身的に動き回り広島守備陣を翻弄し、後半16分に交代したが、スプリント回数は22回と鈴木唯、FWチアゴ・サンタナの23回に続くスタッツとなり、攻撃を引っ張った。

鈴木唯は前線からプレッシャーを掛け、何度もゴールへ迫った。前半30分にチアゴ・サンタナが挙げた決勝ゴールも鈴木唯がタイミングよく広島DFの裏のスペースを突いて放ったシュートがポストに弾かれ、そのボールを押し込んだゴールだった。

鈴木義は今シーズンに大分トリニータから完全移籍して来たが、大分時代は2017シーズンから19シーズンまで3年連続フルタイム出場し、20シーズンも脳震盪の影響で欠場した1試合以外は全試合出場を果たした。

その「鉄人」は19試合ぶりの先発であっても安定した守備からの的確なシュートブロック。そして、唯一の得点の起点となったハーフライン辺りから鈴木唯の動き出しに合わせたスルーパスなどブランクを全く感じさせないプレーで勝利に貢献した。風貌とその落ち着きからベテラン選手のようだが、まだ29歳。これからが益々楽しみな選手の1人だ。

前任者たちへのリスペクトも忘れていない平岡監督

輝いたのは、この3人だけではない。2試合連続ゴールを決め、ゴールだけでなく体を張ったボールキープで攻撃の時間を作ったチアゴ・サンタナ、効果的なオーバーラップからの攻撃参加を見せた両サイドバックのDF原輝綺、DF片山瑛一、鈴木義とのセンターバックのコンビを初めて組み、ほぼノーミスで古巣広島の攻撃を防いだDF井林章らの働きも際立った。

ボランチのMF松岡大起は両チームトップの走行距離で攻撃の芽を摘み取り、広島を前半シュート0本に抑え、MF竹内涼はいつも以上の気迫でボールを追いかけていた。そして、厳しい状況の中、日本代表から帰還したGK権田修一がその実力を発揮し、後半の広島の反撃から清水ゴールを死守した。

ただ、やはりこの試合でこれだけチームに変化を与えたのは平岡監督だろう。明らかに以前とは選手たちの動きに違いがあり、選手の特徴が出ていたと感じたが、平岡監督は「それはロティーナ(前監督)さんの時も同じだったと思うので、それから『少しテンポを上げましょう』という話でやっている。見た目は『変わった』とか、『全然違う』と思われるかもですが、そういう意味ではロティーナさんがやって来たこと、イバン(パランコヘッドコーチ)がやって来たことが継承されている」と前任者たちへのリスペクトも忘れていない。

そして、平岡監督らしさは選手交代にも表れていた。前節に貴重な同点弾を決め、「残留のキーマン」になるのではと思われたMF滝裕太は5人の交代枠を使い切ったなかでフィールドプレイヤーとしては唯一、試合に出場することはなかった。

後半30分の場面ではダメ押し点が欲しい時間帯ではあったが、追加点を狙いつつ、フィジカルも強く1対1の守備にも定評がある特別指定選手のDF山原怜音をサイドハーフで起用した。どうしても前節のことを考えればもう1度、愛弟子である滝の活躍に期待したいところだが、冷静に状況を判断しての交代だったのだろう。その後の勝負時と判断した同39分には19試合ぶりの出場となるDFエウシーニョをはじめ、MF中村慶太、FWディサロ・燦シルヴァーノの一気の3枚代えでゲームを締め、5試合ぶりの勝ち点3を、16試合ぶりの無失点で飾った。

自力でJ1残留できる権利があることをプラスに

選手、スタッフ、そして、今シーズン初のチケット完売となってチームを後押ししたサポーターが一丸となって掴んだ勝利だった。試合前には2019シーズン以来となるチームがスタジアムに到着する際に「バス待ち」をして士気を高めた。そのバス待ちをするサポーターの後ろには18年に「サッカーを愛する静岡、清水の皆さんにエスパルスの優勝を届けたい」とクラブに復帰を果たし、再建を進めるも、同年11月23日に志半ばで急逝された久米一正元GMの3回目の命日が近いということで「これからも久米さんと共に」という横断幕も掲げられていた。

来年にはクラブ創立30周年を迎える清水は、これまでの歴史の中で様々な人たちが関り、今も多くのサポーターやパートナーに支えられていることを実感した試合でもあった。

今節の結果で、来季J2へ降格する3チームが決定してしまったが、サッカーを愛し、同じJリーグのクラブを愛する者としては選手、スタッフ、サポーターの涙を見るのは辛いことだ。今シーズンも残り2試合となり、降格するチームは「1」となったが、自力で残留できる権利があることをプラスに捉えたい。

次節の浦和レッズ戦は、アウェーでの一戦。埼玉スタジアムでの「対浦和」での勝利は、2013年まで遡らなければならない。完全アウェーの中ではあるが、スタジアムには入れないサポーターが後押ししていることを忘れずに、怯むことなく勝利を掴み獲って欲しい。(Sの極み・下舘浩久 / Hirohisa Shimodate)

下舘浩久

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