60年前のロシア軍戦車、ドニプロ川の橋頭堡攻撃試み撃破される?

60年前のロシア軍戦車、ドニプロ川の橋頭堡攻撃試み撃破される?

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2023/11/21

ウクライナの海兵隊は10月19日にドニプロ川を渡河し、ロシア軍占領下の左岸(東岸)にある集落クリンキ付近に橋頭堡(きょうとうほ)を築いた。ウクライナ軍南部司令部にとって橋頭堡の確保は、このところ停滞している南部反攻の戦線を維持し、いまだロシアが実効支配するヘルソン州南部へ攻勢をかける足場固めの一歩となる。すなわち、クリミア奪還へ向けた第一関門だ。

それは、ロシア政府も承知している。このたび、ヘルソン州南部に展開するロシア軍の自動車化狙撃連隊が、前進を続けるウクライナ海兵隊に機甲反撃を試みたらしいとの情報が、数週間ぶり浮上した。

だが、ロシアにとっては良いニュースとはいえない。先週、ウクライナのドローンがクリンキの東方3~5km地点でロシア軍のT-62戦車を撃破したというのだ。

単なるT-62ではない。1960年代に製造された戦車を改良した「Obr.2022型」だ。ロシアは昨年、ウクライナ侵攻での戦車の損失が1000両を超えたため、重量41トン・4人乗りのT-62数百両を倉庫から引っ張り出して現役復帰させている。

一部のT-62は大きな改良を施さないまま前線に送られた。一方、暗視装置を元の型よりは新式の1PN96MT-02に換装し、T-62M Obr.2022として戦線復帰した車両や、反応装甲を追加してT-62MV Obr.2022となった車両もある。

T-62 Obr.2022の作戦行動に関する情報はあまり多くないが、ロシアメディアは先週、ザポリージャ州のロシア軍部隊がこの型の戦車で訓練を行っていると報じていた。

この部隊の一部が西方のクリンキ方面にも配備された可能性がある。独立系調査組織の紛争情報チーム(CIT)は、T-62について「戦線の後方で確認される数が最近増えており、ヘルソン戦線の攻勢軸に増援として送られていることが示唆される」と指摘している

ロシア軍がクリンキの橋頭堡を攻撃するにあたりT-62MV Obr. 2022をどのように使ったか、全容は明らかになっていない。ロシア軍はT-62、T-55、T-54といった旧式戦車を即席の榴弾(りゅうだん)砲として運用し、ウクライナ軍の陣地への突撃には用いない傾向がある。

榴弾砲としてなら、T-62の115mm主砲をめいっぱい高仰角にすれば8km先まで射程に入るだろう。それだけ距離が離れていれば、ウクライナ軍の戦車やミサイルによる反撃も避けられるかもしれない。

クリンキ近郊でウクライナのドローンが撃破したT-62は、おそらく最寄りのウクライナ軍陣地まで3kmか、もっと近くまで迫っていたと思われる。クリンキ橋頭堡への直接攻撃を試みる合同部隊の一翼を担っていた可能性がある。

いずれにせよ、T-62戦車はその作戦を生き延びることはできず、殺到したウクライナのドローンに破壊された。

この結果は驚くべきことではない。ロシア空軍は地域制空権を握っており、40km離れた場所からクリンキに滑空弾を撃ち込めるが、局所的にはウクライナ軍のほうが優勢だ。

ウクライナ軍は海兵隊が渡河に成功するまで数週間かけ、ドニプロ川左岸に展開していたロシアの防空網やドローンを妨害・制圧し、自軍のドローンを配備して監視、攻撃、補給任務を担わせている。

ロシア軍がクリンキ上空を哨戒飛行するウクライナのドローンを全て活動停止に追い込まない限り、橋頭堡への攻撃は今後も、大破し煙を上げるT-62戦車と同じ運命をたどるだろう。

forbes.com 原文

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