約50年ぶりに地球へ。新たな月の石を解析した結果、これまでよりも10億年若い石だったことが判明

約50年ぶりに地球へ。新たな月の石を解析した結果、これまでよりも10億年若い石だったことが判明

  • ギズモード・ジャパン
  • 更新日:2021/10/14
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Image: Chinese National Space Agency’s (CNSA) Lunar Exploration and Space Engineering Center via Gizmodo US

謎めいているからこそ、魅力的な存在。

月は最も身近でありながら、いまだ科学的に解明されていないことが多い天体です。月のなりたちについては諸説ありますが、今からおよそ45億年前、まだ地球ができたてほやほやだった頃に、別の原始惑星と衝突して吹き飛んだ惑星のかけらが重力で結びつき、やがて月となったとする「ジャイアントインパクト説」が有力です。

ところが、月のその後の30億年について、確かなことは知られていません。ほかの天体との接触はあったのか、いつ頃から今のような姿になったのか。水の存在や、地下に広がっているとされる巨大な空洞も気になるところです。

47年ぶりのサンプルリターン

月をもっとよく知るためには月から岩石のサンプルを取ってきて調べるのが一番確実な方法なのですが、ソビエト連邦が1974年に月の表面から土を持ち帰って以来、成し遂げられていませんでした。

その長かった月面探査の空白を埋めたのが、昨年12月にサンプルリターン(月の土や岩石のサンプルを地球に持ち帰ること)を成功させた中国の月面探査機・嫦娥(じょうがい)5号(英名:Chang'e)です。嫦娥5号が地球へ持ち帰った月の石を調べた結果、形成された時期が今まで考えられていたよりも10億年ほど後だったことがわかったそうです。つまり、月面には思っていたよりずっと最近まで液状の溶岩が存在していたことになり、なぜ溶岩が流れるほどまでに月が熱かったのかという新たな謎を生み出しました。

年代測定の結果は「10億年若かった」

嫦娥5号が持ち帰った月の石はふたつあって、どちらも「嵐の大洋」ですくい取られてきた玄武岩です。嵐の大洋とは、月のおもて側に見えている黒っぽい部分のひとつ。いずれの石も嫦娥5号が2020年12月1日に採取し、2週間後には地球に持ち帰りました。

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嫦娥5号の回収カプセルPhoto: Chinese National Space Agency’s (CNSA) Lunar Exploration and Space Engineering Center via Gizmodo US

鉱物学的解析やスペクトル解析により、以前から嵐の大洋あたりの岩石は月のほかの表面に比べて若いであろうことが予想されていました。だいたい12億から32億年ほど前に固まった石だろうと考えられていたものの、正確にはわからずじまいでした。

そこで今回新たに採取された月の石に含まれていた鉛の同位体を調べた結果、19.63億年前のものであることが判明(誤差は5700万年前後)。少なくとも19.63億年前までは、月の表面に溶岩が流れ出るほど月の温度が高かったことがわかったのです。

ちょっと変わった玄武岩

そもそもなぜ嵐の大洋で採れる石はほかのエリアの石よりも若いんでしょうか? これには大洋のなりたちが大きく関わっています。

嵐の大洋を含めた月の「海」と呼ばれている部分は、もともと大きな隕石が落下してきた衝撃でできたものです。ほかのもっと小規模なクレーターと違うのは、その衝撃があまりに大きかったために地殻にヒビが入り、内部のマントルから溶けた岩石が湧き上がってきた点。月の表面に浮上してきた溶岩はやがて固まり、なめらかな「海」のような地形にならされていきます。色がほかの部分と比べて黒っぽいのは、玄武岩で構成されているからなんですね。

その玄武岩のサンプルを今回調査した研究者のひとり、マンチェスター大学のジョイ(Katherine Joy)さんは、このように説明しています。

調査結果からは、嵐の大洋で見つかった玄武岩はおよそ20億年前に固まったもので、これまでに年代測定された月の石のどれよりも10億年ほど最近だったことが判明しました。

さらに、これまで見てきたどの玄武岩ともタイプが違うことも判明しました。おそらく、月のマントルの異なる部分から由来しているものと思われます。

なぜ月は熱かったのか

そして、Joyさんはこのようにも話しています。

月が誕生してから25億年もの長い間、表面に溶岩がしみ出てくるほどマントルが熱を保ち続けられたのはどうしてなのか? それが次に解明するべき問題ですね。

これにはいくつかの可能性が考えられるそうです。まずは当たり前に聞こえますが、月が誕生した当初からマントルが溶けていたとする説。地球だって誕生時は火の玉みたいな溶岩のかたまりでしたから。また、月の物質が放射性崩壊して熱を生み出している可能性もあるそうです。アポロ11号が1969年に地球に持ち帰ったサンプルからは、放射性崩壊が確認されています。ただし、今回嫦娥5号が持ち帰ったサンプルからは同様の反応は確認されなかったそうです。

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アポロ8号が1968年12月に撮影した月面。無数のクレーターが苛烈な過去を物語るImage: NASA/JSC via Gizmodo US

また、度重なる隕石の落下による衝撃からヒートアップした可能性も。さらに、月では地殻変動がないため、地球の潮汐力が月面に加わると潮汐加熱を起こすことも要因と考えられるそうです。

太陽系惑星の年代を知るカギに

今回の調査からは、少なくとも今から19.63億年前までは月のマントルがぐらぐらと煮たった状態にあり、地殻の下からドロドロに溶けた玄武岩が表面に上がってきていた様子が明らかになりました。NASAのアルテミス計画も月からのサンプルリターンを計画していることから、今後もさらにいろいろな月の石の年代測定が進むことが期待されています。

そして、月の石の年代測定からは、月のそのものの歴史を紐解くのはもちろんのこと、地球以外の太陽系惑星の年代を測定する上でも重要なベンチマークとなってくるそうです。月から始まり、太陽系がどれぐらい古いのか(または新しいのか)を測定する旅は、まだ始まったばかり。

今回の研究結果は学術誌『Science』に掲載されています。

Reference:Science

山田ちとら

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