子どものがんばりをぺたっと貼って、ほめて認める子育て「ぺたほめ®︎教育法」を提唱する藤田敦子さん。シングルマザーとして働きながら、2人の息子さんを現役で公立医学部に合格させた藤田さんが、「勉強好きになるかどうかの分かれ目」と言う小学生時代。「どんなに忙しい親でもやっておくべき」とおすすめする3つのことについて、お話を伺いました。
優先順位の1位は「子どもの話を聞くこと」。ひたすら共感してあげましょう
子どもの話を聞くこと、そのための時間を取ることがやっぱり一番大切だと思います。どんなに忙しくても、お風呂やお迎えの時間などを「この時間は子どもの話を聞く時間にしよう」と決めると、意外と毎日続けられますよ。15分時間が取れたとして、その時間で勉強を見てあげるよりも、子どもの話を聞いてあげるほうがずっと大事です。そして、そのほうが子どもはがんばってくれるのです。ほめどころを探せたらもちろんほめて、困ってることや嫌だったこともなんでも聞いてあげる。「そうやったん。がんばってえらかったな」「悲しかったんやな」って。おうむ返しでいいから、共感してあげる。そうしたら大抵のことは解決すると思っています。お母さんが忙しいオーラを出すと、子どもって遠慮するんですよ。遠慮すると、言いたいことも言わなくなって、言わないことが溜まってくると後々大変なことになる場合もあります。例えばいじめや「学校に行きたくない」なども、早いうちに子どもが話してくれたら「どうしたい?先生に言ったほうがいい?」って、親も早いうちに対処ができますよね。
早めの対処で乗り切った「筆箱がゴミ箱に」事件
うちの長男が小学校1年生のときに、筆箱をゴミ箱に捨てられた事件があったんです。先生は自宅まで謝罪に来てくれましたが、なんと息子の目の前で謝るという失態。私はあまり深刻にすると逆に子どもが傷ついてしまうと思って、大事にはしませんでした。1年生ですし、もしかしてギャグでやっただけかもしれない。誰が犯人かは問題ではなく、それよりもみんなで仲良くしたらいいと思い、長男の友達関係を把握するためにより詳しく話を聞くようにしました。お友達の名前を覚えるために入学式の写真をコピーして、子どもに聞きつつ名前を書き込みもしました。そして「おもしろいおばちゃんがいるから、ガイト(長男)のところに遊びに行こう」と、お友達みんなにうちに遊びに来てもらう方向に持っていったんですね。結果、その後は何も起きませんでした。早めの段階で子どもにしっかり話を聞いて対処したおかげで、大きな問題にならずに済んだと思っています。「お母さんにしゃべってよかったな」っていうのが日々繰り返されると、失敗したこともちゃんと話してくれるようになります。そして、そういうお母さんだと子どもはがんばれる。話してくれたことは否定せず、丸ごと受け止めてあげてください。そうでないと、子どもはマイナスなことを親に言わなくなります。また、言いにくいことを思い切って伝えてくれたときには「教えてくれてありがとうな」って、ひと言添えてあげてくださいね。
2番目は「女優力」。自分は女優だと思って、とにかく子どもをほめまくる!
お母さんは女優になりきって、とにかく子どもをほめてほめてほめまくることです。学校から帰ってきてランドセルを置いただけでも、「すご~い! 宿題やるんや!」と先にほめる(笑)。「そうは言っても、うちの子、ほめるところがないんです」というお母さんもいらっしゃいますけど、できないところを見るのではなく、できているところを見つけてほめてあげてください。ガミガミ言うのはなるべく減らしましょう。例えば、うちの次男は字がすごく汚くて、書き順もめちゃくちゃだったんですね。どのくらい汚いかと言うと、計算して答えを書き写すときに自分で読み間違えちゃうくらい。書き順が間違っていても、本人は「いいやん、いいやん」という感じだったんですけど、そこは私むっちゃがんばって、書き順のことだけでも100回くらい女優になりました(笑)。どんなに汚くても「がんばって書いていてえらいよね」って先にほめて。「でもね、書き順が違うから、それでバツつけられたらせっかくできてるのにもったいないよね」「ていねいに書こうと思ったらできる子だから、ママと一緒にやってみよう」「ほら。できるやん」って。失敗したときの反応も大事だと思います。「ママは○歳のときこんなんできひんかったよ。これだけできてるんやから、すごいわ」ってできていることを認めてあげたり、「人間やから、そんないつもできひんくて当たり前やん」っていまの失敗を「それは大丈夫やで」って思わせてあげたり。テストで悪い点数を取ってきたとしても、「なんで見直さへんかったん!?」とは責めません。学校から帰ってくる段階で「お母さん、悲しむやろな」って思ってるでしょう。そのくらいの反省で私は充分だと思います。「いつもがんばってんねんから大丈夫!」「ノーベル賞取った人も、たくさん失敗しはったんやで。おんぎゃーって産まれたときから勉強できはったわけちゃうしな!」と、ここでも女優力を発揮していました。
「ぺたほめ」で「自己申告のがんばり」を素直に認めてあげる
また、自己申告制の「ぺたほめ」で、ほめられもれがないようにすることも大事です。「ぺたほめ」とは私が提唱している子育て方法で、子どもががんばって描いた絵やテストなどをリビングなどの壁などに「ぺた」と貼って、がんばりを見える化し、親や祖父母、来客などたくさんの人から「ほめ」られるようにする、というものです。子どもはほめられた数だけ自信がついて、またがんばろうとやる気を出します。ここで大事なのは、貼るものは自己申告制ということです。「あんまり上手くないなぁ」と思う絵だったとしても、子どもが「がんばって描いたから貼って!」と言ってきたら貼ってあげましょう。そして「がんばって描いてえらかったね〜!」と女優力を発揮してほめる。子どもの「自己申告のがんばり」をまるごと認められるお母さんになってください。「ほめて欲しい」が100%叶うと、子どもは「お母さんは自分のがんばりを認めてくれている」と思えて、次のがんばりにつながるのです。
3番目は「笑い」!子どもを人気者にするために、母が笑いを取って見本を見せる
『二月の勝者』(注:高瀬志帆作の中学受験漫画。小学館刊)でカレンちゃんという秀才の女の子が出てきますよね。彼女が授業中に手を上げて「私できる」って言ったときに、「あの子は塾行ってるから」と陰口をたたかれるシーンがありますけど、同じように勉強ができたとしても、好かれる子と嫌われる子っていると思うんです。その差は紙一重というか。じゃあ、何で差がつくかって考えると、私が関西人だからかもしれませんが、それは「おもしろい」かどうかだな、と。笑いを取れる子は嫌われないし、人気者になれると思うんです。長男が小学校1年生のとき、1学年1クラスでクラス替えもないから、「いじめに巻き込まれない子にしよう」というのはすごく意識していました。学校に行くのが嫌になると、勉強だってがんばる気をなくしちゃいますから。そのときに行き着いた「賢くてもいじめられない最善の方法」が、「笑いのセンスのある子に育てる」。そのためにはまず自分からだと思い、自ら子どもたちの前で笑いを取って、見本を見せるようにしていました。笑うことってすごく大切です。ストレス発散にもなるし、家庭が明るくなる。学校や塾でがんばってきた子どもたちが、自宅では安らげるようになる。そして子どもたちも笑いを取れるようになる。お母さんが家で笑いを取るって、いいことづくめなんです。私はうっかりミスがとても多いので、それを自虐ネタにしていました。自転車で買い物に行ったのに歩いて帰ってきたとか、スーパーで車をどこに停めたかわからなくなったとか。物を取りに2階へ上がったのに、何を取りに行ったのか忘れてしまったなんて日常茶飯事。それをネタにして子どもが笑ってくれるのがうれしくて、失敗するたびに「今日はこれ言おう」って考えていました。失敗って恥ずかしいから隠したいっていう人も多いと思いますけど、「ネタができた! ラッキー!」って思って、子どもに言ってみてください。
【まとめ】 勉強好きになるかどうか分かれ目の小学生時代に、忙しくてもやって欲しい3つのこと
1. 毎日子どもの話を聞く時間をつくる。そしてひたすら共感する。2. 女優力を磨いて、子どもをほめてほめてほめまくる。3. 母親自ら笑いを取って、子どもに笑いのセンスを身につけさせる。次回は、「中学受験は親子の受験!忙しかったシンママが子どもを合格に導いた方法とは?」についてお話を伺います。
続きが気になる人はこの本をチェック!

▲クリックするとAmazonページに飛べます。PROFILE藤田敦子(ふじた あつこ)ぺたほめ医専アカデミー代表。日本心理学会認定心理士・日本心理学会正会員。同志社大学文学部心理学専攻卒業。「ぺたほめ教育法」で息子二人を国公立医大医学部現役合格に導いたシングルマザー。2018 年「ぺたほめ医専アカデミー」設立。小学 3 年生までの子どもの親を対象とした「ぺたほめ本気塾」開講。2020 年より学習雑誌『小学一年生』(小学館)、2021 年よりWeb 版『Hugkum』(小学館)連載。2022年には一般社団法人「日本ぺたほめアカデミー協会」設立、理事長に就任。「ぺたほめ講師養成講座」でぺたほめ講師を育成し、日本中から教育虐待をなくすべく18歳までの親を対象にセミナーなども開催。著書に『母親が変わればうまくいく 第一志望校に合格させた母親がやっている子育て39』(講談社)などがある。藤田敦子オフィシャルブログ:https://ameblo.jp/petahome/Instagram:@atsuko.fujita0912

withonline