なぜ賛否両論? "青森山田スタイル"は国民的コンテンツの醍醐味 高校サッカーの「健全な姿」「清々しい姿」とは何か

なぜ賛否両論? "青森山田スタイル"は国民的コンテンツの醍醐味 高校サッカーの「健全な姿」「清々しい姿」とは何か

  • Football ZONE WEB
  • 更新日:2022/01/15
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第100回全国高校サッカー選手権を制した青森山田【写真:小林 靖】

【識者コラム】高校サッカー選手権優勝の青森山田、勝利のために最大限のことをやった

結論から言ってしまえば青森山田(青森)に問題はない。ルールの中で勝利のために最大限のことをやる。もし彼らがルールに反する行為を繰り返していたら、すでに退場者が続出して決勝までも辿り着けていないだろう。

その一方で高校サッカー、とりわけ選手権に一般のファンが求める健全さ、清々しさと言った基準から見たら、青森山田の戦いぶりに違和感を覚えても不思議ではない。高校サッカーは育成年代でありながら、プロとアマチュアの間ぐらいに位置している。ただ、そのなかでクラブユースやこの年代のリーグ戦の最高峰であるプレミアリーグに比べるとアマチュア寄りになる。

アマチュアという言い方をすると一部で語弊があるかもしれないが、要はサッカーで何を目指して行くのかということ。プレミアリーグを舞台に戦っているようなチームはクラブユースであれ、高体連であれプロを夢というより現実的な目標にしており、実際に大学経由を含めれば相当数の選手がその目標を叶え、そこから厳しい世界に身を置いて挑戦していく。

青森山田は高校王者でありながら、そうした猛者ばかりが集まるプレミアリーグのチャンピオンだ。技術的に見れば2位の清水エスパルスユースや3位の横浜F・マリノスユースのほうが高いかもしれない。しかし、そうした相手と切磋琢磨するなかでセットプレーの強さも含む近年の“山田スタイル”は育まれてきた。その基準をもっぱら高体連の大会である選手権でも変えないのが黒田剛監督のポリシーでもあるようだ。

日頃から日本のサッカーに触れているファンならば、この年代の最高峰は選手権ではなくプレミアリーグであることは周知の事実だ。準々決勝でPK戦負けしたが、そこまでの快進撃で話題を集めた静岡学園は1つカテゴリーが下のプリンスリーグ東海で優勝し、入れ替え戦で来季のプレミアリーグ入りを果たした。

ジュビロ磐田の新体制発表の後、静岡学園のエース格である古川陽介に聞くと「プレミア昇格というのがこの年代の目標でした」と語っている。実際に昨年のプレミアリーグで高体連から参加していたのはEASTで青森山田、流通経済大柏、市立船橋の3校。WESTは選手権の決勝で青森山田と戦った大津、そして東福岡だった。

言い方を変えればプレミアリーグ20チームのうち、15チームはJリーグクラブの下部組織、いわゆるJユースのチームだ。高体連のチームもトップトップであれば例外なく目指す場所だが、かなり狭き門である。そういう世界でJユースをも制して頂点に君臨するのが青森山田というチームなのだ。

ファンが選手権に求めるものと青森山田のようなチームが目指すものとの乖離

繰り返しになるが、試合で笛を吹くのはレフェリーだ。もし試合中、青森山田の選手がカードに値するようなファウルやラフプレーを行った場合、もしレフェリーが見逃していたとしたら、それは裁かなかった、あるいは見逃したレフェリーの問題になる。

もちろん青森山田だから勝つために何をやっても許せるわけではない。あくまでサッカーの公式ルールの中で最大限、勝利に徹した戦い方をしている。これは日本代表の長友佑都に聞いた話でもあるが、日本代表で試合をする時、最初にガツっと当たってみて、その時のレフェリーのリアクションを見て、そこからのプレー基準を測っていくという。

よく”鹿島る”と呼ばれるリードしている残り時間にコーナー付近でボールキープしたり、後ろで回して時間を進めるという行為はプロの世界であっても賛否両論はあるが、現行ルールにおいては違反ではない。

高校年代であってもトップトップの選手はレフェリーの基準というものをできるだけ早く把握して、ゲームをコントロールしていけることも大事な要素になる。プロを目指す選手であれば、なおさらだ。

一方で昔からのファンが高校サッカー、特に冬の風物詩である選手権に求めるイメージというものがある。そうした目線で見たらルールのなかとはいえ、ギリギリのところでコンタクトしたり、必要ならファウルで止めることも厭わない青森山田の戦い方は、そうした健全なイメージに反する部分があるのかもしれない。

サッカーをどういう目線で観るかはファンの自由だ。もちろん今回の青森山田のプレーを清々しくないと評価するのも1つの見方かもしれない。しかし、しかるべきルールの中で勝利のために最大限のことをやっているにすぎない。

青森山田は絶対王者と見られるかもしれないが、この年代全体で言えばチャレンジャーでもある。年度が変わればまたプレミアリーグで猛者たちと凌ぎを削りながら、多くの選手はプロを目指して厳しい環境に身を投じていくという基準で見たら、そこにあるのは健全な姿だ。

そういう意味では普段Jリーグや欧州などプロのサッカーをあまり観ない層も含めて、一般的にファンが選手権に求めるものと青森山田のようなチームが目指しているものに少々、乖離が生じているのかもしれない。

世界の基準から見たら、青森山田もいたってノーマルだ

ただ、繰り返しになるがサッカーにはルールがある。そして多くの大会ではフェアプレーポイントというものが設けられており、警告の少なさなどの評価基準からフェアプレー賞を発表している。明らかに非紳士的な行為や相手を欺く行為、またレイトタックルなどの相手の怪我を誘発するようなラフプレーには警告、時には退場が下されるべきだ。

よく日本人にはマリーシアがないと言われるが、筆者の個人的な見解としてはそれを南米の代表チームのところまで身に付けるのは難しいし、必要もないと思っている。それよりも世界で勝つために、日本サッカーが伸ばすべき要素はまだまだたくさんあるからだ。

一方でそうしたマリーシアを含めて、世界の基準は知っておく必要がある。その基準から見たら、今回の青森山田もいたってノーマルだ。ただ、こうした声が出たり、議論が生じるのも選手権というコアなサッカーファンを超えた国民的なコンテンツの醍醐味なのかもしれない。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸

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