13年間で21億円の横領発覚!そのとき、会社が取るべき対応は【弁護士が解説】

13年間で21億円の横領発覚!そのとき、会社が取るべき対応は【弁護士が解説】

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/08/06
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社員による横領をはじめ、企業不祥事が発生した場合、当該企業は不祥事を起こした社員の責任をいかに追及するか判断を迫られることになります。今回は、業務上横領事件が発生した場合の具体的な手続きと「刑事告訴」において注意すべきポイントについて、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

“対岸の火事”ではない…「業務上横領」事件

業務上横領をはじめとする企業不祥事はニュースなどで目にすることも多いですが、不祥事が発生するのは誰もが知る大手企業ばかりではありません。

大々的に報道されるような被害額の大きい横領事件のほかにも、報道されていないものまで含めれば、業務上横領事件の件数はかなりの数にのぼることでしょう。

どの企業にとっても、業務上横領などの企業不祥事は決して対岸の火事ではないのです。

「業務上横領」が発覚するまで

業務上横領は、親告罪ではありません。すなわち、被害者からの刑事告訴がなくとも、検察が公訴を提起できる犯罪です。

しかし、その性質上、業務上横領は被害者以外が被害を知ること自体が困難でしょう。そのため、実際は、被害者が被害の事実を知って刑事告訴をすることで警察が捜査に着手することが一般的であるといえます。

グローリー子会社社員による21億円横領事件

最近報道された業務上横領事件として、グローリー子会社社員による21億円横領事件が挙げられます。

2022年3月、東証プライム市場上場企業であるグローリー株式会社の子会社で社員による横領があったことが報道されました※。
※ 朝日新聞DIGITAL:子会社社員が21億円横領、17億円で馬券購入か 東証1部の企業で

この事件での横領額は13年間で計約21億5,500万円にものぼり、横領した金銭は馬券の購入や遊興費などに使ったと報じられています。会社がこの社員を刑事告訴したことも報じられており、詳しい事実関係は、今後の捜査、公判を通じて明らかになっていくものと思います。

社員による横領を「刑事告訴」する3つのメリット

1.刑事責任の追及

刑事告訴によって警察が捜査に着手することにより、横領事件の全容が解明されれば、横領した社員の刑事責任を明確にすることができます。

なお、業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役とされています(刑法253条)。

2.被害額の回収につながる

1度横領をしたら、たとえ全額を返済しても罪を免れるものではありません。しかし、量刑の決定においては、返済の有無や金額が考慮されることが一般的です。

このため、横領におよんだ社員としては、できるだけ刑を軽くするために横領金を一部でも返済しようとする可能性があります。その意味で、刑事告訴が被害金の回収につながる可能性もあるのです。

ただし上記のとおり、弁償は刑の減軽にもつながりますので、本人に対してより重い刑事処罰を望む場合には、弁償の申し出に対する対応を慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

3.社内での再発予防

社内で横領が発覚しても厳しい処罰がなされないとなれば、他の社員のモチベーションに悪影響を与えるばかりか、横領や不正が繰り返されてしまうことにもなりかねません。

別途再発防止策の検討が必要であることはいうまでもありませんが、不正に対する責任追及の姿勢を明確に示すことは、社内の秩序維持や、同種の事案の再発防止にもつながります。

自社のみで「刑事告訴」対応が難しいワケ

業務上横領の刑事告訴を会社のみで対応することはおすすめできません。

刑事告訴対応に精通している弁護士に早期に相談することをおすすめします。それには3つの理由があります。

1.迅速に証拠を集める必要がある

刑事告訴をするためには、申告する事実を裏付けるに足る証拠が必要となります。必要な証拠がないと、そもそも、告訴状を受理してもらうことができません。

そして、証拠の収集は迅速に行う必要があります。証拠が隠滅されてしまうおそれがありますし、関係者に事情聴取を行う場合には、時間の経過とともに人の記憶があいまいになり、正確な情報が聞き取れなくなってしまう可能性もあるためです。

しかし、会社の方が本来の業務に加えて刑事告訴に対応することは、相当な負担になります。必要な証拠を見極め、その証拠がどこにあるか、どのような手続きで収集すべきかなどを検討し、獲得しなければならないのです。

そのうえ、その証拠の収集の仕方を誤れば、後々、その証拠の価値を棄損してしまうこともあります。

本人を含む関係者から聴取をする際も、「なにを」「どのような順序で」「どのような質問により」聴取するのか、高度な技術が必要となります。

2.告訴状を警察署に受理してもらうハードルが高い

告訴状には記載すべき内容があり、ポイントを押さえて作成する必要があります。

ポイントを外すと受理してもらえませんし、そもそも、業務上横領のように複雑な事案においては、弁護士に相談するよう警察が勧めてくる場合もあるようです。

告訴状は、作成したものを警察署に持参すればそのまま受理されるのでなく、告訴状の内容を説明に行ったその日に受理されないことのほうが多いです。告訴状の内容を把握した警察官が、受理のために必要な証拠を指摘してきたり、必要に応じて検察官に相談したうえで受理の可否を回答してきたり、受理前に警察が必要な捜査を先行させたり、といろいろなパターンがあります。

そこで、警察からの指摘を受けて証拠関係の説明をしたり、警察が証拠の収集を指示してきたことに対して意見したり、速やかに受理されるべき事案であることを主張したりと、個別の事案によりさまざまな対応を要します。

3.被害金の回収、懲戒処分、再発防止策の策定など、やるべき業務が多い

会社で業務上横領事件発生が発覚した場合、すべきことは刑事告訴だけではありません。

その不祥事により、会社がそれ以上の悪影響を被らないようとるべき措置があります。たとえば、被害金の回収、当該社員に対する適切な懲戒処分、再発防止策の策定などです。

これらについても、刑事告訴の手続きをあわせ、迅速に対応していく必要がありますが、本来の業務に従事しながら不祥事対応をすることは、ご担当のかたにとって大きな負担となります。

また、その対応を誤れば「不祥事対応が悪かった」と評価されてしまうリスクもあるため、迅速かつ適切な対応が求められるのです。

以上の理由から、業務上横領への対応を弁護士に依頼することにはさまざまなメリットがあるといえるでしょう。

西尾 公伸

Authense法律事務所

弁護士

西尾 公伸

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