平昌外交で優柔不断ぶりを世界に発信した米国

平昌外交で優柔不断ぶりを世界に発信した米国

  • JBpress
  • 更新日:2018/02/15
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韓国・江陵で会話する米国のマイク・ペンス副大統領と韓国の文在寅大統領(2018年2月10日撮影)。(c)AFP PHOTO / ARIS MESSINIS 〔AFPBB News

平昌五輪を契機にして、北朝鮮と米国との関係が雪解けを迎えるのか――。

開会式の前から米国が北朝鮮と対話をするかもしれないとの話は流れていた。だがホワイトハウスの報道官は、マイク・ペンス副大統領の訪韓前、対話することはないときっぱりと否定していた。

しかし米政府高官は韓国の文在寅大統領に対し、米国が北朝鮮と対話する用意があることを事前に告げていたことが分かった。

韓国政府がその事実を認めたのが13日。開会式を挟んで、米北韓の3国は外交上の駆け引きを活発化させていたわけだ。

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握手もせず5分で会場を後にしたが・・・

開会式前後の流れを振り返りたい。

開会式をご覧になった方は記憶に新しいと思うが、ペンス氏は五輪スタジアムで北朝鮮から参列した金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任理事委員長と金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会第一副部長とは目も合わせず、握手もしなかった。

平昌で行われたレセプションでも、ペンス氏は会場に遅れて入場。自分が座るテーブルの同席者とは握手をしたが、すでに着席していた金永南氏とだけは握手をしていない。いわゆる「ガン無視」の態度で、5分で会場を後にした。

ペンス氏は韓国入りする前、アラスカ州アンカレッジに立ち寄り、北朝鮮側と対話をする可能性ついて次のように述べている。

「米側から対話は求めないが、状況次第で(態度を)決めたい」

ペンス氏の胸中には、北朝鮮側と対話することもあるとの思いがあったはずだ。ところが「ガン無視」である。

これは明らかにペンス氏本人の意思というより、上(ホワイトハウス)からの指示があったと思われる。事実、ドナルド・トランプ政権の相談役だったクリスチャン・ウィットン氏は次のように話す。

「笑顔を見せず、握手もしないのは正しい行動。ペンス氏の行動はまさにホワイトハウスと共和党が求めたものだったのです」

ペンス氏はその言葉どおり、メディアの前では「ガン無視」を決め込んでいた。少なくともカメラの前で宥和なムードを演出することはなかった。

ワシントンポストにもらした本音

しかし11日付のワシントン・ポスト紙で本音を述べている。ワシントンへ戻る機中でジョッシュ・ロギン記者に語った。

「韓国では米朝間に冷たい空気が漂っていたが、水面下では新しい外交の扉が開かれようとしていた。ワシントンとピョンヤンが無条件で直接対話をするかもしれない」

韓国でのペンス氏の冷たい態度をすべて打ち消すかのような発言である。表面上は冷淡な振舞いをしたが、水面下では米朝両国が話し合いをする手応えを得ていたということである。そうなると「ガン無視」はすべて見せかけだったことになる。

ペンス氏はエアフォース2での帰路、ワシントン・ポスト紙以外のメディアには「米朝間に夜明けは見えない」という否定的なコメントを出してさえいた。

ここからは筆者の推測であるが、ペンス氏は対外的に、北朝鮮の2人と仲睦まじいところは見せないと決めていた節がある。メディアが察知できないところで、秘密裏に会っていた可能性さえ否定できない。

米政府の基本的態度は、北朝鮮に対する警戒はこれからも解かないというものだ。

だが、新しい外交の扉を開けることも重要ということである。それが対外的に誤解されるようなシグナルになってしまった。

トランプ政権が誕生して1年。特徴的な兆候はペンス氏の言動でも分かるように、「矛盾のシグナル」の繰り返しだったかもしれない。政府内での意見が統一なされていないということでもある。

安全保障政策で、国務長官とホワイトハウスが違う考え方をすることは過去の政権でもあったが、トランプ政権では大統領も含めて矛盾をきたしている。

今回のペンス氏の言動不一致が仮に意図的で、外交的な成果を見越してのものであれば高度な手法だが、そうでない確率の方が高い。それは政権内で北朝鮮政策が共有できていない点をみても明らかである。

二転三転する国務長官の発言

レックス・ティラーソン国務長官の発言を例に挙げたい。昨年12月12日、同長官は北朝鮮に対して柔軟な考えを示していた。

「北朝鮮が一定期間、核実験もミサイル発射も行わなければ無条件で話し合いをする準備がある」

しかし後日、ティラーソン長官はこの発言を修正する。ホワイトハウスからダメ出しを食らったからだ。

トランプ政権としてはニッキー・ヘイリー国連大使の「北朝鮮がすべての核兵器を放棄する何らかの措置を取らない限り、いかなる対話も応じない」という考え方が「正論」のはずである。

だがトランプ政権が韓国政府に語ったことが本当であれば、ティラーソン長官の2か月前の発言を実践するような動きに出たということだ。

ただ事態は複雑である。というのも12日、また首を傾げたくなるようなコメントがティラーソン長官から飛び出したからだ。

「米国が意味のある対話をするのは北朝鮮次第だ」と述べ、無条件での話し合いには否定的な考えを示したのだ。

ここまで蛇行運転が続くと、政権内に確固とした北朝鮮政策がないことを証明したようなものである。トランプ氏自身、言い分が変わる人物なので、政策に一貫性がないことは想像できるが、関係国は困惑してしまう。

こうした動きとは別に、米朝間には着実な動きもある。

昨年12月、ジェフリー・フェルトマン国連事務次長が北朝鮮を訪れたとき、北朝鮮の外務大臣を含めた政府高官と15時間もの会談を行っている。

米朝間のホットライン開設を

フェルトマン氏はバラク・オバマ政権時代、国務省次官補だった人物だ。北朝鮮が強調したのは、米朝間が交戦を避けるために「抑止システム」を確立させたいとの考えだった。

米朝両国は偶発的な出来事によって戦争に発展してしまう可能性が捨て切れない。両国が信用という絆で外交関係を築けていないため、北朝鮮は有事を回避するためのシステムが切望していたというのだ。

米国は北朝鮮に対して強硬な態度を維持する一方で、対話という宥和策も進めていたことが平昌五輪を契機に浮上してきた。

最後に、筆者は米朝のホットライン(直通回線)開設が有事回避には有用だと考える。ホットラインは盗聴を防ぐために暗号化された通信で、専用回線が使われる。

2008年には米中間にホットラインが開設されたし、今年1月には北朝鮮と韓国が以前の回線を再開させている。

米朝の対話が近い将来実現されたのなら、独自のホットラインを結んで危機回避を積極的に備えることは悪いアイデアではないはずだ。

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