結婚願望のない男の心が、思わず揺らいだ・・・。チャラ男を激変させた“いい妻”の特徴とは

結婚願望のない男の心が、思わず揺らいだ・・・。チャラ男を激変させた“いい妻”の特徴とは

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  • 更新日:2019/10/27

“結婚なんて人生の墓場だからさ―”

男たちが語る言葉とは裏腹に、その顔には満足気な表情が浮かんでいる。

そう、彼らが伝えたいのは、“結婚を後悔している俺”ではなく“結婚というライフイベントを経験した俺”。

その真実に辿り着いた(真実だと思い込んだ)、一人のハイスペック理系男子・紺野優作28歳。

ハイスペック揃いの仲間内で“平均以上”を死守することを至上命題としてきた優作は、そのポジションを維持するため、今、次のステージへ立ち上がることを決意する―。

◆これまでのあらすじ

大手メーカーの研究施設で働いていた優作は異動で4年ぶりに東京へ。

仲間たちが知らぬ間に“結婚”を自分事として捉え始めていることにはたと気づかされ内心驚く中、とどめを刺すかの如く、チャラ男認定していた大毅の結婚を知るのだった。

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「いらっしゃい。優作くん。忙しいところありがとう」

つい先日第3子が生まれた浜松町の姉宅を訪れると、義兄が僕を迎えてくれた。

風貌は大毅のように一見チャラそうに見えるのだが、代理店勤務のこの義兄に僕は意外と好感を抱いている。きっかけは初対面の夜だろう。

「どこの大学に通っているんですか?」
「東京の大学です」

理由がなければ、僕は必ず“の”を挟む。“東京大学”と答えると、皆興味津々に専攻はなんだとか、色々と突っ込みを入れるくせして、説明の終盤には僕の話が冗長だと言わんばかりに瞼をゆっくりと落とし始めるからだ。

しかし義兄との初対面の夜、東京大学に通っていることが結局バレてしまったが、彼はこう言っただけだった。

「学ぶことが好きっていいですよね」

義兄の簡潔な賞賛を僕は気に入った。

両腕におさまった3000グラムほどの赤子がもぞもぞと動く。これが結婚の果てらしい。姉の赤子を抱くのは3度目だが、“結婚”というワードが初めて頭によぎる。

久しぶりに学生時代の5人で会った夜から、“結婚”というワードは“キー”ワードに登り詰めつつあるのだ。

4人が、結婚を決めた大毅を想起したときに見せた表情は、学生時代、たとえば“数学の神”の称号を手にしていたようなクラスメートに向けられる眼差しとほぼ同じだった。

―”数学の神”を崇めていたはずの4人が、チャラ男・大毅に改宗か…。

まさか、僕が栃木にいた4年間に、皆の人生観が変わったとでもいうのだろうか?

結婚までの距離―。第3者から下される評価はEランク!?

「ゆーにー」

舌足らずの話し方で、3歳の次男が僕の名を呼んだ。ゆーにーとは優作兄の意である。

兄になりたくて“妹ちょうだい”が口癖だった次男・樹。僕は彼に感想を問うてみた。

「ゆーにー無理だったから、ママがんばった。妹、うれしい」

「俺の子どもは樹の妹にはなれないよ。関係としては、いとこと言って…」

「ばあばも言ってた。ゆーにーじゃダメだって」

そりゃあそうだ。いとこなんだから。しかしどこか引っかかる。その正体はおそらく“can't”というニュアンス。

「優作くん、まだ28歳だっけ?僕らは結婚が早かったけど、子どもなんてまだまだ先の話だよね。結婚してない30代も割といるし」

「優作はどんな子連れてくるのかしら」

姉はほとんど起こりえない未来の話をするかの如く空想を膨らませる。樹の一言をきっかけとして、彼らが僕の人生計画に勝手に足を踏み入れ始めた。

「ねえ、あれ面白いよね、最近ドラマでやってる50代独身男性が主人公のやつ。ちょっと優作に似てない?」

「うーん。そうかな?」

そのドラマなら僕も知っている。タイトルは結婚という“キーワード”とcan'tの組み合わせ。

軽く戦慄が走る。

僕が目指す平均以上とは、あくまでハイスペック揃いの仲間内において。世間では皆、迷うことなく“デキる奴”にカテゴライズされるはずなのに、仮に結婚をしない道を辿るとすると…?

―まさか、一生“can't”が付いてくるのだろうか?

22時。自主残業を終えてマンションのある根津まで電車に揺られていると、外銀に勤めている圭介からLINEが入った。

―明日、何してる?大毅の新居に遊びに行くんだけど、優作が東京に戻ってきたことを伝えたら久々会いたいってさ。来る?

いつもなら断るところだが、そのとき、僕の中でふと問いが浮かんだ。

あのプレイボーイ・大毅がいかにして既婚者となりえたのか?
いや、身を固めるという行為へ走ったのか?

疑問を放っておけないのは研究者故、だろうか。とにかく、その解を見つけねばならない。

電車が一時停止して、つり革を掴んでいた僕の右肩に女性がぶつかった。小さく会釈し合い僕たちはまた静かに窓ガラスを見つめる。彼女の視線がやや左に傾いているような気がして、僕は視線の先を辿った。

“成婚率85%”

広告の文字がでかでかと飛び込む。そして、僕は広告を見つめる丸の内のOLの表情を確かめたいような確かめてはいけないような不思議な葛藤に出会うのだ。

一足先に、彼女が電車を降りた。左手に高級スーパーのレジ袋を提げている。後ろ姿に、哀愁を感じてしまったと言ったら世の女性の反感を買うだろうか。

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足元には高いヒールの黒いパンプス。真っ赤なソールは記憶に刻み込ませるには有効だ。

―あれ、なんだっけな…。

大学時代、彼女が教えてくれた靴のブランド。待ち合わせ場所の表参道にチェックシャツで現れた僕にかすかなため息を吐いた彼女は、街行くあの赤いソールの女を指さして呟いた。

「あれを履く女は強敵って感じがする」

真意は不明だが今でも印象に残る言葉だ。

大毅の新居を訪れた優作。既婚者となった大毅の変貌に優作は何を思う?

週末、六本木一丁目駅の出口まで圭介とともに僕を迎えにきた大毅は、学生時代のチャラチャラした雰囲気をすっかり捨て去っていた。

―これだから文系の人間は…。

僕はそっとぼやく。理系男子は学生時代の研究がずっとベースにあり切り離せないが、文系の人間は社会人になると学生時代とは異なる、別世界へ羽ばたく機会を得るのだ。

大毅はその機会を余すところなく活かし、天性のチャラ男から嫁と並びカメラに向かって微笑む男にシフトチェンジしたらしい。

―とんでもない鞍替えだ…!

文系男子のすべてを否定するつもりは毛頭ないが、大毅の変貌には唸らずにいられない。

「結婚することにしたんだ、俺。あんなチャランポランだったけどさ」

「…おめでとう」

世話される側からは卒業しましたと言うような口ぶり。急な大人感を出され、僕はなぜかもやっとする。

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僕は大毅の高級マンションを、見慣れた景色だというような顔をしつつ、目の端でその全貌をしっかりと捉えるよう努めた。

「初めまして、妻の雅子です」

見上げると昭和の名女優・夏目雅子を彷彿させるハッキリとした顔立ちの美人が僕らを待っていた。(ちなみに僕の優作という名前は母が大ファンだったというこれまた昭和の名俳優・松田優作からとったらしい)

「すげぇ広いなー何平米あるんだよ」
「綺麗な奥さんだなぁ、大毅、なんだかんだやるときはやるよな」

僕も誉め言葉の一つ二つは言う気があったのだが圭介が代弁するので結局言う機会を逃した。

大毅の妻が入れた『マリアージュ フレール』の紅茶を口につけながら圭介主導のもと明らかにされる2人の馴れ初め。

要約すれば、2人は同期で、大毅が雅子に猛アタック。品のある彼女だが、体力勝負の世界で生き抜けるパワフルさを隠し持っているところにグッときたとかなんとか。

「チャラ男だと決めつけてたみんなの評価を華麗に覆したよな」

圭介の感想に大毅は謙遜もしなかった。

帰り際、送っていくと言った雅子がシューズボックスを開いたとき、あの赤いソールが僕の目に飛び込んできた。

そして僕はハッと思い出す。そうだ、あの名は…。

ルブタン!

この数時間、言葉少なに居続けた僕が、突如としてその名を口にしたことに驚いたのか、雅子が一瞬不思議そうな顔を見せた。

「それ、俺がプレゼントしたんだよ。雅子、ブランド物には興味ないのに、靴だけは別なんだ」

何ということだろう…。大毅は“強敵”と評価される女を倒したのだ。“やるときはやる男”と評価されるのは、それ故もあるかもしれない。どこをとっても“can't”にカテゴライズされない大毅をどこか眩しく感じてしまう。

「俺、昔、ほしいってせがまれたことあるけどな」

圭介がそう言って笑うと、雅子が困ったような顔で微笑んでいた。

3人に見送られ電車に乗ると、僕はまたあの広告と出会う。

東京に戻ってきてから、人々の結婚欲求を僕なりに分析した結果は以下だ。

“結婚する・しない”本人たちがいくらそう決断を下しても、周りからのカテゴライズは“結婚できる・できない”。できない、という枠は実に不快だ。皆そこから逃れたい。

―さっさとこの広告のターゲットから抜けてやらなくては…。

そして既婚者という人種になって結婚というワードを遠くから眺めるのだ。

ゴールは定まった。僕の成功法則に則るのならば…次にすべきことはそう、己の実力を把握することだろう。

▶Next:10月28日月曜更新予定
婚活市場に出ることを決めた優作。その主戦場でひしめく女たちとは。

▶明日10月22日(火)は、人気連載『夫の反乱』

夫から溺愛され、好き放題にやってきた美人妻・めぐみ。最近夫の様子がおかしいことに気づき…。夫を大切にすることを忘れた妻の行く末は?続きは、明日の連載をお楽しみに!

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