使われなくなったkintoneを復活させるたった1つの冴えたやり方

使われなくなったkintoneを復活させるたった1つの冴えたやり方

  • ASCII.jp
  • 更新日:2019/09/18

どこの組織でも抱えていると思われる、人事異動や退職による課題。ITツールの導入と運用に携わっていた人がいなくなってしまい、一気に崩れるルール、好き勝手に使い始める人、使わなくなる人。そんな惨状はどの組織でも起こり得る。アソビュー株式会社も同じように担当者の不在により、一度は社内に普及したkintoneの評価がだだ下がり。その状況を救った小林 信也さんが伝える「たった1つの冴えたやり方」とは。

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kintone復活と業務改善に真っ向から取り組んだ“プロ雑用”

アソビューは「ワクワクをすべてのひとに」をミッションとし、400ジャンル以上、2万プランの電子チケットをオンラインで購入できる。こんなアトラクションがあるのか、こんなプランがあるのかと、友人や家族とともにサイトを見るだけでも楽しいサービスだ。同社では、2016年からkintoneを利用していた。当時在籍していた従業員が「前職で使っていて便利だったから」と持ち込んだものだ。

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アソビュー 小林 信也氏

「ベンチャー企業では業務フローが頻繁に変わりますが、kintoneなら社内で簡単に修正、変更できるので便利に使っていました。最初はサポートセンターの履歴管理からはじまり、顧客管理や営業活動管理にまで、徐々に広がって行きました」(小林氏)

ところが、事件が起きる。kintoneの全体管理をしていた担当者の不在だ。全体を統制する人がいなくなったことで、各部署などでkintoneを使える人が好き勝手に使い始めてしまった。類似アプリが乱立し、技術のある人は自由にカスタマイズもし始める。次第に誰が何をやっているのかわからなくなり、使いにくくなってしまったkintoneは社内での評価を落としていったという。

kintoneが使いにくくなるということは、業務効率の悪化にも直結する。スピードが重視されるベンチャー企業で歓迎される事態ではなく、できるだけ早い解決が求められた。その人材として白羽の矢が立ったのが、小林氏だった。

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あんまり触れられなくなったkintoneを使いやすく

「私は“プロ雑用”という立場で仕事をしていて、社内の清掃から業務改善まで、そのとき必要なことをやってきました。ちょうど別の案件が終わったタイミングで、取締役からkintoneをなんとかしたいと相談され、『わかりました。なんとかします』と答えました」(小林氏)

何事においてもプロというのはカッコイイ。“プロ雑用”は響きからしてカッコイイ。しかもIT知識もあり業務改善までできるなんて、実態までカッコイイ。いろいろな会社に取り入れてもらいたい役職だ。

業務プロセスをすべて洗い出し明文化、対比するようにアプリを設計

小林氏がまず取り組んだのは、業務プロセスの洗い出し。すべて明文化して整理し、それらを元にしてkintoneアプリを設計していった。すべての業務においてkintoneがベストプラクティスということはあり得ないが、この時点では使うかどうかわからないものもすべてアプリに落とし込んだという。

「この段階ではカスタマイズはなし。標準機能だけを使って200近いアプリを設計しました。その後、もちろん一度に投入する訳にはいかないので、実運用に投入しやすそうなところから手を付けていきました」(小林氏)

アプリは運用開始がゴールではない。業務改善を目指すならなおさらで、実戦投入によってやっとスタートラインに立てると言ってもいい。小林氏はそれをよくわかっており、運用しながらアプリの使われ方を観察し、業務の実態に合わせてアップデートを繰り返すというPDCAサイクルを回した。

「その結果、たとえばサポートチームに新しいアプリを入れたところ、1.5ヵ月で生産性を2.9倍に向上できました。具体的には、サポート電話を受けてデータを入力、更新したりする後処理までの時間を含めて、1件あたり30分近くかかっていたのが10分以内に終わるようになりました」(小林氏)

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kintone見直しの効果

他の業務でも案件の引き継ぎ漏れがなくなったり、契約店舗の情報を一元管理できるようになったりと、再び社内でkintoneが成果を上げ始めた。

「しかし今日は、そんな話をしに来たのではありません。kintoneを再び活用してもらうために大切にしたたったひとつのことをお伝えしたくてここに来ました。それは、『目的にこだわる』ということ。これを徹底して大切にすれば、アプリ制作から業務改善まで必ずうまくいきます」(小林氏)

必ずうまくいくという言い切りが、勇気をくれる。やはり小林氏は“プロ”だ。

kintoneを復活させたたったひとつの視点と、3つの重要なポイント

目的にこだわる−−そんなの当たり前じゃないかと思う読者もいるかもしれない。確かに視点としては突飛なものではない。しかし、それを本当に徹底して行動に移せているだろうか。小林氏は「目的にこだわる」ために必要な行動にまでブレイクダウンして考え、実行していった。

「私が目的にこだわってkintoneを再生するために、実行したことは3つあります。1つは、アイコンとアプリ名を本気で考えること。2つめは、よく観察すること。3つめは、シンプルに作ることです」(小林氏)

アイコンとアプリ名は、そのアプリでどのようなことができるかを一瞬で理解してもらうための重要なパーツだと小林氏は言う。なんとなくでアイコンを選ぶのではなく、Webで公開されているフリー素材などをフル活用してわかりやすいアイコンづくりを心がけた。アイコンとアプリ名が一致するように工夫し、なおかつ類似のものと間違わないようわかりやすいアプリ名を選んだ。

「機能名を自由に設定できるサービスは珍しくありませんが、アイコンまで自由にできるサービスはkintoneしか知りません。これを活用しないのはもったいないと思います」(小林氏)

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アプリ名やアイコンまで変えられるのはkintoneくらいしかない

kintoneを使ってもらう工夫は、こんなところにもあったのだと、これには筆者も反省。はじめから用意されているアイコンから適当に選んでいた。それでは伝わらないのだ。

2つめは、よく観察すること。ここでも小林氏は「観察」という単語をさらに分解して具体的行動に落とし込んでいる。観察とは見るだけではなく、現場の話に耳を傾け、集めたファクトを元に想像することだという。実際に小林氏は現場でアプリを使っている様子を見て、どのくらいの時間がかかっているか、使いにくそうな操作はないか探した。さらにヒアリングも行ない、改善要望を収集。定量データと定性データを集め、これらを元に改善された業務の姿を想像し、アプリを改善していったのだ。

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観察とはなにか?掘り下げてみる

3つめは、シンプルにつくるということだが、これも「うちだってできるだけシンプルにしているよ」と思ってしまう読者が多いのではないだろうか。ところが小林氏の徹底ぶりはここでも発揮されている。まず、「シンプルとは、必要な要素をこれ以上削れない、というところまで絞りきること」と定義。アプリごとに「どのような人にどのように使ってもらい、どんな結果が欲しいのか」を突き詰めていった。このフィールドは本当に必要か? このデータは本当に収集すべきものか? ひとつずつ精査していった。

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どう行動してほしいのか? どんな結果を得たいのか?

「単に数を少なくすればいいということでもありません。必要なものを必要なだけ置いてあげることが、本当にシンプルということだと考えています。項目数自体は問題ではないのです」(小林氏)

項目数が多くてもきちんと入力してもらえる実例として、小林氏はカスタマーサービスアプリを紹介した。カスタマーサービスでは電話を受け、履歴を確認し、新たな情報があれば入力してレコードを更新する。そのときの行動パターンに小林氏は注目。電話をしながら閲覧、入力する項目と、電話が終わったあとに入力する項目に大きく分けられることに気づいた。そこで、電話をしながら入力する項目をできるだけ画面の上部に集め、フィールドも数値やドロップダウンを多用した。電話が終わってから入力する項目は画面下方に集められ、フリーワード入力はこのエリアにしか置かれていない。行動パターンに合わせてアプリを作り込むことで、データをきちんと入力してもらえるようになった。意味のあるデータが集まるようになったので、データ活用も進んだという。

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顧客対応アプリの実例

「kintoneは細かい調整ができないと言われることが多いのですが、そのおかげでシンプルで使いやすいアプリになります。また制限があるからこそアプリ制作の段階でロジカルに考えざるを得ないというのも、kintoneのいいところだと思います」(小林氏)

最後にポイントを振り返った小林氏は、何事にも目的があり、目的の先には実現したい理想があるはずだと語った。アプリが使われない、あのツールのせいで業務に時間がかかると言われるようなことがあれば、それはツールが悪いのではなく、目的がぶれているからだという。

そして、これだけ有用なことを語りきっておきながら、最後はこう締めくくられた。

「いろいろ言いましたが、今日の話はすべて忘れても構いません。アソビュー.comだけ覚えて帰ってください」(小林氏)

さすがは“プロ雑用”である。宣伝までそつなくこなしていった。

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アソビュー

kintone

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