フィリピン・マニラの治安改善の影で広がる貧富の格差

フィリピン・マニラの治安改善の影で広がる貧富の格差

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2018/02/14
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厳しい状況でもフィリピン人は常に笑顔を絶やさず陽気だ

フィリピンは治安の悪さが有名で、東南アジア最悪との負のレッテルを貼られ「リアル北斗の拳」など名を轟かせた。そんな劣悪な治安が長年にわたり海外からの投資の足かせとなっていたが、そのフィリピンの治安が目に見えて改善している。

そのきっかけになったのは、2016年6月30日にドゥテルテ大統領の就任だ。麻薬売人に対する超法規的な処刑の容認や、過激な発言や姿勢が物議を醸したが、ダバオ市長時代からの手腕には定評があり治安を劇的に改善させてフィリピン1安全な街に変えたことが国レベルでも結果を出したと言える。

ドゥテルテ大統領は治安改善こそが経済発展の根本という考え方を大統領就任前から度々主張していて大統領就任後、超強権的な手法で麻薬とマフィア殲滅作戦を実行に移した結果、実働半年ほどの2016年、犯罪率が前年比14%減、殺人など凶悪犯罪については30%減となった(フィリピン国家警察発表)。

しかし、その一方で、マフィアや麻薬使用者4万人以上逮捕、2千人以上射殺というあまりに人権無視かつ強権的な手法は国際社会から非難の的になった。

とはいえ、そうした国際的な非難にもかかわらず、国内での支持率は依然として高いのは、フィリピン人の治安改善を望む声の現れと言える。大統領支持率は、就任1年の昨年7月は80%、9月は親族のスキャンダル発覚で60%台に急落するも12月には回復して再び高い支持率を誇っているのだ。

◆銃声に怯えた16年前のマニラ

記者が初めてフィリピンを訪れたのは2002年。マニラに1泊してルソン島北部の街へ行くためだった。ガイドブック等でマニラは夜出歩くなと注意があったのでホテルで大人しくしていたら夜10時過ぎだろうか、「パン!パン!」という音を耳にした。生まれて初めて聞いた銃声だった。ドラマや映画のように銃声とは「バン!バン!」ではなく乾いた音なんだとブルブル震えながら寝たのを覚えている。

当時、マニラの「セブン-イレブン」は24時間営業していない店もあり、コンビニやスーパーマーケットの入り口には、体半分ほどのライフル銃を抱えたガードマンが常勤しており、夜間になるとライフル銃を携えたガードマンがドアボーイのようにドアを開けてくれた。これがマニラにとっての安全であり、ガードマンを配置することが顧客サービスなんだと現地在住の日本人に教わった。

また、10年前、2008年にも訪れている。その時は、マニラの北部のケソンシティで1か月ほど英語学習で滞在した。ケソンシティは学園都市なので比較的安全とされていたが、ある日、フィリピンは多少慣れていたのでフラッと夜間1人で外出し宿舎へ戻るとフィリピン人スタッフから「夜は危ないから外出しちゃだめだ」と厳しく叱られた。

その後も、数年に1回のペースでマニラがあるルソン島を訪れていたが、今回、3年ぶりに訪れたマニラは安全になったと実感できたのだ。

まず街の雰囲気が大きく変わった。24時間営業のコンビニやファストフード店が増え、夜間はガードマンがいない店、いても手にしているのはライフル銃ではなく小型拳銃に変わっていた。

もちろん、そうは言っても2016年の数字を日本と比べても殺人件数13倍、強盗件数9倍という状況だし、南部のミンダナオ島中西部などは、「外務省の海外安全ホームページ」で渡航中止勧告のレベル3。さらに治安のよさをウリに英語留学が盛んになったセブ島も在住者によると治安が悪化傾向にあるのだというので、改善の余地はある。

しかしそれでも、安全な場所が増えてきたことは渡航する日本人旅行者の人数にも反映されており、フィリピン観光省によると2016年初めて日本人渡航者が50万人を超え、2017年は60万人を超える見通しを示している。

◆治安改善の反面、生じ始めた「歪み」

しかし、治安改善の反面、生まれた歪みも感じる。まず増えたのが子どもの物乞いだ。子ども5、6人の集団で店を出た外国人などに小銭をよこせと要求してくる。体をぶつけてきたり非常にアクティブだ。子どもの物乞いは過去にも見たことはあるが、こんなに見かけたことはない。夜間になるとコンビニ店内にも入ってきて金銭をたかってくる有様だ。ガードマンが減った影響もあるだろうし、面倒なのか店員も注意することもない。

子どもの物乞いが増えたというのはこの子らの親が経済的に苦しいのか両親がいないなどの状況が考えられる。ドゥテルテ大統領によって掃討されたマフィアの末端で職を失ったのかもしれない。

ドゥテルテの強権で一掃された麻薬の売人だが、この先にはまだ課題がある。次はこの子どもたちが、再びマフィアや麻薬の売人などへ走らなくてもいいように安定した職を生み出さねばならないのだ。

数々の暴言や人権無視の姿勢、あるいは国連脱退をほのめかすなどお騒がせ的な存在だったドゥテルテだが、今のところフィリピン国内での支持率は維持している。今後、貧富の格差を是正し、不幸な子どもを減らせるような社会を作れるか? その結果、治安改善がさらに進めば海外投資も増え、いい経済成長のサイクルを描けるようになるか? ここからが正念場になってくるだろう。

<取材・文/我妻伊都 Twitter ID:@ito_wagatsuma

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