下町のド根性銭湯 ガス代は2.5倍、燃料費高騰に負けず“庶民のオアシス”を守り抜く

下町のド根性銭湯 ガス代は2.5倍、燃料費高騰に負けず“庶民のオアシス”を守り抜く

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  • 更新日:2022/09/23
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ガス代の高騰が苦しい中、新たな取り組みにチャレンジする銭湯も(写真は大塚記念湯/右から女将の安中妙子さん、若女将のキミヨさん)

銭湯がいま、経営の岐路に立たされている──。今年7月、東京都の銭湯入浴料金が2年連続で値上がりして500円に。子ども料金も22年ぶりの値上げとなった。9月には神奈川県も追随し、都と同じ価格へ。理由は世界的なエネルギー価格の高騰だ。国内の電気・ガス代の値上げが、銭湯経営を逼迫させつつある。コロナ禍に続き、ロシア・ウクライナ戦争から始まった世界的な負の連鎖が町の小さな銭湯に押し寄せている。

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東京都内の銭湯の数は、現在481軒。最盛期の昭和43(1968)年の2687軒から8割以上が廃業した。廃業が進む状況に今回の燃料高騰。そうした逆風に負けずに営業を続ける、都内の3軒の人気銭湯を追った。

台東区上野のすぐ隣、元浅草「日の出湯」。大正時代からその存在が記録される老舗で、湯は地下天然水を無濾過で沸かす正真正銘「東京産の温泉」だ。

「去年までのガス代は月平均20万円台。でも今年に入り、いきなり50万円に跳ね上がりました。夏に入っても下がりませんでした」

と嘆くのは、業界では若手の番頭・田村祐一さん(41)。10年前、廃業寸前だった日の出湯を親から引き継ぎ立て直しに挑み、毎年少しずつ黒字を出してきた。その利益も、ガス代の高騰であっという間に消えた。

「コロナ禍は常連さんのおかげでこらえられました。でもガス代の値上げ以降はずっと赤字で……」(同氏)

状況を打開するため、今夏は例年より1か月早く水風呂を張りガス代を節約した。今年の猛暑もあって好評を得たが、それも期間が限られている。

「正直、この土地を売ったほうが儲かるのではとも思います(笑)。でもそうはしたくはありません。いかに地元の人のために銭湯を残して、利用し続けてもらうか試行錯誤中です」

厳しい状況の中、日の出湯は熱い意志で今日も客を迎える。

「来てくれることがただ嬉しい」

昭和24(1949)年創業の「豊川浴泉」は、「旅館のようなおもてなし」をモットーとし、建築当時からの格天井や、浴場の高い天窓が特徴だ。

燃料高の厳しい中でも、湯浴み用の手桶やイスを木目調のものに揃えるなど、快適な空間作りを一番に考えている。木造建築ゆえ維持や改修にも費用がかさむが、3代目番頭の岡嶋幸夫さんはこう言う。

「内風呂が一般的な今でも、うちに来てくれることがただ嬉しい。だから続けているのです」

営業後の清掃は、岡嶋さん自らがこなし、快適な空間を丁寧に整えている。

「近所の社交場としてあり続けたい」

大塚記念湯(豊島区)の女将の安中妙子さんと若女将のキミヨさんは、長年大塚の町を見守り続けてきた。記念湯は1階が銭湯、2階がサウナ(別料金)となっており、営業開始の1時間前には常連客が集まり、地域の社交場になっている。

「7月の料金の値上げ後、『お風呂通いを週6から5に減らす』という方もいらっしゃいました」

女将・安中妙子さんはそう話す。記念湯は昭和元(1926)年創業で地域の信頼が厚い。ガス代の高騰は苦しいが、「近所の社交場としてあり続けたい」と年賀タオルや子ども用おもちゃの配布など従来のサービスをなくす気はない。

若女将のキミヨさんは、風呂場をアイドルのライブ会場にするなど新たな客層を広げている。「入浴だけでなく、遊園地みたいに楽しんでもらいたいですね」と親子で町の暮らしに寄り添い続けている。

取材・文/関山りえ 撮影/石井勇気、内海裕之

※週刊ポスト2022年9月30日号

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