“男性も妊娠してみればいいのに”を作品に「ヒヤマケンタロウの妊娠」漫画家・坂井恵理インタビュー

“男性も妊娠してみればいいのに”を作品に「ヒヤマケンタロウの妊娠」漫画家・坂井恵理インタビュー

  • テレ東プラス
  • 更新日:2023/01/25

テレビ東京で放送中! テレビ東京×Netflixが共に企画・製作した、木ドラ24「ヒヤマケンタロウの妊娠」(毎週木曜深夜0時30分放送)。男性も皆妊娠する可能性がある世界で、斎藤工演じる予期せぬ妊娠に戸惑う男性・桧山健太郎と、上野樹里演じる彼のパートナー・瀬戸亜季をはじめとした周囲の人々をコミカルに描く。原作となった同名漫画の作者・坂井恵理さんに、男性も皆妊娠する物語を描こうと思ったきっかけや、作品に込めた思いを語ってもらった。

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妊娠や母親側の立場を漫画で疑似体験

――坂井さんが原作を発表したのが2012年、それから約10年後の今、ドラマ化されることについて、どのように思われましたか?

「お話をいただいたのは3年ぐらい前ですが、今注目していただけるのはありがたいですね。ドラマ化が決まって、いろんな方に『時代が追いつきましたね』と言われました。ただ、2013年にコミックスが出た時も初版は売り切れたし、雑誌にも取り上げていただいたので、共感してくださった読者は当時もいたと思います。それから10年近く経って、女性の声が可視化されるようになってきたのかなという気はしますね」

――10年経って、世の中の変化を感じますか?

「妊婦や母親をめぐる言説は良くなってきたとは感じます。女性には母性が備わっているから子供を育てるのが自然だという"母性神話"は、以前より強固でなくなっていますし、3歳まではお母さんがそばにいるべきだという"3歳児神話"に対しても、声を上げることができるようになりましたよね。女性の声がきちんと届くようになってきて、それを受け入れられる土壌が出てきたのかな」

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――男性が妊娠する物語を描こうと思ったきっかけは何だったのですか?

「女性は、男性やパートナーに対して"妊娠して気持ちを知って欲しい"と一度は考えたことがあるだろうというところから、女性読者の共感が得られるアイデアだと思いました。当時は、掲載誌の編集部から『女性はSF的な設定を好まない傾向があるので』と言われ、単行本一冊分しかページがもらえませんでした。"女性はSFが苦手"という固定概念も、10年経った今はあまり言われなくなってきましたね」

――ご自身が常々考えていたことを作品にしたのですね?

「そうです。妊婦や母親に対して冷たい社会だなとは常々感じていたので、妊娠や母親側の立場を漫画で疑似体験してもらうことで、少しでも変わるきっかけになればいいなと思いました」

実写で、より強く疑似体験できるものに

――今回の映像化にあたってリクエストしたことはありますか?

「ジェンダーバイアスを強化するような表現に関しては、意見させていただきました。例えば、"男の子の赤ちゃんだから水色の服を着せる"ということを、登場人物が言うのは構わないのですが、そのような価値観をドラマの中で肯定しないでほしいということをお伝えしました」

――ドラマを観た感想をお聞かせください。

「原作より良くなっている部分があって、とても面白かったです。亜季のバックグラウンドや、桧山が働いている会社での男社会の在り様は漫画の方でフォローできてないところだったので、正直『やられた!』と思いました。

原作の桧山は、つわりが軽いという設定になっています。単行本1冊で物語を収めなくてはならなかったので、その中で伝えたいことを詰めようとすると、つわりの話まで桧山には背負わせられず、別のキャラクターに担わせました。ドラマでは桧山がつわりに苦しむ描写があって、それもいいなと思いました」

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――桧山に斎藤工さん、亜季に上野樹里さんというキャスティングを聞いた時、どう思われましたか?

「純粋に、うれしかったです。演技力も確かな方々で、斎藤さんだったらエリートでモテる男という役にも説得力がありますし、上野さんは原作の亜季のイメージに近いと思いました」

――お2人が演じる桧山と亜季をご覧になって、いかがでしたか?

「斎藤さんは体も大きくて"いわゆる"男性的な肉体を持った方なので、映像で見ると男性が妊娠するというインパクトが強くなっていると感じました。亜季は仕事が第一で結婚も子供も考えていないという、共感しづらい方もいるキャラクターですが、そこを上野さんがキュートに演じてくださいました」

――中でも特に印象に残ったシーンは?

「序盤で桧山が勤める広告代理店が男社会で動いている様子はリアルでした。広告のプレゼンのシーンでは、"あんな感じで炎上する広告になってしまうんだろうな"と実感できたり(笑)。監督の箱田優子さんが広告業界にいた方なので、おそらく実体験から描かれたのかな、と。

男性が赤ちゃんをかわいがっている姿がとてもいい雰囲気で描かれていて、そこは実写の力を感じました。男性が自然に育児をしている、それを実際に見ることで視聴者の方が感じるものもあるでしょうし、男性が育児に参加するハードルも下がると思いました」

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――漫画と実写では、描き方、伝え方に違いを感じられましたか?

「漫画という媒体は、どうしてもデフォルメして省略して描かざるを得ないところがあるので、実写だと映像の説得力が全然違いますね。ドラマは男性が予期せぬ妊娠をしたら起こり得ることや戸惑いが、より強く疑似体験できるものになっていると思います」

――2019年には続編となる「ヒヤマケンタロウの妊娠 育児編」も発表されています。妊娠から出産を経て、育児に取り組む桧山を通じて描きたかったのはどんなことでしょう?

「最初の『ヒヤマケンタロウ~』の企画が立ち上がった時点では、私は妊娠したことがありませんでした。子供がいる友人に取材をしても実感として妊娠という状態がつかめなくて、物語をどう作っていくか、なかなか進まなかったんです。そうこうしている間に私に子供ができて、実体験を得てからは物語作りに苦労しなくなりました。ただ、執筆期間は妊娠中だったので、今思い返すと育児描写が弱かったですね。

『育児編』は自分も育児を経験した後に描いたので、育児の大変さとともに、子供のかわいさもちゃんと描こうと思いました。SNSなどで育児に対するネガティブな情報を見ると、やっぱり子供を生むのはやめておこうと思ってしまう人もいると思うんです。そうならないように、子供のかわいさを意識的に描きました」

――最初の『ヒヤマケンタロウ~』を描く時、ご自身が妊娠したのは偶然なのですか?

「そうです。子供が欲しいと思っていたわけでもなくて。おかげでたくさんネタにさせてもらって、そういった意味でもいい体験をしたなと思っています」

明日公開のインタビュー【後編】では、坂井さんが考える"男性妊娠"による社会的影響や、坂井さんご自身の漫画の原点を探る。

(取材・文/伊沢晶子)
※2022年4月22日に公開した記事の再掲です。

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木ドラ24「ヒヤマケンタロウの妊娠」(毎週木曜深夜0時30分)第4話は?

第4話
妊夫として一躍時の人となった桧山健太郎(斎藤工)は妊夫として持てはやされる一方で、誰にも理解されない不自由さも感じていた。そんな不自由さを解消するために、健太郎は同じ妊夫の宮地(宇野祥平)と妊夫同志が交流できるオンラインサロンを立ち上げることに。サロンのオフ会を開くと、予想以上に多くの妊夫が集まり順調に思えたが、ある日宮地の妻・のりこ(山田真歩)から連絡が。

原作:坂井恵理『ヒヤマケンタロウの妊娠』(講談社「BE LOVE KC」所載)
監督:箱田優子 菊地健雄
脚本:山田能龍 岨手由貴子 天野千尋
出演:斎藤 工 上野樹里
筒井真理子 岩松 了 高橋和也 宇野祥平 山田真歩/リリー・フランキー
細川 岳 前原 滉 森 優作 山本亜依 伊勢志摩 篠原ゆき子 橋本 淳 小野ゆり子 木竜麻生
斉木しげる 根岸季衣
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflixコンテンツ・アクイジション部門マネージャー)
プロデューサー:間宮由玲子(テレビ東京)太田勇(テレビ東京)平林勉(AOI Pro.)
製作:Netflix
企画・制作:テレビ東京
制作協力:AOI Pro.
Netflix作品ページ

テレビ東京

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