6歳の娘が「クレヨンしんちゃん」にハマり困る...44歳母親に鴻上尚史が教えた「子どもは親の嫌がることをする」という事実

6歳の娘が「クレヨンしんちゃん」にハマり困る...44歳母親に鴻上尚史が教えた「子どもは親の嫌がることをする」という事実

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  • 更新日:2021/05/04
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鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)

「クレヨンしんちゃん」にハマる娘に困り果てた44歳母。「ケツだけ星人」は何故ダメなのかをどうしたら教えられるかと問う相談者に、鴻上尚史が分析した、子どもがこれを大好きな本当の理由とは。

【相談104】6歳の娘が、「クレヨンしんちゃん」にハマり、とても困っています(44歳 女性 ゆかりん)

6歳の娘が、「クレヨンしんちゃん」にハマり、とても困っています。

というのも、ご存知の通り、しんちゃんは「ケツだけ星人」とか、その他言動・行動に色々と問題のある子供です。

まして娘は女の子ですから、春からあがる小学校で「ケツだけ星人」をやられると、娘も恥をかきますし、それが原因で変な子という烙印を押されると、娘が学校でやっていくのに色々と困ることが起きるでしょう。

そして娘は、YouTubeで子供向けのチャンネルだけでなく、今流行りの「うっせぇわ」も見たりして、結果大好きです。

ネットには少なからず、「毒」を孕んだものもあります。そのぐらいの毒は余裕で飲んで育ってくれるぐらいの賢さ、逞しさ、したたかさを持った子になってくれないと、親である私も困ります。

鴻上さんが随分前の相談で仰ってた通り、親の役目は、子供が健康に育つ手伝いをすることであって、お節介を焼くことではないということも頭じゃ理解していますが、仮にも女の子ですし、「ケツだけ星人」は困ると、毎日頭を悩ませています。

鴻上さん、幼い娘に、どうしたら「ケツだけ星人」はダメだと、そして何故ダメなのかを上手く教えられるでしょう?

かといってあまりあれこれ言いすぎると、娘自身の「自分で考えて判断する力」が身につかない気がします。

鴻上さんのアドバイスを切にお待ちしております。宜しくお願い致します。

【鴻上さんの答え】

毎月、50ぐらいの相談が寄せられます。そのすべてに目を通していますが、担当編集者が「これに答えるとよいのでは」と順番をつけてくれています。

編集者の嗅覚で「このことに悩んでいる読者は多いはずだ」とか「これは重要だと思うので、ぜひ聞きたい」というものが、当然、上位にきます。

で、今月は、これが一番にきました。

読んで、「これが一番!?」と僕は驚きました。

ゆかりんさん。僕にはゆかりんさんの悩みは、ものすごくほがらかなものに思えてしょうがないのです。

どうして子供達が「ケツだけ星人」をするのか?

それは、大人が反応するからです。

子供達は、「ケツだけ星人」の真似をして、大人達がムッとしたり、顔をしかめたり、怒ったりするのが楽しくてしょうがないのです。

だって、自分のしたことにちゃんと反応してくれるのですから。

ですから、ゆかりんさんが「女の子だから、やめなさい!」と言えば言うほど、お子さんはますます「ケツだけ星人」になっていくでしょう。

小さな自分が大きな大人を振り回すことができるんですよ。こんなに楽しくて、結果的に甘えられることはないでしょう。

ゆかりんさんが「ケツだけ星人」や「うっせぇわ」に何の反応もしなければ、やがて娘さんはやらなくなります。もちろん、ゆかりんさんから見て「良い子」になるのではなく、ゆかりんさんが思わず怒ったり、顔をしかめたり、ムッとする、次の言い方を探すだけですが。

賭けてもいいです。もし、娘さんの周りの大人がみんな、「ケツだけ星人」を無視しても、娘さんが「ケツだけ星人」をやめなかったら、謝罪として、僕はゆかりんさんの前で「ケツだけ星人」をやりましょう。

「ケツだけ星人」についてどうやったら「何故ダメなのかを上手く教えられるでしょう?」と、ゆかりんさんは書かれていますが、僕には、なぜダメなのか分かりません。分かりませんから、子供を納得させる理由も浮かびません。

もし、ゆかりんさんが書いているように、「娘も恥をかきますし、それが原因で変な子という烙印を押される」ということが理由だと思われているのでしたら、自分の子供時代を思い出して下さい。

「ケツだけ星人」という、誰もが知っているギャグ(?)をするだけで、立ち直れないような「恥をかいて」「変な子」という取り返しのつかない烙印を押されると思いますか?

子供社会では、(たとえ女の子でも)誰もが知っている「ケツだけ星人」の真似をしたり、クレヨンしんちゃんの口真似をすることは、当り前すぎて逆に面白くないことです。

そんなつまらないギャグ(?)をぶちかまして、笑いのセンスが低い子供だと思われたくないという、大阪人気質の心配ならともかく、それで恥をかいたり、烙印を押されたりすることはないでしょう。

まれに、親の趣味でザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』のDVDにはまって、「ちょっとだけよお~」とぶちかます小学生がいます。この場合は、「何それ?」と、周りの冷たい反応で恥をかくこともあります。

でも、「ケツだけ星人」には、そんな心配はありません。

でもね、ゆかりんさん。もし、娘さんが「ちょっとだけよお~」と言ったとしても、僕は何も言わないことをお勧めします。

ゆかりんさんは、「親の役目は、子供が健康に育つ手伝いをすること」と僕が言っていたと書かれていますが、正確ではありません。

僕は「健康的に自立させること」が子育てだと考えています。「健康」より大切な「自立」が抜けています。

「自立」とは、自分で考えて、自分で行動できる人間になることです。

もし、娘さんが「ちょっとだけよお~」と小学校でやって誰も知らず、冷たい視線を受け、「変な子」と思われたら、「そうか、みんなの家にはドリフのDVDはないんだ。若いシムラもカトチャンも知らないんだ。よし、次は、みんなが知っている『クレヨンしんちゃん』にしよう」と、自分の失敗を考え、自分で次の行動を決める大切なレッスンにすることができるのです。

以前の相談で書いたように、「子供には失敗する権利」があります。そして、失敗から子供は学ぶのです。

親が先回り先回りして、失敗することを予防していくと、やがて子供は「親がなんでもしてくれる」と思うようになります。

そうやって育ててきた子供に、ある時、親は突然、「いいかげんしっかりしなさい」とか「自分で決めなさい」なんて言うのです。これがどんなにムチャか、分かるでしょう?

もちろん、なんでもかんでも放任にしろと言うのではありません。「経験する意味のある失敗」と、「とりかえしのつかない失敗」を、親は、ちゃんと区別して、見ないふりしてちゃんと見守る必要があります。

そして、子供が袋小路に入ってしまった時や、命にかかわる失敗をしそうな時には、親として口を出すのです。

ですが、「ケツだけ星人」は、命にかかわる失敗ではありません。

お子さんが小学校入学で、「いじめられたらどうしよう」とか「学校生活や勉強についていけるだろうか」と心配になる気持ちはようく分かりますが、「ケツだけ星人」は「命にかかわる問題」ではありません。

そんな課題に直面するまでは、まずはお母さんがリラックスしていて下さい。母親の緊張は、必ず、子供に伝わりますからね。

小学校は「ケツだけ星人」をしたら、幼稚園や保育園と違って、厳しく否定される場所だと子供に刷り込んでしまうことの方が重大な問題です。

このさい、ナーバスになったら、娘さんと一緒に「ケツだけ星人」をやるのはどうでしょうか?

まあ、娘さんはきっと嫌がるでしょう。母親をからかおうと思っているのに、母親が一緒に遊んでしまったら、きっとぎゃふんでしょう。

「ぎゃふん」。これも、小学校で使うと、冷たい反応になるでしょうね。

というわけで、ゆかりんさん、あわてない、あわてない。リラックス、リラックス。

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