大河原克行のNewsInsight 第179回 技術と未来創造で持続可能な「世界」に貢献するソニー

大河原克行のNewsInsight 第179回 技術と未来創造で持続可能な「世界」に貢献するソニー

  • マイナビニュース
  • 更新日:2022/09/23
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ソニーグループは、サステナビリティへの取り組みについて説明した。2022年に4年ぶりとなるマテリアリティ分析を実施し、「気候変動」、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」、「人権の尊重」、「サステナビリティに貢献する技術」の4点を、最重要なマテリアリティ項目としたことや、ソニーグループによるAI倫理の考え方について触れた。

この説明会は、報道関係者や機関投資家、アナリストを対象に実施しており、吉田憲一郎氏が社長に就任した2018年にスタート。今年で5回目となる。昨年までは、ESG説明会としていたが、今年からはサステナビリティ説明会へと名称を変更し、環境や社会、人材に関するソニーグループ全体の取り組みをについて説明した。

ソニーグループ 執行役専務の神戸司郎氏は、「ソニーには多様な事業があり、事業ごとにサステナビリティに関する課題も異なる。グループ全体で重要となる課題を明確にした上で、各事業がそれぞれの特性を生かし、関係するサステナビリティ課題に取り組んでいる」としたほか、「上級役員の報酬の一部にサステナビリティ評価指標を導入する一方、事業ごとにKPIを設定し、業績評価にも反映させている。取締役会においても、サステナビリティは重要なテーマと位置づけており、四半期に一度、課題や活動を報告し、定期的にレビューを受けている」と述べた。

説明会の冒頭に、ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長 CEOは、ビデオを通じてソニーグループの姿勢について説明。「約11万人の社員で構成されるソニーグループを、学び続ける会社にしていきたいと考えている。学びは、ソニーで働く社員の成長につながる。これはサステナビリティにも直結する。ソニーグループのパーパスを推進する場である『世界』を、持続可能にするためにも、社員とともに学びを大切にし、長期視点で、人、社会、地球へ貢献したい」などと述べた。
○CMOSイメージセンサーとAIを環境課題の解決に

吉田会長兼社長 CEOが説明のなかで触れたのが、CMOSイメージセンサーとAIである。

ソニーグループが、CMOSイメージセンサーに対して、過去4年間で1兆円の投資を行ってきたことに触れながら、「CMOSイメージセンサーは、現実世界を捉え、現実から学ぶデバイスである。地球を『感動コンテンツ』として捉え、それを人々に届ける新事業にも生かされている技術であり、STAR SPHERE(スタースフィア)プロジェクトの超小型人工衛星には、ソニーのカメラ機器を搭載。クリエイターやユーザーが地球や星を捉えることができる。宇宙空間からの視点を活用したクリエーションを通じて、地球について学び、環境に対する思いを育むきっかけを作りたい」と述べた。

また、「土壌中の水分量などのセンシング、超広域の通信ネットワーク、捉えたデータに基づいた予兆分析技術のR&D活動も推進しており、これらの技術を通じて、地球を見ることは、地球を守ることにつながる。ソニーグループでは、これらの技術を組み合わせた『地球みまもりプラットフォーム』の構築により、災害の未然防止や環境の課題解決に貢献することを目指す」と語った。

さらに、AIについては、「地球を見守るための予兆分析には、AIを用いている。AIもCMOSイメージセンサーと同様に、現実から学ぶ技術に位置づけている」とし、「CMOSイメージセンサーとAIを掛け合わせたのが、インテリジェントビジョンセンサー『IMX500』である。学ぶIoT技術ともいえる『IMX500』は、スマートシティの実現など、社会の生産性向上に貢献する。イメージセンサー内でデータ処理を行い、クラウドに流れ込むデータ量を抑えることで、データセンターなどの消費電力を削減する。今後も社会価値を創出するソリューションとして世の中に広めたい。また、センシングとAIは、先進運転支援システム(ADAS)などのモビリティの進化にも欠かせない。そして、モビリティの進化は健全な地球環境にもつながる」と語った。

ソニーグループでは、サステナビリティに関する課題を定期的にレビューし、アップデートするために、マテリアリティ分析を行っている。気候変動による自然災害の多発、新型コロナウイルス感染症の流行、人権リスクの拡大と社会の分断、新たな地政学リスクの発生など、前回実施の2018年から変化したソニーグループを取り巻く環境を捉えるとともに、AIやセンシングなど新たな技術動向を捉えた分析を行っている。
○成長のキーワードは「個」と「多様性」

今回のサステナビリティ説明会では、DE&Iを含む「人材」と、「気候変動」に関する取り組みについて、時間を割いて説明した。

人材については、異なる個性を持つ社員一人ひとりと、多様な個を受け入れるソニーとが、共に成長するメッセージを込めた「Special You, Diverse Sony」を、「人材」に対する理念とし、「個を求む」、「個を伸ばす」、「個を活かす」という枠組みで人事戦略を推進。中長期視点で人的資本に投資を行っていく考えを示した。

「個を求む」では、社外経験を持つ多様な人材を重要ポジションに登用していることや、北米では社内外パートナーシップを通じたメンタリングやインターンシップなどによる人材の早期育成や教育支援を実施していることを紹介。日本では、育児や介護、がん治療や不妊治療も対象にしたSymphony Plan(シンフォニー・プラン)の導入や、特例子会社が持つ障がい者雇用ノウハウをグループ内で共有し、製品やサービスの企画段階から障がい者が参画することでインクルーシブデザインを取り入れるといった取り組みを行っているという。WS Audiologyとの提携により、2022年9月に米国で発表した補聴器は、企画段階から聴覚障がいのある社員やユーザーにインタビューを行い、製品化したものだという。

なお、半導体事業においては、2022年10月1日から、出社を前提としないフルリモートワーク勤務制度を導入する予定でありこの制度を活用して全国から広く人材を確保する考えも示した。

「個を伸ばす」では、2000年からスタートしているリーダー育成のための「ソニーユニバーシティ」、技術の領域別に10のコミッティを通じて、事業の垣根を超えて、最先端技術の共有や、広く学ぶ機会を提供している「技術戦略コミッティ」の取り組みを紹介。「個を活かす」では、社員エンゲージメント指標が2021年実績で89%に達していることを示しながら、エンゲージメント調査の結果を分析し、学習や成長の機会との相関を定量的に把握し、人事施策に生かしていることを紹介した。

今後の取り組みとしては、産学連携による中長期視点での人材育成支援をあげ、東京大学の工学系研究科の教育プログラムや、東京工業大学との共同研究講座などにおける連携に加え、新たに東京大学のメタバース工学部や、奈良女子大学工学部への支援も実施。さらに、日本におけるイノベーション人材の育成支援の一環として、「神山まるごと高専」にスカラーシップパートナーとして参画する。また、メンターシッププログラムにより、豊富な経験値を次世代に継承し、人材育成につなげるほか、株式を用いた報酬による人的資本への投資の拡大、人材データの把握や管理を強化する取り組みも行っていくという。

ソニーグループ 執行役専務の安部和志氏は、「ソニーの成長のキーワードは、個と多様性である」とし、「企業の成長は、多様な『個』の成長の総和である。ソニーでは創業以来、社員一人ひとりの考えや個性を尊重し、個の挑戦を支援している。その結果、社員自らが学ぶカルチャーが定着し、自律的な成長を実現してきた。基本とするのは、人材を『管理』するのでなく、解き放たれた個性を発揮し、挑戦によって成長することを『支援』するアプローチである」と位置づけた。

説明のなかでは、創業者のひとりである井深大氏が「未来を推測するのはあまり意味がない。それよりも未来は、それをやろうという人が自分自身で創り出すことに意味がある。新しい世界を自分たちで創り出していく気構えが、創造性にとっては一番貴重なことだと思う」と語った言葉や、もうひとりの創業者である盛田昭雄氏が、「愉快な会社をつくる、技術を応用して世の中のために奉仕する。ソニーは素晴らしい人の輪を持っているし、素晴らしいグループも持っている。我々がつくったベースをうまく使って大飛躍して欲しいし、がんばって欲しい。人生は一度しかない。二度と来ない一番大事な時をソニーで過ごして、悔いがなかったと思えるようになって欲しいというが私の願いであり、一人ひとりのためでもある」という言葉を、肉声とともに紹介した。また、吉田会長兼社長 CEOは、「ソニーのパーパスのキーワードは『感動』であるが、感動するのは人であり、感動を創るのも人である。ソニーにおいて、人は価値創造を支える最も重要な基盤と考えている」と述べている。
○温室効果ガス排出量ネットゼロの達成を10年前倒し

気候変動を中心とした環境への取り組みについても触れた。

ソニーの環境への取り組みは、「責任」と「貢献」の二軸で構成しているという。

「責任」では、2010年に策定した長期環境計画であるRoad to Zeroにより、環境負荷ゼロを目指しており、気候変動、資源、化学物質、生物多様性の4つの視点で取り組みを行っているという。

2022年5月に行った経営方針説明会では、従来計画では2050年を目標にしていたGHG(温室効果ガス排出量)ネットゼロの達成を、2040年に前倒しし、また、2040年を目標にしていた再生可能エネルギー100%で稼働するRE100の達成を2030年へと、それぞれ10年前倒しすることを発表した。この計画は、耐久消費財や家庭用品、パーソナルケア製品セクターの大手企業では世界で初めてになる。また、この計画が、SBTiのネットゼロ目標の認定を、2022年8月24日に取得。「スコープ1、2、3のバリューチェーン全体の合計で、世界の気温上昇を1.5℃に抑え、排出経路に準拠したスピードで排出量を90%削減し、最終的に残る10%以内の排出量を、炭素除去によりゼロとすることが計画のポイントになっている」(ソニーグループ 執行役専務の神戸司郎氏)という。

また、ソニーグループでは、新たな取り組みとして、日本で初となるFIP(フィードインプレミアム)制度を活用したバーチャルPPA(電力購入契約)の実行に向けて発電事業者と契約を締結した。

ソニーグループでは、2025年度を目標とした再生可能エネルギー使用率を15%から35%以上に引き上げたほか、2021年度には、国内外の4つの事業所に太陽光発電設備を設置した。電力会社からの再生可能エネルギー由来電力の購入や、再エネ証書の利用など、全世界で各地域に応じて最適な対応を行う姿勢をみせている。また、2022年5月には、再生可能エネルギーの調達方針を改定して、発電設備導入時や運転時の環境配慮項目を追加した。

だが、ソニーグループでは、スコープ1および2をCO2排出量は全体の7%で、多くがバリューチェーンでの間接的排出であるスコープ3に含まれる。

「最も大きいのは、ソニーが販売した製品が、そのライフサイクルにおいて使用する電力に由来するものであり、全体の約62%を占める。また、原材料や部品の製造過程などで発生するものが約22%を占める。お客様やサプライヤーなどのサプライチェーンを巻き込んだ取り組みや社会全体での脱炭素化が不可欠になる」と語る。

サプライチェーンにおける環境負荷削減の一環として、原材料・部品サプライヤーや製造委託先に対して、「温室効果ガス排出量の把握と、排出削減に関する長期・中期目標の設定と進捗管理」を求めているほか、ソニーの環境に関する考え方を動画などで伝える活動を実施。2022年度からは、一部のサプライヤーに対して、省エネ活動の支援やSBT相当の目標設定の方法、SBTiによる認定の取得サポートを開始している。

もうひとつの「貢献」では、技術や事業を通じて、地球環境そのものの向上に寄与する活動に取り組んでいると説明。具体的な取り組みとして、バーチャルプロダクションを活用することで、現場に出向くロケーション撮影を、スタジオ内でのバーチャルセットで撮影。現地での発電機の使用や、撮影のためのスタッフの移動、セットの移動にかかるエネルギーが不要となり、ロケ撮影と比較して75%から80%のCO2排出量を削減できると試算している。
○多様性、人権、差別防止、透明性と信頼性のためのAI倫理

一方、ソニーグループのAI倫理についても説明した。

ソニーグループは、AIの開発および利用において、多様性および人権の尊重、差別の防止、透明性および信頼性の向上を担保するために、2018年に「ソニーグループAI倫理ガイドライン」を策定。2019年には、多様な専門性とバックグラウンド持つ役員レベルのマネジメントによって構成する「ソニーグループAI倫理委員会」を発足している。また、2021年には、ソニーの各組織にAI倫理に関する専門知識とサポートを提供するための組織として、AI倫理室を設置した。

さらに、2021年7月には、エレクトロニクス製品を対象とする品質マネジメントシステムにAI倫理アセスメントを必須の遵守事項として規定。2021年にはAI倫理に関する研究プロジェクトを開始し、AI関連の製品やサービスの開発において発生しうる課題の未然防止、解決に向けて、倫理的なデータの収集や、アルゴリズムにおけるバイアスの検知および軽減などに取り組んでいるという。

また、「Partnership on AI」や「Global Partnership on AI」といったAI倫理に関する関連団体にも早い段階から参加。世界各国におけるAI関連の政策イニシアチブに知見を提供したり、AI倫理に関する問題に取り組む企業や組織、学術機関との積極的な対話を進めたりしているという。

ソニーグループAI倫理ガイドラインでは、「豊かな生活とより良い社会の実現」、「ステークホルダーとの対話」、「安心して使える商品・サービスの提供」、「プライバシーの保護」、「公平性の尊重」、「透明性の追求」、「AIの発展と人材の育成」の7点をあげ、人権の尊重、差別の防止、透明性の追求および信頼性の向上を担保。また、ソニーが目指すAI倫理の方向性として、ソニーのグローバルな競争力の維持、強化に貢献するための「責任あるAIによる競争優位性の確立」、AIの利活用に伴う法律、ブランドイメージ、倫理上のリスクを事前に対処する「AIリスクの評価と低減」、ソニーのAI搭載製品およびサービスが国籍、ジェンダーなど、様々な属性をおいて、すべての顧客にとって適切なものとする「すべての人に配慮した製品づくり」、AI倫理の実践だけでなく、責任あるAIを実現するリーダーとなる「AI倫理におけるグローバルリーダー」の4点を目標に掲げている。

ソニーグループ AI倫理室 Global Head of AI Ethicsのアリス・シャン(Alice Xiang)氏は、「AI倫理アセスメントにおける重要なコンセプトが『AI Ethics By Design』である。倫理的な問題は、プログラムのコードの冒頭の1行を書き出す前の企画段階から検討し、設計、製造、出荷の各段階でも評価する必要がある。AI倫理室では、スマートカメラソリューションやビデオ制作ソリューション、様々なエレクトロニクス製品で、100件以上の事例を確認してきた。なかにはAI倫理の観点から開発を中止した事例もある」とし、利用シーンを想定した上で、顔認証に関わるもの、人権侵害につながるものを、とくに厳しく検討をしているという。

「AI倫理は法令を越えた部分であり、地域や文化、宗教などによっても倫理観が異なる。そうした観点でも多様な議論を進めている」(ソニーグループの神戸氏)とし、「ソニーグループは、AIの利活用を通じて、世界中に感動を提供するとともに、平和で持続可能な社会の構築に貢献することを目指している」と述べた。

大河原克行

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