「ママの仕事よりパパの仕事のほうが大事」。幼児期から始まる「性差別」を撲滅するには?

「ママの仕事よりパパの仕事のほうが大事」。幼児期から始まる「性差別」を撲滅するには?

  • mi-mollet(ミモレ)
  • 更新日:2023/01/25

性差別を生む“種”がそこかしこに転がっていている

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写真:Shutterstock

「誰もが生きやすい社会づくり」を目指す傾向が強くなってきた昨今。LGBTQという言葉が出てきたように、性的マイノリティを含むあらゆる性に対する差別がNGとされていますよね。しかし、このように差別撤廃を訴えるということは、実際には差別が残っていることの裏返しでもあります。

実は、性の差別意識は子どもの頃に形成されるパターンが多いのだとか。世の中には性差別を生む“種”がそこかしこに転がっていて、親がいくら意識しても子どもの目をそこから逸らすのは至難の技なのだそうです。

では、性差別意識を植え付けずに子どもを育てるにはどうすればいいか? そのヒントをくれるのが、アメリカの科学ジャーナリスト、メリンダ・ウェナー・モイヤーさんの著書『科学的に正しい子育ての新常識』です。

本書には科学的研究に基づいた最新の子育て法が紹介されていますが、モイヤーさん自身も一男一女の母であるだけに、とても親近感の持てるわかりやすい文章でつづられています。

そんな本書から、驚愕の「性差別」エピソードと合わせて、性差別を生まないための子育て法をピックアップしたいと思います!

「パパの仕事のほうが大事」7歳男児の発言に驚愕

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友人のローリーはエンジニア兼科学ライターで、夫もエンジニアです。数年前の夏、夫は外出中で、家にいるのはローリーと7歳の息子ルークの2人でした。ローリーが自分の部屋で仕事のメールを確認していると、ルークは母親が自分にかまわず仕事をしているのが気に食わないのか、何度もじゃまをしに来たそうです。

「まだやってるの? もういいでしょ!」ルークは(また)部屋に入ってきて言いました。
「パパがメールしてても文句を言わないのに」と、ローリー。
「パパは仕事だもん」
「ママだって仕事だよ」
「でも、パパの仕事のほうが大事でしょ」

子どもの性差別発言には、アゴがはずれそうになるほど驚いた経験が何度もあります。性差別発言を聞くたびに1ペニー硬貨(約1円)をもらっていたら、今頃私は本など書かずにバミューダ諸島のビーチでのんびりくつろいでいるでしょう。

性差別発言の多くは、「女の子(男の子)だからこれをしてはいけない」「この服を着てはいけない」という内容です。ルークの発言は、幼い子でさえ「男性の社会貢献のほうが女性の社会貢献よりも価値がある」と考える場合があるという実例です(ローリーによると、ルークは夫婦の収入を知らないのに「パパのほうがお金をかせいでる」と言ったそうです。ちなみにローリーは博士号を取得しており、夫は取得していません)。

ジェンダーの固定概念が招くさまざまなトラブル

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早い場合は10歳くらいから、男子のジェンダー概念は男性優位・攻撃性・性の軽視に向かい始め、女子は性的な魅力を重視し始めます。調査によると、男子が抱く固定観念が強固であるほど、女子の前で性的な言葉やジョークを口にしたり、ナンパをしたりする傾向があるそうです。

非営利団体プラン・インターナショナルが2018年、アメリカ国内の青年千人以上を対象におこなった調査では、子どもの頃トラックや銃などの「男の子向け」おもちゃばかりで遊んでいた男子は、女子の思想や性格よりも身体的な特徴を重視し、「仕事・政治・生活におけるリーダーは男女半々であるべき」という考えに否定的である傾向がありました。おもちゃ自体が性差別を加速させるというよりは、さまざまな面(親が与えるおもちゃを含む)でジェンダーの固定観念が強調される家庭で育つと、性差別的な考えが身につく危険性が高まるのでしょう。

調査結果の説明では、「男子は明らかに、特定の言動(心身ともにたくましく、弱い部分を見せず、性に興味を示す)が“男らしい”のだ、というプレッシャーを感じています。また、『女子は能力や知性よりも身体的な特徴や性的な魅力によって評価されるべきだ』というメッセージを受け取っている点では、女子と同じです」と表現されています。調査対象となった女子の55%が、「男子が性的な言葉やジョークを口にするのを、少なくとも週に数回は聞く」と答えました。

この傾向は大人になっても変わりません。「男らしさ」の観念が強い男性はそうでない男性に比べて、セクシャル・ハラスメントや性的暴行をする傾向があります。この理由について、専門家は2015年に発表した論文でこう述べています。「彼らは支配的地位を維持するために、パートナーに対して性的に強引かつ(または)威圧的であるべきだと考えます」。

ジェンダーの面において不平等で差別的な今日の社会は、こうしてできあがっているわけです。けれども、解決策を示す研究結果も出始めています。では、解決に必要なものは何でしょうか? ――それが、親の力なのです。

【性差別撲滅プログラム その①】ジェンダー用語に気をつける

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子どもが社会的グループに偏見意識を持つようになるには、いくつか条件があると発達心理学者のレベッカ・ビッグラー氏は言います。1つ目は必須条件で、その社会的グループが識別しやすいことです。誰がどのグループに属するか、子どもにわかりやすくしなければいけません(性別においてはたいてい、男女の見分けがつきやすい)。次に、以下の3つのうち最低でも1つの条件がそろわなければなりません。条件が多いほど、偏見意識が生じやすくなります。

①グループの構成が片寄っていること
少数派のほうが目立ち、偏見の対象になりやすい傾向がある。性差別にはあまり当てはまらないが、特定の環境下(チェスのキャンプで20人中4人しか女子がいないなど)では当てはまる場合がある。

②グループが他のグループと分離していること(理由の説明がない場合が多い)
主に人種差別に当てはまる。特定の環境下では性差別にも当てはまる(学校の休み時間に男女別々に遊ぶなど)。

③グループの特徴が、心理的に明白であること
人々がグループの特徴やグループメンバーを言葉で表したり、グループごとに異なる仕事を与えるなど。これは性差別によく当てはまる。ビッグラー氏はこの観点から、言語化は性差別を生む要因だと考えている。

ここからわかるのは、私たち親はジェンダー用語の使いすぎを控えるべきだということです。「男子」「女子」「男性」「女性」ではなく、できる限り「子どもたち」「生徒たち」「人々」と言う努力をしましょう。「女子たちがサッカーをしている」ではなく、「子どもたちがサッカーをしている」と言いましょう。

実践するのは難しいものです。私はジェンダー用語に気をつけ始めて以来、使う必要のない場面で「女子」「男子」という言葉をしょっちゅう使っていることに気づきました。子どもとジェンダーの話をしてはいけないわけではありません。むしろ、性差別についての話し合いは重要です。ただし、ジェンダーに関係ない話なのに、古い慣習に従って不必要に性別を強調するのは避けましょう。子どもが性別を重視し、性別にさまざまな意味があると考えるようになるという逆効果を生むからです。

子どもの担任の教師に、ジェンダー用語や性別による区別を用いないようリクエストしてもよいかもしれません。スウェーデンでは、これを実践している幼稚園が数校あります。最近の調査によると、これらの幼稚園ではジェンダーに関する固定観念的な発言が徐々に減少しているそうです。

※本書には「性差別撲滅プログラム その②~④」も掲載されています。

著者プロフィール
メリンダ・ウェナー・モイヤー(Melinda Wenner Moyer)さん:『サイエンティフィック・アメリカン』誌の寄稿編集者として表彰を受けており、『ニューヨーク・タイムズ』紙にも多数の記事を寄稿している科学ジャーナリスト。『スレート』誌コラムニスト。一男一女の母親でもある。

訳者プロフィール
塩田香菜(しおた かな)さん:上智大学英文科卒。英国レディング大学大学院児童文学修士号取得。書店勤務、企業内翻訳などを経てフリー翻訳者。一男一女の母として子育てに奮闘中。

構成/さくま健太

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