台湾統一は習近平のしつこいストーカー行為だ

台湾統一は習近平のしつこいストーカー行為だ

  • アゴラ
  • 更新日:2021/10/14

10月9日の中国共産党機関紙「人民日報」日本語版は、同日に北京の人民大会堂で行われた「辛亥革命110周年記念大会」で「習近平中共中央総書記(国家主席、中央軍事委員会主席)」が次のような「重要談話を発表した」と報じている。

「中華民族には、分裂に反対し、統一を守るという輝かしい伝統がある。『台湾独立』分裂は祖国統一の最大の障害であり、民族復興の深刻な隠れた危険だ」

「台湾地区問題は完全に中国の内政であり、いかなる外部からの干渉も許さない。いかなる人も、中国人民の国家主権と領土保全の強固な決意と確固たる意志、強い力を見くびってはならない。祖国の完全統一という歴史的任務は必ず実現しなければならないし、必ず実現することができる。」

一方、台湾の蔡英文総統は10日、双十国慶節式典の演説で、両岸(台湾と中国)との関係について「現状維持こそが我々の主張だ」と訴え、中国を念頭に置いて「一方的に現状を変えようとする行為を全力で阻止する」と述べた。

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Dilok Klaisataporn/iStock

こうした両者のやり取りを見るにつけ、筆者はいつも「嫌がる女性としつこくつきまとうストーカー」の関係を連想してしまう。いわゆる「ストーカー規制法」の第二条は、次のような「つきまとい等」のストーカー行為を禁じている。

つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。著しく粗野又は乱暴な言動をすること。電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

読むと、どの項目一つとっても習近平が蔡英文につきまとう様子とそっくり合致していて、蔡さんや台湾人には申し訳ないが、思わずにんまりしてしまう。そこで、ここ120年余りの台湾の出来事を擬人化して述べれば、概ね次のようなことになるのではなかろうか。

「台湾人は、126年前に里子に出された大陸の遠い親戚に、50年経って里親が出て行ったからと、その一族郎党に大挙して押し掛けられ、母屋を取られてしまった。今ストーカーをしているのは、その遠い親戚を大陸から台湾に叩き出した、さらに血縁の薄い俄か成金だ」

親戚が国民党(外省人)、里親が日本、俄か成金が共産中国だ。それ以前の明代や清代に渡台した漢族は平埔族とも混血して本島人(本省人)となった。時は流れて外省人も2世3世になり、本省人と融和して台湾人アイデンティーが形成された。よって台湾人は習の言う「中華民族」ではない。

詳しく言えば、17世紀初めにオランダに統治されるまでの台湾には、原住民(平地に住む平埔族と山間部深くに住む高山族)と新天地を求めて波高い海峡を渡ってきた少数の福建系男性が住んでいた。そのオランダを駆逐した三代の鄭(成功)政権には明代の漢族女性も同行した。

鄭政権を倒した清も、明と同様に海禁策を敷き男だけ渡台を許した。反乱を恐れて家族を大陸で人質にしたのだ。清も満州人を赴任させなかった。斯くて婿取り風習のあった平埔族と漢族が混血した。でなければ日本領有時(1895年)の人口260万の説明がつかない(終戦時は6百万。10百万が25百万になった朝鮮もだが、日本統治期は人口が増える)。

オランダ統治期の1650年頃に原住民が7万いたとの戸籍調査があるようだ。そこへ大陸から移入して来た漢族苦力と、清から逃れた鄭成功随行者を合わせて1683年の鄭政権崩壊時には20万余の人口だったとされる。それが1760年の移住解禁を経て1811年頃には200万の大台に乗った。

多くの漢族は福建から渡台したが、広東からは客家が多く、一部違っても台湾総督府は全てを客家と見做した。よって本島人の戸籍は、福建系、客家系、その他漢族、原住民と分類された。帝塚山大学の伊原吉之助名誉教授は、その福建系の7割に原住民のDNAが見られると述べている。

これらの一連の歴史は、台湾人は台湾人であって漢族ではないこと、まして北京の言う中華民族などではないことを雄弁に物語る。それを一方的に「中華民族には、分裂に反対し、統一を守るという輝かしい伝統がある」などと言われても、台湾人にとっては甚だ迷惑なストーカー行為でしかない。

蔡総統のいう「現状維持」は台湾人の世論調査に確かに沿う。が、凶暴なストーカーにつきまとわれての調査が素直な民意を反映するはずもない。北京がストーカー行為をやめ、他の民主主義国が扱うのと同じ扱いを台湾に対してするなら、台湾人全員が「独立」を望むのは自明だ。

こうして台湾人の歴史を紐解くと、北京の言い分が如何に理不尽か改めて知れる。こういったストーカー行為が白昼堂々と、しかも国際社会の衆目の下に行われている。これを異常と思われないようサラミをスライスする如く日常的に行うのも、北京の「三戦」工作の一環と心得るべきだろう。

高橋 克己

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