新型コロナが妊婦と赤ちゃんに与える影響

新型コロナが妊婦と赤ちゃんに与える影響

  • JBpress
  • 更新日:2021/07/23
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可能なら妊娠前にワクチンを接種しておいた方がよい

東京都に4回目の緊急事態宣言が出て1週間、都内の平均新規感染者数は1000人を超え、冬の「第3波」以来の水準になっていると報じられています。

それもそのはずです。「冬のインフルエンザ・シーズン」以来の「夏のインフルエンザ・シーズン」到来ですから、ある意味季節的に当たり前のことでもある。

そうしたなか、妊娠しておられる若い女性、あるいは今年これから子供を設けようかと計画中のお母さん向けに、「妊娠出産の予定があるなら、ワクチンを打っておいた方が安全」とお伝えするのが、本稿の主題です。

妊娠中に新型コロナウイルス感染症に罹ると、明確な重症化傾向が見られ、最悪の場合、母子ともに命を失うケースも見られます。

お母さん方はもちろん、家族に出産予定のある女性がおられる方には必見の内容をまとめてみました。

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妊婦は絶対コロナに罹らない方がよい

新型コロナウイルス感染症と、それに対抗する「ワクチン」とが、妊婦や胎児に与える影響について情報が錯綜しているようです。最初に結論を3点に整理しておきましょう。

1 新型コロナウイルスへの感染によって胎児に異常が出たり、流産、死産のリスクが特に高くなる医療統計の解析結果は出ていません。

2 しかし少数ですが、妊娠後期に新型コロナウイルスに罹患して重症化し、死産、流産、お母さんが亡くなった「個別のケース」、また生まれた赤ちゃんが病気になる症例などは報告されています。

妊婦さんは新型コロナウイルス感染症に極力罹らない方がよい――これは間違いありません。

3 妊婦さんがワクチンを接種したために、何らかの異常が出たという個別ケースが、ほとんどありません。

コロナ罹患による症例と、ワクチン接種とが混同され、ネットメディアなどで混乱を発生している危険性があるように思われます。

これから出産を予定している人は、接種後の長期避妊は必要ありませんが、可能ならば妊娠前に接種を受けた方が良い。

また、赤ちゃんの手足が揃う器官形成期(4~8~12週あたりまで)は、偶発的な胎児異常の発生との(医師の識別に)混乱を招く恐れがあるため、ワクチン接種を避けるようにすべきでしょう。

授乳中のお母さんも、現時点で特段の懸念は認められず、国際的に接種の対象として認められています。

結論として「妊婦さんは、リスクも低く、新型コロナウイルスワクチンは接種しておいた方が安全」。このような論旨を背景を含めて源流探訪してみます。

そもそも妊娠とは何か?

さて、改めて妊娠とは何なのでしょう?

小中学生向けの性教育のようなことをいまさら問う必要があるのは、そのレベルから確認した法が、社会の「コロナリテラシー」全体が向上するように思われるからです。

ここでは特に、コロナリスクの高い女性の立場で考えます。

受精とは、お母さんの卵子に、外部から入ってきた父親の精子が結合して発生する事態です。

その方法は、自然な方法から、試験官内での人工授精まで様々ですが、この受精卵(胚とも言いますし、この時点では「ES細胞」)は、それが赤ちゃんとしてきちんと育つには、お母さんのおなかにきちんと着床してやらねばなりません。

そうやって、おなかの中に新たな命を宿した状況、それが妊娠の基本的事柄です。

さてここで、新しい命を宿した赤ちゃんは、間違いなくお母さんの子供です。しかし同時に、半分の遺伝子は、お父さんからも受け継いでいる。

両親から半分ずつ遺伝情報をもらってきて、新しい命が授かるわけです。この赤ちゃんそのものは、お母さんにとっては「分身」でもあるけれど、実は「半分は他人」という、二律背反、パラドクシカルな存在であることに注意する必要があります。

赤ちゃんとは、お母さんにとって「おなかを痛めたわが子」でもありますが、遺伝的には「別の個体」 分子生物学的には、お母さん個人の体内で「異物」と認識されうる存在です。

つまり、免疫によって排除されてしまう可能性がある非常にデリケートな存在であることが、新型コロナと妊婦さんを考える、すべての基本になってきます。

親子は他人の始まり:妊婦の免疫は低下する

世の中には、現在の医学水準では臓器移植が必要とされる病気が多く知られます。

そのようなとき「拒絶反応」が少ないよう、家族、血族での臓器提供という、大変な、でも強い絆を感じさせる事例を目にすることがあります。

「他の人の臓器」は、体内では「異物」でしかない可能性があります。

一度そのように認識されてしまうと、人間の個体はそれを排除する方向に全精力を傾けてしまう。それが免疫というシステムであり、因果でもあります。

せっかく移植した臓器でも、本人の免疫が拒否してしまえば、手術は失敗に終わります。

同じように、おなかに宿った赤ちゃんもまた、純然たる自己の体ではありません。免疫反応が強すぎれば、排除されてしまうこともある。

流産の一つの原理がここにあります。

女性は妊娠すると、そのような「半分は他人」という子供を、体が異物と認識しないよう、免疫が下がった状態に自動的にシフトする、精妙なからだのメカニズムがあるようです。

そこに新型コロナウイルスが襲ってきたら、どうなるか。症状が悪化した例が報告されているようです。

日本産婦人科感染症学会のホームページ、日本産婦人科感染症学会(http://jsidog.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=113040)によると、コロナに罹患した妊婦さんと、そうでないコロナ患者を比較した医療統計では、罹患した妊婦さんに重症化の傾向が見られるようです。

ICU(集中治療室)入室例で比べると、コロナに感染していない妊婦さんの18倍にも達している。

また、人工呼吸器管理やECMO装着例では、重症例が有意に多く、ECMO装着例では非妊婦に比べ2.5倍というデータがあります。

特に肥満の妊婦さん、妊娠高血圧症の妊婦さん、糖尿病の妊婦さんなど、合併症的なものを持つお母さんに重症化が見られた。

高齢者の症例と、整合した結果が出ているようです。

その他、早産1.5倍、死産、新生児死亡、母親の死亡各3倍、新生児室への入院5倍など、目を覆うような状況が、マクロな統計では見えない差として、個別症例比較から明らかにされています。

つまり、妊婦は新型コロナに罹患すると「重症化しやすい」ハイリスク集団だと考えるべきという結論になる。

背景として、妊娠に伴う免疫システムの変化、全身免疫の低下による重症化を招きやすい素地があると考えて外れない。

私は、こうしたメカニズムをきちんとすべての人が分け隔てなく知るのが重要だと考えます。

特にスキャンダラスな報道で数字を稼ごうとするマスコミの姿勢や記者の記事をチェックするデスクのリテラシー不足は、本質的に改める必要があると感じます。

妊婦さんとワクチンの関係

先ほど「器官形成期」である妊娠初期と疑われる妊娠準備中の女性については「4~8~12週あたりまでは、偶発的な胎児異常の発生との(医師の識別に)混乱を招く恐れがあるため、ワクチン接種を避ける」とされていることを記しました。

結論から言うと、それ以外の時期、健康な妊婦さんにワクチンを打って、何か問題があったという報告は、確認される限りないようです。

ワクチンを打つべきでない人、打てない人とは

1 明らかな発熱がある

2 急性期の病気である

といった、纏めれば「病気の人」(急病の妊婦さん)

3 ワクチン成分で重度のアレルギーが出た人(妊婦さん)

打つか打たないか、注意が必要な人とは

4 急性期以外の病気の人(妊婦さん)

5 ワクチン成分で重度ではないがアレルギーが出た人(妊婦さん)

それ以外の妊婦さんがワクチンを接種しても、「発生する副反応は非妊婦と変わりない」。

ワクチンを接種した妊婦さんと、接種しなかった妊婦さんを比較して「出産リスクに変化は見られない」。

そして何より「コロナ感染は高率で予防される」ことが、統計的にはすでに明らかです。

これらのことから、妊婦さんはワクチン接種を積極的に検討すべきだろうと思われます。

なお、産婦人科学会などからの注意として、ワクチン接種後、発熱があった場合、非妊婦の人よりも「早めに、解熱剤などを飲んでおいた方がよい」可能性が指摘されていることを付記しておきます。

高い体温のため、赤ちゃんに影響が出ることを未然に防ぐ配慮などから、記されているものかと思われました。

なお、本稿準備に当たっては、ルイ・パストゥール医科学研究所・東京大学ゲノムAI生命倫理研究コアの宇野賀津子先生のご教示、また日本学術会議シンポジウムで伺った日本大学医学部産婦人科の川名敬教授の講演が大変参考になりました。

しかし、文責はもっぱら筆者にあります。

いずれによらず、ワクチンを接種するか、しない方がよいか、迷われるようなケースの方は、医師と綿密に相談し、決して一人で思い悩んだりされないように、と思います。

伊東 乾

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