『石子と羽男』の“してやられた”感が心地良い 新井順子P×塚原あゆ子監督作品の真骨頂

『石子と羽男』の“してやられた”感が心地良い 新井順子P×塚原あゆ子監督作品の真骨頂

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  • 更新日:2022/08/06
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金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(c)TBS

「やはり、この裁判はすべてあなたの……」

参考:すでに話題沸騰『石子と羽男』の“ちょい弱”な中村倫也もいい! セリフ多めでツヤ声も堪能

そう言いかけた石子(有村架純)の言葉を笑いを交えながら遮った、やり手検事の優乃(MEGUMI)。きっと石子はこう言いたかったのではないだろうか。「すべてあなたの手のひらで踊らされていたようだ」と。

金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系/以下『石子と羽男』)第4話は、電動キックボードの交通事故が焦点に。最近よく街なかでも見かけるようになった電動キックボード。だが、もし歩行者との接触事故が起こった場合、いくら相手が「何もしなくていい」と言って立ち去ったとしても、その後に「ひき逃げされた」と言われるトラブルになりかねない。現実に起こりうるケースを、こうして疑似体験できるというのもフィクションの大きな役割だ。

事故が起こったあと、すぐに駆け寄って警察や救急車への連絡をしたと主張する一奈(生見愛瑠)と、「運転手が自分をおいて逃げた」と主張する新庄隆信(シソンヌじろう)。双方の言い分が食い違ったまま、示談は成立せず、そのまま裁判に突入することに。そして、一奈を弁護する羽男(中村倫也)と石子の前に立ちふさがったのは、羽男の姉・優乃だった。

フォトグラフィックメモリーという特殊能力の持ち主で、抜群の記憶力を持つ羽男。だが、予想外の展開になると体が萎縮してしまうという弱点が。そんな羽男を誰よりも知っている優乃。「臨機応変に対応できなきゃ終わり、わかってる?」とまくし立て、依頼人の人生を背負っている覚悟がないのなら弁護士をやめろとまで詰め寄る。そんな高圧的な優乃に、たまらず石子が制止すると「身内に甘すぎるっていうのも考えもんだよね」と意味深な言葉を残して立ち去るのだった。

この段階では、優乃が言い放った「身内に甘い」は、羽男をかばう石子を指しているように聞こえる。しかし、事件の真相を探っていくと、新庄の妻が東京地検の元検事正の娘であること。そして、新庄が交通事故の直前に違法カジノへと立ち寄っていたことなどが明らかになっていく。弟とその相棒への叱咤のように見えて、実は大きな組織の圧力を示唆する言葉になるスリリングな展開がたまらない。

おそらく真正面から違法カジノについてぶつかっても、上層部の親族が通ってるとなれば表沙汰になることなくもみ消される。そんな検察の「身内の甘さ」に憤慨していたと思われる優乃。この裁判で優乃が見据えていたのは、交通事故トラブルの解決だけではなく、その先にある大きな課題の解決だった。

どこか不器用な弟の羽男だが発破をかけることで、きっと一奈が救護義務を果たしていたという確固たる証拠を掴んでくると信じていたのだろう。見事その期待に応えて見せた羽男と石子。裁判は弟に舌打ちをさせられる形にはなったものの、カジノグループの一斉摘発、新庄の逮捕と結果的には優乃の狙い通りに事が進んだ。そんな優乃の目論見にまんまとハマった石子だが、そのクールなやり口にニヤリとせずにはいられない。

石子が口角を上げて優乃を見つめたとき、きっと多くの視聴者も同じような表情を浮かべていたに違いない。なぜなら優乃と石子の構図は、そのまま新井順子プロデューサー×塚原あゆ子監督と視聴者との関係性に似ているような気がするからだ。

今年4月、道路交通法の改正案が可決され、16歳以上なら免許不要、ヘルメット着用も任意で利用できるようになる電動キックボード。より身近になる一方で、事故が増えていくのではと懸念される乗り物について取り上げてくるあたりも、テレビドラマならではのスピード感でいつも時事ネタに挑んできた新井順子プロデュース×塚原あゆ子演出作品の真骨頂と言える。

エンタメとして楽しんでもらうのはもちろんのこと、その先にある視聴者の実生活が少しでもプラスになる作品になってほしい。そんな彼女たちの目論見に私たちはまんまとハマっている。その“してやられた”感が毎回とても心地良い。「やはりすべてあなたたちの……」いや、きっと彼女たちも優乃のように「ちょっと待って待って。なになになになに? ここ法廷なの? 私たち尋問されてるの?」なんておどけて、その先の言葉を遮ってくるかもしれない。みなまで言わず、このまま気持ちよく踊らされようではないか。(佐藤結衣)

佐藤結衣

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