「なにが悪いのよ」〈退職金3,000万円〉を一瞬で使い果たし、会社のカネを横領して逆ギレ...勝ち組人生から一転、75歳・元女社長が迎えた悲惨な末路【FPが解説】

「なにが悪いのよ」〈退職金3,000万円〉を一瞬で使い果たし、会社のカネを横領して逆ギレ...勝ち組人生から一転、75歳・元女社長が迎えた悲惨な末路【FPが解説】

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  • 更新日:2023/11/21
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事業を繁盛させることに成功した経営者は、老後も比較的ゆとりのある生活を送れるように思えます。しかし、意外にも経営者のなかには老後破産に陥るケースも少なくないと、FPの小川洋平氏はいいます。本記事では、五十田さん(仮名・75歳)の事例とともに、富裕層の老後破産について解説します。

3,000万円の退職金を受け取り、勇退した老舗製菓店の元経営者

五十田春子さん(仮名・75歳)は江戸時代から続く老舗の製菓店の元経営者です。65歳で年金生活を始めたことを機に、娘の久美子さんに社長職を譲り、自身は会長職に就きました。五十田さんがまだ50代だった当時、大不況で経営が危うかった時期に先代社長である夫が急死。不況を乗り切り会社を建て直し、小規模ながらも経営は順調な状態で娘に託し、勇退したのでした。

3,000万円もの退職金も受け取り、悠々自適な老後を送っていた五十田さんでしたが、その後に待っていたのは当時からは想像もできない事態です。

浪費癖が治らなかった五十田さん

元経営者である五十田さんは、現役のころから地元の経営者団体に参加し、会合や経営者仲間とのゴルフ、旅行で度々出掛けていました。現役のころからそうやって人脈を拡げ、営業活動で売上を伸ばし、会社を建て直すことができたのですが、会長職になったいまも、当時の経営者仲間との付き合いはほとんど変わらずに続いていたのでした。

また、新しいもの好きな五十田さんはスマートフォンも新しい機種が出ればすぐに購入するなど、気になったものは値段を気にせずに使う癖がついていました。会長職として毎月の報酬は15万円を受け取り、公的年金は毎月12万円程度受け取っていましたが、支出は収入を大きく上回ってしまい、退職金もあっという間に使い果たしてしまったのです。

ついに店のお金に手を付けてしまい…

手持ちのお金を使い果たしてしまった五十田さんは、ついに店舗のレジからお金を持って行くようになりました。

現社長の久美子さんが異変に気が付いたのは会社の決算期が終わってからでした。税理士から出された決算データと、会社の現預金が合っていないことに気が付いたのです。会社の現預金が合わないことに気付き、スタッフに確認したところ、五十田さんが久美子さんに無断で店のレジからお金を持ち出していたことが発覚したのでした。

現会長で元社長の五十田さんといえど、会社のお金を無断で使うことは当然横領です。久美子さんは当然五十田さんを問い詰めましたが、五十田さんは「亡き夫に代わり会社を建て直し、会社に貢献してきたのだからこのくらい当然。経営者団体の付き合いのためなのになにが悪いのよ」と開き直っていました。

社長として会社を守ってきた五十田さんに対し、久美子さんは強くいうことができず、ひとまずは会社から五十田さんへの貸付金として処理することにしました。

その後も五十田さんは会社のお金を使い込むことを止めようとせずにいましたが、会社の業績が低迷し始め、ついに堪忍袋の緒が切れた久美子さんから会長職を解任、縁を切られることになってしまいました。

実は老後破産に陥りやすい元経営者たち

会社員と比較し、自営業者、経営者は支出が多くなりがちで、現役を退いてからも交友関係が続くため、支出量を変えられない、という人は少なくありません。また、売上も経費も日ごろから個人の生活費とは桁が違う金額を見ていますので、一般の会社員が負担と感じることも支出として認識せずに使ってしまうことも。

そのため、一般家庭の感覚では十分と考えられる金額でも五十田さんのように大幅に不足してしまうことがあるのです。現役のころに毎月どの程度支出していたかを把握し、リタイア後には現役時代の支出を基準にどの程度の支出になるのか見込みを試算して、計画を立てておく必要があったといえます。

そして、経営者仲間との付き合いも大事なことですので、個人の支出ではなく会社の経費で出したほうがいい場合もあります。実際に、取引先の社長との関係性は未だに先代の五十田さんのほうが強く、五十田さんの存在があるからこそ取り引きが継続している部分も少なくはありませんでした。

そういった場合には会社から接待交際費、会議費などの名目で支出してもいいでしょう。個人で払わずとも会社からしっかりお金をもらい、経費として認められるものは経費として処理するべきでしょう。会社においてもプライベートでも、支出の見込み、使ってもよい予算を決め、予算の範囲内で使うことが大切なのです。

現役のころから自分のリタイア後の人生設計を考え、それを実現するために退職金や個人の資産形成プラン、資産の取り崩しの計画を考えたうえでお金を使っていれば、良好な交友関係を維持しながら、実の娘から見放されるようなこともなかったでしょう。

お金の出入りを見える化し、一生のスパンでの計画を立てて収入と支出をコントロールすることが自分や家族の幸せのため、そして経営者ならば社員や関連企業全員の幸せのために大切なことなのです。

まとめ

小規模企業の経営者様のなかには個人の収入と支出も、会社の収入と支出もよくわからないという方も多いものです。昨今では高校教育で金融教育がスタートし、「マネーリテラシー」という言葉が認知されはじめてきましたが、経営者にとっては自分や家族だけでなく社員や取引先など多岐に渡り経営者のマネーリテラシーが影響をおよぼします。

自分のお財布事情をしっかり把握し、どうしたら最大限自分や家族が幸せに生きていけるか、まずは自分のお金のこととしっかり向き合い考えていただきたいと思います。

※本記事は、FPの小川洋平氏のもとへ実際に相談のあった出来事をベースにしたものですが、登場人物や設定などはプライバシーの観点から変更している部分があります。また、実際の家計相談の現場では、論点が複雑に入り組むことが多々あり、すべての脈絡を盛り込むことは話の流れがわかりにくくなります。このため、現実に起こった出来事のなかで、見落とされた論点に焦点を当てて一部脚色を加えて記事化しています。

小川 洋平

FP相談ねっと

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