“殺人事件の犯人が住んでいた部屋”はどう扱われる...? 大島てるが明かす「事故物件の境界線」のリアル

“殺人事件の犯人が住んでいた部屋”はどう扱われる...? 大島てるが明かす「事故物件の境界線」のリアル

  • 文春オンライン
  • 更新日:2022/01/15

「16歳少女が亡くなり、母親は無理心中…」大島てるが語る“あるアパートで起きた悲劇”の衝撃的な結末から続く

昨年、事故物件界隈での最大のニュースは、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を発表したことでした。これは、それまで曖昧だった“事故物件の告知義務”に関して、国が「どこまで告知すべきか」の指針を示したものです。

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しかし、中には多くの人が「できることなら住みたくない」と思ってしまうのに、事故物件とは定義されない物件も存在します。今回も令和3年(2021年)を振り返りながら、事故物件について詳しくお話ししようと思います。(全2回の2回目/前編から続く

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※写真はイメージです。 ©iStock.com

ベランダから侵入した男

「事故物件の範囲」を考える上で印象深かったのは、昨年4月に大阪府大東市のマンションで起きた殺人事件です。被害者となったのはそのマンションの3階に住む女子大生。加害者は女子大生の部屋の真下に当たる2階に住んでいた男でした。

事件当日、男は自分の部屋のベランダから梯子をかけて、上階にある女子大生の部屋のベランダに侵入。そこから窓を割って中へと入り、女子大生を殺害したのです。

男はベランダから部屋へと侵入する前に、女子大生が玄関から逃げ出さないよう、部屋の外にドアストッパーを置くなどの事前工作をしており、その計画性や残忍な手口に注目が集まりました。

ただ、私が個人的に印象深かったのは、男がその後、2階の自室で焼身自殺を遂げたことです。女子大生の叫び声を聞いて近隣住民が110番通報し、警察が駆けつけたときには既に2階から火の手があがっていたとのこと。そして男は、搬送先の病院で死亡が確認されたのです。

「加害者が住んでいた部屋」の扱い

今回は、こうした事件を大家目線で見てみましょう。まず、殺害現場となった部屋はやはり事故物件になってしまうため、次の借り手には告知義務を果たした上で、ある程度値引きした家賃で入居してもらうことになります。

事故物件は値引きしなければならない、といったルールがあるわけではないのですが、心理的瑕疵がある、つまり「ここには住みたくない」と多くの人に思われてしまう物件は、いくらか金額を下げないと借り手(買い手)が見つからないというのが現実です。

しかし、「殺人事件の犯人が住んでいた部屋」の場合はどうでしょうか。この連載でも何度か触れたことがありますが、単に「加害者が住んでいた部屋」というだけでは、当然ながら事故物件とは言えません。

隣人同士の殺人事件が起きたケースでは……

例えば、数年前に北海道札幌市で起きた隣人同士の殺人事件。この事件では、あるアパートに住んでいた女性が、隣人の男に殺害されてしまったのですが、この場合、事件現場となった女性の部屋は事故物件となりますが、犯人の男が住んでいた部屋(隣の部屋)では誰も亡くなっていないため、そちらは事故物件とは言えません。

事件後、女性は亡くなり、男は逮捕されたため、大家から見ると2部屋が空いたことになります。このとき、女性が住んでいた部屋を新たに借りようとする人がいれば、業者は「実は、数ヶ月前にこういう事件がありまして……」などと、そこが事故物件であることを告知する義務が生じます。しかし、男が住んでいた部屋を借りようとする人には、何も告知する必要はないのです。

「殺人事件の犯人が住んでいた部屋なんて気味が悪い」「できることなら避けたい」と感じる人も多いのではないかと思いますが、現状では、借り手がそうした情報を知る術はありません。

ただ、昨年の大東市の事件では、犯人の男が自室で焼身自殺をしたため、結果的にその部屋も事故物件になってしまいました。後にその物件を借りる人からすれば、知らず識らずのうちに犯人と同じ部屋に住んでいた、といった事態は避けられる一方で、大家にとってはかなり負担がかかる事件になったのではないかと思います。

前の住人が亡くなっていたとしても

他にも、「この部屋に住んでいた前の住人と、その前の住人は、ともに最寄りの駅で飛び込み自殺している」といった物件の話を耳にすることもありますが、その部屋が亡くなった現場ではない以上、やはりこの場合も業者に告知義務はありません。

もちろん、そこが「呪われた部屋だ」などというつもりはないのですが、そうした事態が連続していることを考えると、その部屋に住むことで何かしら気分が落ち込んでしまう要因――例えば隣人に何か問題があったり、日当たりが極端に悪いせいでカビが発生し、そこで生活すると健康を害されてしまうといった要因――があるのではないか、と疑ってしまいます。

「そうした部屋には住みたくない」「住む前に教えてくれないと騙された気持ちになる」といった点では事故物件と変わらないとも言えますが、そうした物件の情報をどこかに集約することも、そもそも情報の真偽を確かめることも現状では不可能です。

大島てる」サイトには、あらゆる地域の事故物件が無数にマッピングされていますが、そもそも“事故物件”と定義される物件、業者に告知義務が生じる物件自体が、「できることなら住みたくない」と多くの人が思う物件のごく一部に過ぎないのです。

(大島 てる)

大島 てる

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