DALLJUB STEP CLUB、あら恋、礼賛......活躍を広げるキーマン GOTOが語る、DTM時代に求められるドラマーの在り方

DALLJUB STEP CLUB、あら恋、礼賛......活躍を広げるキーマン GOTOが語る、DTM時代に求められるドラマーの在り方

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  • 更新日:2023/03/19
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GOTO(写真=山川哲矢)

【連載:個として輝くサポートミュージシャン】GOTO

DALLJUB STEP CLUB、あらかじめ決められた恋人たちへ、礼賛という3つのバンドに所属し、デュオやサポートでも幅広く活躍するドラマーのGOTO。メロディック・ハードコアやミクスチャーロックをルーツに持ちつつ、徐々に打ち込みの音楽に傾倒すると、自身のリーダーバンドであるDALLJUB STEP CLUBではダブステップやジュークを人力で演奏し、エフェクトを駆使したそのプレイスタイルは高い独創性を持っている。オルタナティブな姿勢を貫きつつ、「DTMには詳しいがバンド経験はない」という若い世代も増えてきた中で、ロックからビートミュージックまで幅広く対応できるGOTOの活躍の機会が増えたのは必然と言ってもいいかもしれない。3月23日には上記の3バンドに加え、GOTO×OHTAKEKOHHAN、HYPER SARDINES、RHYTHM BILLGATESという3組のデュオ編成、さらにはサポートを務めるösterreich、崎山蒼志、Mega Shinnosukeが一堂に会する『GOTO Festival』を開催するGOTOに、これまでのキャリアを振り返ってもらった。(金子厚武)

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ハイスタに目覚めてから“エフェクトを使った演奏”に至るまで

――まずはドラムを始めたきっかけを教えてください。

GOTO:地元の静岡で中高一貫の男子校の吹奏楽部に入って、中1のとき僕はトランペット担当だったんですけど、パーカッションをやっていた高2の先輩が夏に文化祭でHi-STANDARDのドラムを叩いてたんです。それを見て、速いし、激しいし、かっこいいなと思って、ドラムをやってみたくなって。兄もドラムをやっていたので、家にドラムセットがあったから、独学で勉強をしました。先輩が叩いてたのを思い出しながら、「とりあえず速く叩く」みたいな(笑)。中学生のころはずっとハイスタ周りのシーンが好きでしたね。

――メロディック・ハードコアだったり、『AIR JAM』周りということですよね。バンドもすぐ始めたんですか?

GOTO:中1ですぐに友達とハイスタのコピーバンドをやり始めて、それから先輩ともバンドをやるようになったり、他の学校の人ともやるようになったり。まだコピーが多かったですけど、そのころから音楽ばっかりやってました。

――いろんな人と演奏するのは昔からなんですね。オリジナルのバンドはいつからやり始めたんですか?

GOTO:中3のときにつき合ってた彼女の友達に誘われて、彼女と一緒に観に行ったライブがあったんですけど、そこにポルンガっていうバンドが出てて。そのバンドのドラムがその日のライブで脱退だったらしいんですね。で、そのライブが終わった後に、彼女が勝手に「私の彼氏、ドラムやってるから入れてあげて」みたいなことを言ったらしく、なんだかよくわからないままポルンガに入ることになって(笑)。そこでベースを弾いてたのがDALLJUB STEP CLUB(以下、ダルジャブ)でも一緒にやってるBENCH.さんなんですけど。

――そこからずっと一緒にやってるのはすごいですね。ちなみに、ポルンガはどんなバンドだったんですか?

GOTO:BRAHMANみたいなバンドでした。高校生になってからはBENCH.さんと、ポルンガのギタリストだったメンバーと3ピースのバンドをやって、それはRage Against the MachineとかSystem Of A Downみたいなミクスチャーロックやニューメタルに影響を受けたバンドで。高校を卒業してからは東京に出てきて、その3人と静岡時代からの先輩と4人でまたバンドを始めて、ギターが抜けて3人になったのがDACOTA SPEAKER.です。

――今につながるエフェクトを使ったプレイを始めたのはDACOTA SPEAKER.から?

GOTO:そうですね。最初はパッドを使い始めたんです。20歳くらいのときはUnderworldとか打ち込み系が好きになって、そのあとにフレンチエレクトロが流行って。ああいう電子音の感じをバンドでやる人も増えてたから、自分もパッドを使ってやってみようって。で、それとは別にダブバンドを観たときに、「こういうドラムの音、面白いな」と思って、自分で調べてエフェクターをいろいろ買って試したりを繰り返して、今のダルジャブのエフェクト多めなセッティングにたどり着いた感じです。

――セッティングを構築するにあたっては、誰かから影響を受けたりはしましたか?

GOTO:通常ドラムのセッティングに関しては、BOBOさんに憧れてどんどん数が減っていったんですけど、エフェクトに関しては特にいないかもしれないです。ダブバンドは普通PAがエフェクトをかけるわけですけど、あれを自分でやりたいと思ったんですよね。今だったらInstagramを見ればそういうことをやってる人もいるんですけど、当時はまだアンダーグラウンドの人たちの映像が見られる機会もそんなになかったから、とりあえず買って試してをずっと繰り返してました。

――試行錯誤を続けて、自分のスタイルが見えたのはどんなタイミングでしたか?

GOTO:知り合いに作ってもらったフットスイッチがあるんですけど、それは踏んでる間だけ音が通るんです。踏んでる間だけ音が切れるものは市販でもあるんですけど、踏んでる間だけ音が通るものはないらしくて。それを作ってもらって、叩くタイミングで踏むとエフェクトがかかるっていうシステムにしたら、それがすごくよくて、ディレイとかリヴァーブも自由自在にかけられるようになって。そこからいろいろ広がった感じがします。

――手元にあるエフェクターは何を使ってるんですか?

GOTO:KAOSS PADです。最初はそのフットスイッチがなかったので、エフェクトをかける用のスネアを用意してたんですよ。それを叩いたときだけエフェクトがかかった音が出るようにゲートをかけて、そのシステムでしばらくやってたんですけど、それだと演奏の自由度が少なくて。今はエフェクターと足だけっていう、シンプルなセッティングになってます。

DALLJUB STEP CLUB始動、「叩いてみた動画」が広がりのきっかけに?

――ダルジャブは2012年にスタートしていて、GOTOさんにとって初のリーダーバンドと言っていいかと思いますが、もともとどんなことをやりたいと思って結成したバンドなのでしょうか?

GOTO:クラシックなダブステップとか、クラシックなジャングルとか、「地味だけどベースが効いてる」みたいな、そういうのをバンド編成でやれないかと思って始めました。

――そこから本格的にビートメイクも始めたんですよね?

GOTO:ちょっと前から遊びでシーケンスを使って打ち込んだりはしてたんですけど、パソコンを使ってちゃんとやるようになったのはそのころからです。シーケンス感が好きっていうか、手癖で叩くドラムフレーズではないものが作れるのが好きで。人間には叩きづらい、無理してる感じのビートを作って、普通はそれを叩きやすいように直して、バンドで演奏すると思うんですけど、それをしたくないっていう。

――パソコンで作ったビートをそのまま人力で再現すると。

GOTO:そういうことをダルジャブでやり始めて、やっぱりこの感じが面白いなって。他の人と同じになりづらいというか、打ち込みだから、普通のドラムだとあり得ない手足の数のものが作れて、そういうクリエイティブな部分に惹かれましたね。

――めちゃくちゃ細かい譜割りだったりすると思うんですけど、どうやって叩けるようになったんですか?

GOTO:未だにできてるかどうかはわからないですけど(笑)、とにかく練習して、そのフレーズを覚え込ませるしかないと思います。あとは、“マス”を自分の中に作ってないとできないというか。

――グリッドをイメージしている?

GOTO:そうですね。「マス2個目にキックがある」とか。それが脳内で再生されて、その通りに動いてる、みたいな感じ。そうやって思い浮かべながらやらないと、しっかりハマらないかもしれない。

――最近は生演奏もトラックメイクも兼ねるドラマーが昔より増えたと思うんですけど、GOTOさんから見て刺激になったり、面白いと思うドラマーを挙げてもらえますか?

GOTO:めっちゃいますよ。石若(駿)くんにしろ伊吹(文裕)くんにしろ、その下の世代でもBREIMENのSo Kannoくんとか、みんなすごい。きっとあらゆる人から影響は受けていて、「この人のこれ、いいな」みたいな感じで、叩き方やフレーズを参考にすることはあるんですけど、自分の中で「この人は神」みたいな人はいなくて。みんなそれぞれの道があるし、自分は自分だし、そういう意味では周りのことはあまり気にしていないかもしれないですね。

――2015年にあらかじめ決められた恋人たちへ(以下、あら恋)に参加したあたりから、徐々にサポートの仕事も増えていった印象なんですけど、「ドラムを仕事にしよう」と思ったタイミングはあったのでしょうか?

GOTO:ダルジャブを始めたときに、「自分はどうなりたいんだろう?」っていうのを考えたんですけど、当時toeがすごく流行ってたのもあって、「一個のバンドで食いたい」というよりは、柏倉(隆史)さんみたいに自分のバンドもやりつつ、ドラムの仕事もやるっていうふうになれたらいいなと思って。とはいえそう思ってもすぐになれるわけではないので、「叩いてみた動画」みたいなものをYouTubeに上げてみたんです。当時は「アニソンのドラムを叩いてみた」みたいな動画が流行ってたんですけど、自分は好きなものを叩いてみようと思って。

――ジューク/フットワークを叩いた動画ですよね。

GOTO:それを上げたら結構いろんな人が見てくれたみたいで、あら恋の池永(正二)さんもそれを見て連絡をくれて。僕はもともと普通にあら恋のファンで、ライブにも行ってたから、びっくりはしたんですけど、あら恋で叩き始めたのをきっかけに、今度は劒(樹人)さんが「アイドルのサポートやってみない?」って声をかけてくれたり、いろんな人が誘ってくれるようになって。未だにあの「叩いてみた動画」を見て連絡が来ることもあって、自分にとって大きな意味のある動画だと思います。

――その後は2017年にRHYTHM BILLGATES、2019年にGOTO×OHTAKEKOHHAN、2020年にHYPER SARDINESと、それぞれ色の違うデュオをスタートさせていますが、このころはどんな時期だったと言えますか?

GOTO:……焦ってたんですかね? 「とにかく音楽を作りたい」みたいな時期だったのかもしれないです。ダルジャブとあら恋をやってる一方、バンド外の仕事も少しずつやるようになって……でも「もっと面白いことをやりたい」みたいな時期だったのかなあ。もちろん、生活のこととかもあったけど、そこまで真面目に考えていなかったというか、あまり計算できるタイプではないので、まずは「好きにやろう」っていう。実際、全然食えてなかったですけどね。バイトめっちゃしてたし、家がない時期もあったし(笑)。

――少しは焦りもあったのかもしれないけど、やっぱり「いろんな人と演奏するのが好き」っていう根本的な部分は変わってないのかもしれないですね。

GOTO:そうですね。そこはずっと変わってないかもしれない。究極的なことを言っちゃうと、「とにかく音楽を楽しんでいたい」っていうのが第一なので、とにかくいろんな人と好きなことをやりたいんですよね。

「トラックを自分で作るミュージシャンのグルーヴを再現できないといけない」

――ただ、この2~3年で一気にサポートの幅が広がった印象です。2021年には礼賛も始まったりとか。

GOTO:それは本当にみなさんのおかげで。僕は普通にやってただけで、いろんな人との繋がりからこうなっていったんですけど……特に、コロナ禍に入ってから、サポートの依頼が増えたんですよね。コロナ禍に入って、ダルジャブはライブをしないことにして、あら恋もほとんど動いてなかったから、単純に暇になったのもあって、配信ライブでも何でも誘われたら基本受けてたから、「サポートとかやる人なんだ」と思われるようになったのかもしれない。そうやってどんどん増えていったけど、周りのミュージシャンはみんな「仕事が減った」って言っていたので、「あれ?」みたいな。もともとコロナ禍になった瞬間にバイト先がつぶれちゃって、仕事がゼロになってたから、「やるしかない」っていうのもあったんですよね。だから、いろんな意味でコロナ禍が自分にとっては大きくて。

――まさに、ピンチがチャンスになったと。そんな中でも、特に「この仕事がきっかけとして大きかった」みたいなタイミングはありましたか?

GOTO:なんだろう……例えば、崎山蒼志くんのレコーディングに誘われて、「逆行」を録音して、「MVも録ります」っていうときに、ドラムと崎山くんだけで撮るMVだったので、まあまあ僕も映ってるんですよ。2人なんでそりゃそうなんですけど、それを見てサポートに誘ってくださったりしたこともあったので、「逆行」のMVは結構大きいかもしれない。

――「叩いてみた動画」に続いて、やっぱり映像は大きいのかもしれないですね。GOTOさんはセッティングのオリジナリティだけじゃなくて、単純に叩いてる姿もかっこいいし。

GOTO:そうだと嬉しいですけどね。

――ちなみに、崎山さんのレコーディングに参加したのはどういう経緯だったんですか?

GOTO:おやすみホログラムをサポートしてたことがあって、そのときレコーディングでakkinさんにお会いしていて。akkinさんは崎山くんのアレンジにも関わっているので、その後に連絡をもらって、「最初は打ち込みにしようと思ったけど、生ドラムの方がいいかもと思って、スタイル的にGOTOくんが合う気がする」みたいなことを言ってもらったんです。クッソ速い曲なんですけどね(笑)。

――打ち込みを生ドラムにするにあたって、GOTOさんに声がかかったのは納得というか。Mega Shinnosukeさんやくじらさんのサポートもしているように、最近は自分でトラックを作って歌う人たちが増えているから、ちゃんとトラックメイクのことも理解しているドラマーが求められてると思うんですよね。

GOTO:それは絶対そうだと思います。同期のこともわからないと話にならないというか、ただドラムを叩けるだけだと、今のサポートの仕事には向いてないと思う。自分のバンドだけやりたい人ならそれでいいですけどね。トラックを自分で作っている最近の若いミュージシャンたちは、「こういう音を出したい」とか「こういうグルーヴを出したい」っていう意志が明確にあるから、それをドラマーとして再現できないと難しいですよね。

――DTMにはすごく詳しいけど、バンド経験はなかったりするから、そこの部分のサポートが求められるわけですよね。米津玄師さんやEveさんをサポートしてる堀正輝さんも自分でビートメイクをする人で、だからこそ今求められているんだと思うし。

GOTO:堀さんは本当にそうですよね。「ここでこれを鳴らすか、鳴らさないか」とか、ちゃんと全パートを把握できてる人だと思います。でも本当に、今の若い子たちはこだわりがめちゃくちゃ強いなって思いますよ。一昔前だと、「ここはノリで」とか「ここはこんな感じで」みたいなのも普通だったけど(笑)、その感じは全くなくなったなって思いますね。

主催イベントでは9組のドラムを演奏「体が壊れるんじゃ(笑)」

――3月23日には現在GOTOさんが関わっているアーティスト全9組が出演する『GOTO Festival』が開催されるわけですが、そもそもどうやってこのイベントが企画されたのでしょうか?

GOTO:ライブ制作をやっている知り合いに「イベントやらない?」ってずっと言われてたんです。「そういうのは恥ずかしいからいいかな」ってずっと断ってたんですけど、去年の今ごろにまた言われたときに、「こういうことができるのは今しかないかも」ってちょっと思ったんですよね。一晩で9組のライブでドラムを叩くっておかしいから(笑)、年取ったらマジでできないだろうし、「今回だけ!」って感じでやろうかなって。人生で一回くらいは金髪にしてみたいとか、バンジージャンプしてみたいとか、そんなノリではあるんですけど、オファーした人全員OKしてくれたので、みんなが僕につき合ってくれるのはありがたいです。

――でも本当に、一晩で9組のライブに出演ってなかなかですよね(笑)。

GOTO:たぶんこれまでは2組連続くらいしかやったことなくて、その4倍以上だから……体が壊れるんじゃないかな(笑)。その後に朝までアフターパーティもあるし……まあ、一生に一回なので。

――9組の色はそれぞれですけど、イベント全体の色はどのように感じていますか?

GOTO:変な人がいっぱい出るイベントだと思います(笑)。

――それはつまりGOTOさんが変な人だからってことでいいですか?(笑)

GOTO:僕は普通の人だと思うんですけど、逆に周りはみんな癖が強いので……裏でケンカが起きないといいですけど(笑)。

――もちろん、GOTOさんのドラムが堪能できる一日でもあるので、セッティングの変化とかも面白いかもしれないですね。

GOTO:セッティングはそこまで大きくは変わらないと思うんですけど、逆に言うと、同じセットで同じ音しか鳴らないはずなのに、メンバーが変わるとこんなに違って聴こえるんだっていう発見も面白いかもしれないです。

――楽しみにしています。今後もダルジャブとしての活動がありつつ、他のバンドやサポートも並行して活動していくかと思いますが、最後にドラマーとしての展望を聞かせてください。

GOTO:ダルジャブは編成が変わって元に戻った感じもあるので(2022年に森心言が脱退し、最初期の3人編成に戻った)、よりドープな感じでやれたらいいなって。いちドラマーとしては、ここから「上を目指して!」みたいなことよりも、とにかくみんなと演奏することを楽しめたら、それが一番いいなと思っています。(金子厚武)

金子厚武

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