IT業界の採用基準、女性登用で下がるのか

IT業界の採用基準、女性登用で下がるのか

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/10/13
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フェイスブックで多様化を担当するマキシーン・ウィリアムズ氏は毎週月曜日、新入社員を前に話をする。その際、女性や有色人種の採用を強化する同社の取り組みについて説明してからこんな質問をする。「この話を聞いて、会社が基準を下げていると思う人はいますか」

手を挙げる者はまずいない。しかしウィリアムズ氏は、フェイスブックの中にはそう考えている人もいると思うと話し、社内のフォーラムでも「基準を下げる」という表現が時々使われていることを説明する。

同じようなことがハイテク業界の至る所で起きている。企業は採用や昇進で多様化を進めるため、幅広く人材を求めるようになった。その結果、業界で多数を占める白人やアジア系の男性社員の一部は、多様化に関する目標達成のために基準が引き下げられているという不満を抱えている。

女性と基準についてこうした見方があることは、今年の夏、グーグルのエンジニアだったジェームズ・ダモア氏が書いたメモがきっかけで明らかになった。ダモア氏は社内の男女差の一因は生物学的な違いによるとものだと主張した。メモは社内フォーラムに投稿され、その後、メディアにリークされた。

「性別に関する固定観念を助長した」ことを理由に解雇されたダモア氏はメディアに登場し、グーグルには人種や性別によって異なる採用慣行があり、「グーグルに入社しやすくしている」と語った。グーグルは、異なった採用基準があるとの指摘を否定した。同社は人材プール拡大のため、採用対象大学の数を増やしてきた。

グーグルの多様化担当バイスプレジデント、ダニエル・ブラウン氏は声明で、「多様な人材の採用がなんらかの形で『基準を引き下げている』との見方は単純に間違っており、有害だ」と述べ、「どの候補も同じ厳しい採用過程を経験している」と説明した。

他のハイテク企業は、基準の引き下げを問題視する声が業界にあることを認めている。しかし、社内にこうした問題があるという企業はほとんどない。企業によると、採用や昇進について透明性を高め、誰もが公正に評価されることを社員に保証しており、白人やアジア人の男性社員も多様化の取り組みから取り残されることはないという。

しかしハイテク企業で働く多くの女性は、女性の採用基準は低いどころか、高いと話す。口に出して言われるわけではないが、絶対にミスを犯してはいけないという基準があるように感じるとの声は多い。

新興企業オプソリュートリーの創業者で最高経営責任者(CEO)のケイト・ヘドルストン氏はスタンフォード大学でコンピューターサイエンスの修士号を取得し、経験もあったのに、ハイテク企業に食い込むのに苦労したと話す。多様化の取り組みについてハイテク企業のコンサルタントとして働き始めたころ、「女性をもっと雇用した気持ちはあるが、基準を下げることはできない」という幹部の言葉を聞いて驚いたという。

幹部の言葉は「この業界に入るのに必死に戦わなければならなかった私の経験とは全く逆で、不愉快だった」とヘドルストン氏は言う。

一部で「基準を下げる」と表現されていることは、これまで入社が容易ではなかった集団に対して「入社の障害を取り除く」ことにすぎないと言うのは、通信会社トゥイリオで文化と多様化を担当するラフォーン・デービス氏だ。

トゥイリオには採用候補者を評価するさまざまな手法がある。一部の職種では、面接官の前で問題を解く試験の代わりに、技術的なスキルについて自宅に持ち帰って行う試験を実施している。デービス氏は「異なる面接方法を活用するのは基準を下げることではない」と話す。

不動産を扱う新興企業レッドフィンでは、採用基準に関して議論が起きることはなかった。目標に設定せずとも多様性を実現していたからだ。同社の作業システムを変更して不注意なミスの影響を受けにくいものにしたところ、エンジニアとしての経験が少ない人間でも既にある機能に影響を及ぼさずに作業ができるようになった。その結果、同社はより広い人材から社員を採用できるようになった。

エンジニアリング部門の担当者だったブリジット・フライ氏はグレン・ケルマンCEOに、会社の目標を達成するのに十分な数のエンジニアを採用するにはシステムを変更するしかないと言った。多様性には触れなかった。

もしフライ氏が多様化を理由にしていたら提案を支持するのは難しかっただろうと、ケルマンCEOは話す。多様化と言われても、早急にエンジニアチームを拡大するという目の前の課題と直接関係があるとは思わなかったはずだからだ。ケルマン氏は当時、資金不足にならないか、大手に負けるのではないかという心配で頭がいっぱいだった。

フライ氏――今はレッドフィンの最高技術責任者(CTO)を務める――は事業に関わる問題を解決する方法としてシステムの変更を提案し、ケルマン氏は納得した。しかしシステム変更は多様化の点でも実を結んだ。シアトルにあるオフィスにはかつて女性エンジニアは1人もいなかったが、およそ4年間で33%に増えた。

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