石川佳純と平野美宇が世界最高峰リーグに出場できない理由

石川佳純と平野美宇が世界最高峰リーグに出場できない理由

  • @DIME
  • 更新日:2017/12/07

DIME1月号の大特集「2018トレンド大予測」スポーツ編でも紹介している卓球女子。前回に引き続き、高樹ミナ氏、江橋よしのり氏のスポーツライター2人の対談形式で、日本卓球界の行方を解説する。

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江橋 前回の高樹さんとの対談では、「卓球黄金世代」である「みうみまひな」(伊藤美誠・平野美宇・早田ひな)を中心にお話ししてきました。その上の世代である石川佳純も含めて、日本卓球界は2020年の東京オリンピックに向け「国際競争力」をさらに高めてほしいなと思います。ですが、そう思っていた矢先にですよ、世界最高峰のリーグである「中国超級(スーパー)リーグ」から、日本を含む外国人選手が締め出されるというニュースが降ってきました。

高樹 中国サイドから日本卓球協会に「参戦不可」との通知が来たのは真実です。でも一部報道のように「日本勢をつぶすために締め出した」といった文脈とは、ちょっと事情が違うようです。

江橋 えー、そうなんですか?

高樹 実は背景には、中国国内の2018年のスケジュールが大幅に変わったことがあります。というのも中国には4年に一度、「全中国運動会」という国内最大のスポーツ大会がありまして、中国スポーツ界における位置付けはオリンピックや世界選手権、ワールドカップに匹敵するとか、あるいはそれ以上という人もいるほど非常にステータスの高い大会です。2017年はその開催年でしたので、中国の卓球界も当然、この大会に全力で挑んだわけです。しかしその影響で、例年秋に始まる中国超級リーグの日程がずれ込んでしまい、外国勢受け入れは困難という決断がなされた、とも言われているんです。

江橋 なるほど。中国スポーツ界らしい背景だとは思いますが……。

高樹 日本のマスコミが平野や石川を締め出しているというように報道されたことに対して、中国卓球界はすごく戸惑っていると聞いています。まあ実際、2017年4月のアジア選手権で、平野が中国のトップ3を軒並み撃破して優勝したわけですから、中国側が平野や日本勢を警戒しているのは確かだと思うんです。ただ、理由はそれだけじゃないので、「締め出した」との言い方はちょっと語弊があるかなと私は思います。

江橋 それはそうと、日本勢としては困りましたよね。最高の対戦相手としのぎを削る機会が減ってしまうわけですから。サッカー選手がヨーロッパのクラブと契約できないって言われたようなものですからね。

高樹 それに日本の選手としても、参戦すればしたで中国側に技を研究されてしまうリスクは常に抱えています。それでもやっぱり、行ったほうが実力を伸ばすには良いのかなとは思います。日本国内では対戦相手になかなか恵まれないんですよ。やっぱり平野美宇や石川佳純レベルの選手が20人ぐらいいるならば国内でも十分なんですけれど、今のレベルだとなかなか自分を伸ばすのは難しいですよね。

江橋 国内では対戦相手に恵まれないというのは、他の競技でもよくある話ですね。

高樹 江橋さんが詳しく追っている女子サッカーはどうなんですか?

江橋 日本サッカー協会が「なでしこジャパン海外強化指定選手制度」(日本人選手の海外移籍を経済面でサポートする仕組み)を設けたことは、2011年のW杯優勝に確実に結びついたと思います。一方で、なでしこが世界から注目されるようになってからは、なでしこリーグ事務局が日本国内の各クラブに対し、海外選手との契約をサポートする試みも示しました。しかし、なかなか浸透しなかったですね。「日本から世界へ」という掛け声の一方で、「日本の中に世界を作れ」という発想はよかったと思うんですが、海外のトップ選手の立場からすると、日本への移籍はそれほど魅力的ではなかったのかもしれません。アメリカが新プロリーグを発足させ、「外国リーグに所属する選手は代表に呼ばない」という方針を打ち出したのも、日本にとっては予想外でした。

高樹 新リーグ構想という話ですと、ちょうど卓球も2018年10月に「Tリーグ」をスタートします。

江橋 プロリーグではなく、プロアマ混在となるようですね。

高樹 Tリーグが目指すのは、地域に根ざしたクラブ。自治体と企業が手を携えてチームを運営し、若い世代から選手を育成すること、そして第一線を退いた選手のセカンドキャリアとして指導者の椅子を増やすことを構想しています。

江橋 そういえば卓球の指導者って、足りないんですか?

高樹 街のクラブや卓球スクールは、あることはありますが、世界レベルの選手がどんな環境で育ってきたかというと、圧倒的に親なんですよ。

江橋 ああー。みんなそうですね。

高樹 親が卓球をやっていたから、2歳ぐらいからラケットを握らせているとか。さらに選手として才能を伸ばそうとすると、経済的にも親の負担は相当なものです。でも理想の姿はそうじゃないよね、っていうのがTリーグ構想の柱なんです。親が卓球に関係なくても、みんなクラブで卓球に馴染めるようになれば、企業や地域の協力を得てクラブで卓球に親しむことができるようになれば。そういう土壌から将来のトップ選手を育成していきたいという願いがあるんですよね。しかもそのクラブにはトップ選手も来て練習している。いろんな世代の選手が一緒に練習している。そんな光景をイメージしているといいます。

江橋 どれだけの自治体・企業がリーグ参画に手をあげるか、推移を見守っていきたいですね。

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■高樹ミナ

スポーツライター。2000年シドニー大会以降、夏冬合わせて5度のオリンピック・パラリンピックを現地取材。「2016年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会」メンバーでもある。書籍『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)、『美宇は、みう。——夢を育て自立を促す子育て日記』(平野真理子著/健康ジャーナル社)構成。

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■江橋よしのり

作家・スポーツライター。FIFA(国際サッカー連盟)女子Player of the year投票記者。「なでしこリーグ」中継の解説&実況アナウンサーも。主な著作に『世界一のあきらめない心 なでしこジャパン栄光の奇跡』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも超えられる』(講談社)など。また小説『おはなし猫ピッチャー』(小学館ジュニア文庫)も上梓。

文/編集部

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