2パック、ヒップホップ史を塗り替えた8つの革命

2パック、ヒップホップ史を塗り替えた8つの革命

  • RollingStone
  • 更新日:2016/11/29
No image

2パック、ヒップホップ史を塗り替えた8つの革命

悲劇的な死から20年を経ても衰えない、2パックの計り知れない影響力とは。

1996年9月13日にこの世を去ったトゥパック・シャクールは、20年後の現在でも絶大な影響力を誇るとともに、ヒップホップ界で最も謎めいた存在であり続けている。両極端な性格で知られた2パックのパブリックイメージは様々だ。『キープ・ヤ・ヘッド・アップ』のミュージックビデオでは優しく息子を抱きかかえてみせる一方で、1994年に強姦罪に問われた際にはメディアの前で怒りをあらわにし、カメラに向かって唾を吐きかけた。有名なBETのインタビューでは、感情をむき出しにしながらインタビュアーのエド・ゴードンを論破し、その死からわずか数週間後に公開された『アイ・エイント・マッド・アッチャ』のミュージックビデオでは、まるで自身の運命を予測していたかのように、天国での自分の姿を描いている。

無数の逸話を残してこの世を去った2パックは、現在に至るまで唯一無二の存在であり続けている。ストリートへの愛に満ちたローカルな存在を標榜しながらも、メインストリームでの成功を貪欲に求めるというヒップホップの世界における矛盾を、彼は誰よりも明確に浮き彫りにしてみせた。不条理なまでの気高さ、好戦的な態度、そしてギャングスタイズムといった彼の強情な一面は、人種差別が今なお残るアメリカ社会に生きるブラックアメリカンたちの誇りと共鳴するとともに、黒人同士の争いに対して警笛を鳴らしている。

彼を未だに敵視するイーストコーストラップの信望者たちは、2パックのアルバムがナズの『イルマティック』、ノトーリアス・B.I.G.の『レディ・トゥ・ダイ』、ジェイ・Zの『リーズナブル・ダウト』といったクラシックと並べて語られることに異論を唱える。しかしマッチョな全身を覆ったタトゥーと、スキンヘッドに巻かれたバンダナをトレードマークとする彼が、ヒップホップのあり方を大きく変えたということは紛れもない事実だ。ヒップホップ、そしてポップカルチャーそのものを揺るがした2パックの功績を振り返る。

1.『ジュース』で冷酷な殺人鬼ビショップを演じたシャクールは、映画界へ進出するラッパーたちの先駆けとなった

アイス・キューブがコンプトンのドラッグディーラー、ダウボーイを演じた『ボーイズ・ン・ザ・フッド』で俳優としての評価を確立する前に、2パックは銀幕デビューを果たしている。『ジュース』は1992年1月に劇場公開され、その数ヶ月後には『ニュー・ジャック・シティ』に出演したアイス・Tが注目を集めた。しかしアトランタで過ごした高校時代に演技について学んだシャクールは、俳優として成功を収めた他のどのラッパーよりも自信に満ち、その圧倒的な存在感は今でも変わらない。その後の作品では期待されたほどの成功を収めることはできなかったものの、ビショップを思わせる冷淡なキャラクターを演じたバスケットボール映画『ビート・オブ・ダンク』、ヘロイン中毒のジャズミュージシャンを演じたインディー作品『グリッドロック』等でも、彼は素晴らしい演技を披露している。

2. 犯罪者を侮蔑する「サグ」という言葉にたくましさのイメージを植え付けた

どこか散漫な『2パカリプス・ナウ』と『ストリクトリー・4・マイ・ニガズ』の2作を発表後、シャクールは自身のクルーT.H.U.G. L.I.F.E.(The Hate U Gave Little Infants Fucks Everybodyの略)を発足させた。当時西海岸を席巻していたギャングスタブームに便乗したものだと思われたが、結果的にシャクールはオックスフォード辞書で「暴力的な人物、犯罪者」と定義される「サグ」という言葉に、社会的困難を乗り越えようとするたくましい人物というポジティブなイメージを植え付けてみせた。クリーブランド出身の4人組ボーン・エンタープライズは、1994年末にボーン・サグズン・ハーモニーに改名した。ヤング・サグやスリム・サグといった名前も、2パックの功績なしでは存在しなかったに違いない。

3. 強姦罪に問われたニューヨークでの裁判は、ラップスターが法廷に立たされるというケースの先駆けとなった

1993年に勤務時間外の警察官2名を銃撃した事件をはじめ、トゥパックは過去にも様々な犯罪に関与していたが、1994年にそのイメージを一気に加速させることになった。先述のカメラマンに唾を吐きかけた事件はもちろん、クアッド・スタジオで殺し屋から5発の銃弾を浴びながらも生き延び、収監日に車椅子に乗って出頭した姿はメディアによって大々的に報じられた。ラッパーが犯罪に関与するケースは現在も後を絶たないが、彼ほどメディアを賑わしたアーティストは他にいない。

4. 強姦罪で収監される直前に、ラッパーとして初めて「シャバとのお別れアルバム」を制作した

シャクール収監後の5月に発表された『ミー・アゲインスト・ザ・ワールド』を、彼のディスコグラフィーにおいて最もエモーショナルな作品だとする声は多い。同作には母親のアフェニ・シャクールへの慕情を歌った『ディア・ママ』、自身の罪深い人生に思いを巡らす『ロード・ノウズ』等が収録されている。「自分自身を持て余すんだ / 明日はムショの中か、それとも自由の身か」 と歌う『イット・エイント・イージー』、ヒーローと崇めるラップスターたちへの屈折したトリビュート『オールド・スクール』、そして彼を訴えた女性に対する怒りを爆発させる『アウトロー』など、同作で彼はパーソナルな部分を曝け出した。自責の念、後悔、自殺願望、そして命を尊ぶ思いは、リル・キムの『ネイキッド・トゥルース』、T.I.の『ペーパー・トレイル』、C・マーダーの『ザ・トゥルーエスト・シット・アイヴ・エヴァー・セッド』等、俗に「シャバとのお別れアルバム」と呼ばれる作品のコンセプトを確立した。

5. 絶大な人気を誇りながらも「アメリカで最も危険なレーベル」と呼ばれたデス・ロウと契約し、ヒップホップ史上初の2枚組アルバムを発表した

1996年作『オール・アイズ・オン・ミー』は、ストレートなギャングスタ・チューン、豪華なゲスト陣、そしてキャッチーなサンプリング(一般的なイメージに反し、Gファンクのプロデューサーたちは東海岸のライバルたちと同じくサンプリングを多用した)等によって大ヒットを記録した。合計1000万枚以上を売り上げ、ダイヤモンドディスクに認定された作品を「過小評価」されているとする声には首を傾げたくなるかもしれないが、『アンビションズ・アズ・ア・リーダー』や『ハーツ・オブ・メン』といったリード曲が期待したほどの爆発的ヒットとならなかったことが、アルバムの評価を大きく左右した。しかし同作は、ノトーリアス・B.I.G.の『ライフ・アフター・デス』、ウータン・クランの『ウータン・フォーエバー』、E-40の『ザ・エレメント・オブ・サプライズ』、最近ではジェイ・Zの『ブループリント 2:ザ・ギフト・アンド・ザ・カース』等、現在でこそ一般的となった2枚組ラップアルバムの先駆けとなった。

6. 死後も生存説が絶えなかった

1996年に発表された『ザ・ドン・キラミナティ:ザ・セヴン・デイ・セオリー』は、ラスべガスでの銃撃により死去した2パックの生存説に信憑性を持たせた。500年前に『君主論』を残した政治思想家ニッコロ・マキャベリにならい、2パックが敵の襲撃を交わすためにマキャベリという偽名を使っていたとする説は、ファンの間で広く知られている。『ザ・セヴン・デイ・セオリー』というタイトルは、マキャベリが死んだとして7日間にわたって敵を欺いた事例にちなんでおり、シャクールの死は銃撃から6日後に報じられている。しかし、シャクールがどこかの離島で優雅な隠遁生活を送っているとする説を信じる人はそう多くないだろう。2パックほど死後も無数の伝説を生み出したラッパーは存在しない。

7. 1997年11月初旬に発表された『アー・ユー・スティル・ダウン?(リメンバー・ミー)』で、生前に残された楽曲でアルバムが発表された初のラッパーとなった

パッツィー・クライン、ジョン・コルトレーン、ジミ・ヘンドリックス等が同様の作品を先駆けて残しているものの、ヒップホップの世界においては2パックが初のケースとなった。ノトーリアス・B.I.G.(ボーン・アゲイン)、ビッグ・パン(エンデンジャード・スピーシーズ)、ビッグ・L(ザ・ビッグ・ピクチャー)、そしてJ・ディラ(ジェイ・ステイ・ペイド)まで、早すぎる死を迎えたラッパーたちの生前の作品が世に送り出されるケースは、「トゥパック・エフェクト」が生み出したものだと言っていい。

8. 膨大な量の作品を残した

リル・ウェインがミックステープ『Drought and Dedication 』でインターネットを席巻し、リル・Bが「1000曲作るまではただのアマチュア」と発言するはるか昔に、シャクールがデス・ロウに残した無数の楽曲は世にばら撒かれた。トゥパックの生存説を加速させたブートレグの出処は、彼の作品の権利を巡るアフェニ・シャクールとの訴訟の末に収監されていたシュグ・ナイトだと考えられていた。1998年9月号の表紙で「トゥパックに対するレイプ行為」と非難したRap Pagesは、ヘッドラインをこう飾った「13枚におよぶブートレグのアルバムが流出。出処はデス・ロウか?」その出処がどこであれ、死後に無数の未発表曲が出回ることになったこのケースは、世間が振り向くまでひたすら曲を発表し続けるという、今日のリル・ウェインやグッチ・メインが実践するマーケティング手法の先駆けとなった。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

映画カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
【CES 17】米ファラデーのテスラ対抗EV...ノーズが見えた
異人種間結婚は違法...逮捕された夫婦の実話を映画化!オスカー候補の呼び声高い話題作
『劇場版 艦これ』、京都・名古屋・仙台で追加舞台挨拶が決定
スター・ウォーズ新作イベントに中川翔子らファンも
「ローグ・ワン」G・エドワーズ、くじけそうなときは「スター・ウォーズを観ていた」
  • このエントリーをはてなブックマークに追加