【考察】なぜ『シン・ウルトラマン』にはカラータイマーがない?庵野秀明の“決別”と『シン・ゴジラ』続編説

【考察】なぜ『シン・ウルトラマン』にはカラータイマーがない?庵野秀明の“決別”と『シン・ゴジラ』続編説

  • QJWeb クイックジャパンウェブ
  • 更新日:2022/05/13
No image

『シン・ゴジラ』に続き、樋口真嗣監督・庵野秀明脚本による「好き」を実体化した映画というべき作品が、また誕生してしまった。それが5月13日から公開される『シン・ウルトラマン』だ。

しかし今回のウルトラマンには、胸元にあったカラータイマーがない。それはなぜか? ウルトラ怪獣を1000体以上知る映画ライターのバフィー吉川が理由を考察する。

この記事の写真を見る(全5枚)

初代ウルトラマンの原型にはカラータイマーはなかった

No image

『AERA』2022年5月16日号で表紙を飾るウルトラマン。確かにカラータイマーは見当たらない

特撮オタクの庵野秀明が、ウルトラマンをド直球の「ヒーローもの」として描くとは考えられない。少なくとも今年の3月に公開された映画『ウルトラマントリガー エピソード Z』とは、同じ系統ではない。これは従来のファンではない一般層をウルトラマンのマニアックな世界に巻き込もうとする、つまり庵野のテリトリーに引きずり込もうとしているのではないだろうか。

かつて『ウルトラマン』(1966年)のリメイク作品として公開された、『ULTRAMAN』(2004年)もカラータイマーは付いていなかったが、エナジーコアというそれに代わるものがあった。

ウルトラセブンのように胸の位置に付いていないパターンも一部あったり、ウルトラの母やウルトラマンキングのように「らしいもの」は付いていたり、実は違うパターンなどという変化球はあったものの、ここまで明確にカラータイマーが付いていないデザインは初めてではないだろうか。

なぜカラータイマーがないかに言及するには、そもそもオリジナル版のウルトラマンに、なぜカラータイマーが付いているのかについて触れなくてはならない。

『ウルトラマン』の前作に位置づけられる『ウルトラQ』(1966年)は『アウター・リミッツ』や『トワイライト・ゾーン』などが原型としてあるため、基本的には、人間が怪奇現象に挑むというスタイルの作品であった。そこから派生した作品ということもあり、当初の企画『科学特捜隊ベムラー』ではヒーローというより鳥の怪獣のような姿をしている。

人間の味方の宇宙人(怪獣)が、悪の宇宙人(怪獣)と戦うという設定はそのままに、画家・彫刻家としても知られる成田亨は、ウルトラマンの最終デザインを完成させた。その時点では、カラータイマーはまだ付いていなかった。

その後カラータイマーが付いた理由には諸事情が関係している。

まず、子供たちが視覚的に、ウルトラマンが弱っていることを理解できるようにするため。そして、当時はまだカラーテレビが完全には普及しておらず、白黒でウルトラマンを観ている子供たちのために点滅するものとなったのだ。

デザインの変化に込められた、庵野秀明の特撮愛と遊び心

『シン・ウルトラマン』はカラータイマーだけでなく、中に人が入るためのファスナー部分(背びれ)や、のぞき穴であった黒目もなくなり、より未知の生命体としての存在を強調したデザインとなっている。

つまり『シン・ウルトラマン』にカラータイマーがないのは、中に人間が入ることを想定したデザインに変更しなくてもよくなったことと、映像技術の発展によって視覚的に誰が見ても不都合がない時代になったこと。それにより、成田亨のデザインをそのまま活かすことが可能となった、つまり成田亨に心からのリスペクトを捧げ、それを実現したいと強く願った結果だからだ。

No image

劇場にある『シン・ウルトラマン』のポスター。“背びれ”がないことが確認できる

それと同時に、庵野秀明が特撮ヒーローとしてのウルトラマンが大好きなことも伝わってくるのは間違いなく、予告を観ただけでも、ミニチュア撮影を思わせるカットをわざと入れるなど、庵野流の「遊び」が惜しみなく盛り込まれている。ウルトラマンはCGになったとしても、あくまで特撮作品であることを感じさせる仕上がりだ。

ウルトラマンのデザイン以外にも気になる点がいくつかある。それは今作に禍威獣(カイジュウ)として、ネロンガとガボラが一緒に登場することだ。ネロンガとガボラ(ちなみに『ウルトラマン』においては、もう一匹マグラーがいるが)は、もともと『フランケンシュタイン対地底怪獣』に登場したバラゴンの着ぐるみを改造したもの。

ネロンガとガボラが同じ着ぐるみであることは、特撮ファン界隈においては一般常識のような話ではあるが、裏設定として同種族とされているものもあるだけに、この2体を登場させたたことが偶然とは思えないのだ。

過去の「ウルトラマン」からの決別とリスペクト

過去の「ウルトラマン」からの決別とリスペクト

No image

『シン・ウルトラマン』のビジュアル

考えれば考えるほど、所せましとマニアックなネタが散りばめられている。そこで気になることがある……それは今作が『シン・ゴジラ』の続編ではないかということだ。

実は1966年の『ウルトラマン』においても、1954年の『ゴジラ』に繋がる裏設定が存在している。1967年に出版された『怪獣大全集1:円谷怪獣のひみつ』(ノーベル書房)によると、科学特捜隊のムラマツキャップは、ゴジラの生態研究で知られる山根博士の助手をしていたことになっている。この裏設定があることを庵野が知っていないとは思えないため、直接的ではなくても、感覚的に繋がりをにおわせてくる可能性は高いだろう。

追い打ちをかけるように、米津玄師による主題歌「M八七」も発表となった。これもウルトラマンの故郷として知られる「M78星雲」が企画段階では「M87星雲」であったことに由来しているとしか言いようがない。

つまりカラータイマーを外すという行為は、これまでの『ウルトラマン』シリーズとは決別した別モノである証拠であり、当初の企画通りに諸事情が加わらないかたちで『ウルトラマン』が実現していたとしたら……という、「もしも~」な世界を描いているのだろう。

樋口真嗣と庵野秀明による、特撮マニアの目線での「成田亨のデザインのままに動くウルトラマンが観たい」という、純粋な想いとリスペクトの表れに感じられるのだ。

【関連】『シン・エヴァ』改8号機のハエたたき状装置の正体は…イーロン・マスクと葛城ミサトの共通点?
【関連】圧倒的な物量『庵野秀明展』に思う。文化とは「90%のカス」のほう

関連記事

No image

『シン・エヴァ』改8号機のハエたたき状装置の正体は?イーロン・マスクと葛城ミサトに共通する、経営努力の賜物かもしれない

興行収入102億円を突破して終映となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。碇シンジらエヴァンゲリオンパイロットたちが、人類補完計画を阻止すべく最後の戦いに挑む本作は、早くも、8月13日よりAmazonプライム・ビデオで配信が開始された。作中の細かい描写をじっくり観やすくなった今、アニメと宇宙大好きラ..

MORE

バフィー吉川

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加