「私の荷物はどこに隠したの...?」男の部屋で屈辱を受けた、セカンド女の悲痛な叫び

「私の荷物はどこに隠したの...?」男の部屋で屈辱を受けた、セカンド女の悲痛な叫び

  • 東京カレンダー
  • 更新日:2021/01/20

今日が、何でもない普通の日なら良かったのに……

“記念すべき日”に起きた最悪な出来事は、悲しみや怒りなどあらゆる感情が倍増して

一生忘れることができない思い出として心に刻まれる

この連載では、“記念日”にまつわるストーリーを東京カレンダーのライター陣が1話読み切りでお送りする

▶前回:彼女との約束をすっぽかし、24時間音信不通になった男。インスタで発覚した、彼の驚きの行動

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「最近よくゴハン行ってる子、ユイと同じ名前なんだ」

タバコをくわえ、携帯片手にベランダへ向かうショウちゃんが言う。

胸がヒリつくのと同時に、悲しい未来図が脳内に黒く広がった。

「可愛いの?漢字は?」

布団の中から顔を上げ、一応興味があるフリをしてみせる。

「うん、美人だよ。唯一の唯。そういえば、ユイは何て書くんだっけ」

・・・覚えてないんだ。

「結ぶに、衣服の衣。そんなことより来週末どうする?私の転職祝い。ショウちゃんの家で鍋でもいいよ」

私は、テーブルの上の冷えたデリバリーのピザにタバスコを振りかけ、口に放り込む。

「鍋いいね。でも、まだ予定わかんないな」

大丈夫、傷つかない。

私のために予定を空けない君に、傷つくステージは、とっくに過ぎた。

「いいよ。また連絡して」

服を着て、ベロア生地のシュシュで髪をまとめながら玄関へ向かう。

「帰りまーす。またね」

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外へ出ると、冷たい風が体温を奪い「寒い」と思うのと同時に携帯が鳴った。

『ショウ:気をつけて帰れよ』

・・・やめてよ。

こうやって、中途半端に優しくするから私は勘違いしそうになるんだ。

呼ばれる度に、今日で最後って思うのに、会えると嬉しくて、断ち切れない繰り返し。

"軽い女を演じること"

そうすることで、本気になりそうな自分の気持ちにナイフを刺した。

初めて部屋に行った、秋晴れの日

病棟でのナースの仕事に疲弊して、近所の内科に転職したいと話した、土砂降りの日

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どんなときも優しく抱きとめてくれたショウちゃんの、温かい手を思い出す。

ショウが気に入っている唯は、一体どんな女なのか…

わかってる。

ショウちゃんは好きじゃなくても、女の子を家に上げるし、

好きじゃなくてもキスをして、

好きじゃなくても抱いてしまう。

だけど、求められると嬉しくて、嘘の幸せに浸る時間は、尊くて愛しい。

この感情は、誰にも触れない私だけのものだ。

家へ向かう電車の中で、Instagramを開く。

簡単に見つかった、あの人のアカウント。

こんな女を?と罵りたかったのに、彼女は私が戦うフィールドの遥か上で微笑んでいた。

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女優みたいな顔に、しなやかなのにメリハリのある美しい体。笑顔の奥に潜む、艶かしい色気。

どこをとっても勝負できない。

苦しくて、吐きそうになるのを抑えて、玄関で乱暴にパンプスを脱ぎ、バスルームへ向かう。

本当は、残しておきたいショウちゃんの匂いを、泡と共にシャワーで洗い流した。

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鏡に寸胴な体が映る。

バストは大きいけれど、ウエストがくびれてないせいで、バランスが悪い。

脚は、膝にお肉が乗っていてお尻も平ら。

愛されるわけなど、ない。

急に自分の体に自信がなくなる。

あの人は、自分の裸体にがっかりすることなど、ないのだろう。

昨日の湯を追い焚きしたお風呂に、浸かったりもしないだろうし、

ドラッグストアで売ってる、安いボディクリームなんか使わない。そういう種類の女だ。

『YUI:家着いたよ!』

私が送ったメッセージは、無視されたまま、2週間が経過した。

そして、迎えた職場の最終出勤日。

『YUI:今日、お家行っていい?鍋しようって言ったじゃん』

何事もなかったかのように、LINEをした。

あそこにはまだ、私の花柄のパジャマも、新品で揃えたスキンケアもある。

ショウちゃんから返事が来たのは、彼のマンションへ向かってる最中だった。

『ショウ:わかった。何時に着く?』

高鳴る胸を落ち着かせ、チャイムを鳴らす。

懐かしい顔に、抱きつきたくなるのを堪えた。

いくつもの夜を思い出す部屋の匂いは、大きな瓶のディフューザーと、白い猫が作り出している。

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でもそこに、微かに嗅いだことのない、匂いが混じっていた。

嫌な予感がして、無言で洗面台へ向かい収納棚を開ける。

都合のいい女のままでいいから離れたくない。結衣の想いの行く末

私のものがどこにもない。

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「ねぇ・・・」

私が言い終わる前に、ショウちゃんが答える。

「ユイの荷物、玄関の紙袋にまとめてるから」

「彼女、できたんだ?」

「そう。前話した、唯ちゃん」

言わないで。

その名前は、言わないで。

「家に私を入れたこと知ったら、彼女悲しむんじゃない?」

「いや、知ってるよ」

私を見る、申し訳なさそうなフリをした、うっとしそうな目

「知ってるって・・・どういうこと?」

「てか、唯に言われたんだ。そういう子は、会って話さないと納得しないから、終わらせてきなさいって」

スーパーで買ってきた鶏鍋の材料をドサッと床に置くと、衝撃で卵が2、3個割れた音がした。

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私の心も「パリン」と壊れる。

「荷物、宅配便で送ろうか?」

「っ・・・」

何も言えない。胸が苦しくて、上手く呼吸ができない。

泣かない。

泣かない。

絶対に、泣かない。

そう歯を食いしばっても、ぽたぽたと涙がこぼれる。

「なんで?ずるいよ。私の方が、ずっと彼女になりたかったのに」

「ごめん。もう帰って。その方が、ユイのためにもいいと思う」

キッとショウちゃんを睨み部屋を出ると、廊下で女の人とすれ違った。

この匂い・・・

甘くてスパイシーな、私が知らない香り。

女の人が振り返り、微かに笑った。

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ランニングウェアにポニーテール。すっぴんなのに、信じられないくらい綺麗。

"ユイのためにもいいと思う"

ショウちゃんが言ったその言葉の意味が、今わかった

私に会わせないためだ。

この人からは、自己肯定感の高い人が放つポジティブなオーラを感じた。

それは強く美しく、私を諦めさせ、納得させる。

今、彼女は、心の中で私を馬鹿にしただろう。

でもそれでいい。

この悔しさを糧にして、私は私の人生を誇れるものにしたい。

愛のない世界で生きるのは、とても疲れる。

仕事や男に振り回されず、傷つかない愛のある日々を、今日から始めると誓おう。

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誰のためでもない、自分のために。

▶前回:彼女との約束をすっぽかし、24時間音信不通になった男。インスタで発覚した、彼の驚きの行動

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