【内田雅也の追球】雨を「言い訳」にしなかった阪神・西勇輝 甲子園のマウンドはべとつく米国産黒土

【内田雅也の追球】雨を「言い訳」にしなかった阪神・西勇輝 甲子園のマウンドはべとつく米国産黒土

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  • 更新日:2021/04/07

◇セ・リーグ 阪神6ー2巨人(7回降雨コールド)(2021年4月6日 甲子園)

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<神・巨>5回、マウンドを整備してもらう西勇(撮影・北條 貴史)

甲子園球場の黒土は岡山県日本原、大分県豊後大野市三重町などの土を混ぜている。ただし、マウンドに限り、一昨年から米国産の黒土を入れている。輸入している商品名は「ブラックスティック」。多くの大リーグ球場で使用されている。

投手の間で大リーグのように硬いマウンドへの要望が高まり、導入した。投球時も土がほとんど掘れず、下半身から指先へ力が伝わりやすい。いわゆる地面反力を利用しやすい利点がある。

2019年2月のキャンプ地、沖縄・宜野座で見せてもらい、足で踏ませてもらい、さわらせてもらった。ブルペンのマウンドはカチカチで、さわれば粘りけがあった。

投手たちには好評なのだが、阪神園芸甲子園施設部長・金沢健児によると「散水や雨天の時、水にぬれるとべちゃべちゃする」。粘土質のため、べとつくのだ。

大リーグでは、このブラックスティックに加え「コンディショナー」と呼ばれる粒状の赤土をかぶせて整える。甲子園では黒い島根県産の商品名「ヒートサンド」をまぶしている。これは、今回の話とは別だ。

今季初の甲子園公式戦は雨の中行われた。試合前、午後5時ごろから降り始め、6時のプレーボールからは結構激しく降った。マウンドは相当べとついた。投手にはやっかいで、ボールはすべり、足もとが緩んだ。

阪神が巨人先発アンヘル・サンチェスをKOした打撃は見事だったが、多分に相手投手自滅の側面があった。

2回裏無死一、二塁ではサンチェスのとんでもない暴投で二、三塁を得た。ボールがすべったのだ。直後に梅野隆太郎が先制打した。

続く木浪聖也2ボールの時、タイムをかけ、阪神園芸が土を整備した。この時、ブラックスティックの袋も見えた。黒土を削り、砂を入れていた。試合再開後、木浪が中堅フェンスまで運ぶ犠飛を放った。

梅野も木浪も、ともに、相手が弱みを見せた直後に快打したわけだ、

3回裏。雨にぬれ、サンチェスの集中力は切れていた。死球と3長短打で降板に追い込んだ。

この点、阪神先発の西勇輝は集中力を切らさなかった。ボール交換で新球をもらうと、両手でよくボールをこねた。ステップする左足の勢いや幅を調節していたのではないだろうか。技巧にたけた西ならば、地面反力が弱くなろうとも、制球と配球で整えられるわけだ。監督・矢野燿大が感心した「引き出し」の一つである。

試合成立まで「あと1死」の5回表2死一塁、西は自らタイムをかけ、マウンドに砂を入れた。決して焦らなかった。

明治期、国内最強を誇った旧制一高の投手、守山恒太郎(野球殿堂入り)は「ノー・コンディション」が口癖だったと同僚の君島一郎(同)が『日本野球創世記』(ベースボール・マガジン社)に記している。<コンディションがこうだああだというような自己弁護を許さぬ、つまり「言い訳無用」の意味ととる>。

こうした姿勢は近年、日本人大リーガーの野茂英雄、松井秀喜、上原浩治……らからよく耳にした。つまり天候など自分でコントロールできないことは気にしないという強い姿勢である。

メンタルトレーナー、白石豊は著書『心を鍛える言葉』(日本放送出版協会)に記している。<物事には自分でコントロールできることと、できないことがあります。たとえば、天気、気温、観衆、審判、交通機関の乱れといったことは、自分でコントロールできません。しかし、それに対する自分の反応はコントロールできるはずです>。

自らに厳しい、西の心が垣間見える。7回裏終了後、審判が降雨コールドを宣した時、まだ集中力を切らさずにいた。本当に試合終了で勝ったとわかると、驚いたように喜んだ。笑顔が雨に光っていた。=敬称略=(編集委員)

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