菅義偉新総理が「安泰ではない理由」とヤバすぎる「自民党派閥のエゴ」

菅義偉新総理が「安泰ではない理由」とヤバすぎる「自民党派閥のエゴ」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/09/16
No image

注目された「岸田氏の得票数」

9月14日午後3時20分ごろ、総裁選の得票結果が発表された瞬間、「うおっ!」というどよめきがプレスルームに響き渡った。

注目されたのは岸田文雄政調会長の得票数だ。

各都道府県連が3票ずつ持つ都道府県票では、岸田氏は10票しか獲得できなかった。まるごと3票取れたのは岸田氏の地元の広島県連のみで、宏池会に所属する国会議員が3名もいる静岡県連ですら、1票も獲れなかったのだ。

No image

〔PHOTO〕gettyimages

静岡県は昨年12月に宏池会事務総長として岸田氏を支えてきた望月義夫衆議院議員が亡くなり、4月26日に補選を行ったばかり。9月5日には静岡市内にある望月氏の墓前で、岸田氏は勝利を誓っている。

そればかりではない。故・前尾繁三郎元衆議院議長の地元である京都府連や故・鈴木善幸元首相の地元である岩手県連で岸田氏の得票がゼロなのは、いずれの宏池会会長経験者も鬼籍に入ってしまったからだろうが、前会長である古賀誠氏の福岡県連ですら1票も獲得できず、石破茂氏にすら負けていた。

にもかかわらず、岸田氏は国会議員票を積み増しされたおかげで89票を獲得し、3位の石破氏を21票も上回った。

冒頭で述べたプレスルームでのどよめきは、予想以上の上乗せに記者たちが驚いた結果だ。岸田氏に議員票を回した派閥は、徹底して石破氏を打ちのめしたかったのだ。

期待が打ち砕かれた石破氏

その石破氏は都道府県連票に期待を寄せたが、北海道連や埼玉県連、東京都連などは「総取り方式」を採用したため、石破氏への党員票は反映されなかった。

たとえば同方式を採用した千葉県連では、菅氏への党員票が1万998票で、石破氏と岸田氏の党員票はそれぞれ7059票と834票。数字がはるかに小さい岸田氏の場合はやむをえないとしても、菅氏が得た党員票の7割を獲得しながら、千葉県連の石破票はゼロとされている。

No image

〔PHOTO〕gettyimages

その結果、石破氏の都道府県連票は42票となり、菅氏の89票の半分に満たなかった。

ちなみに安倍晋三首相と石破氏が一騎打ちとなった2018年の総裁選では、石破氏の党員算定票は181票で、安倍首相が獲得した224票の8割を占めていた。

よってこの時は「次の総裁選でチャンスはある」と楽観視が許されたが、半数以下になるとその将来が非常に厳しい。

さすがに総裁選の後、ホテルの玄関で記者から「(敗因はみんなが)勝馬に乗ろうとした結果か」と聞かれた石破氏は、「それが世の中だ。だから変えないと」と力なく答えている。

一方で他の派閥から議員票をもらって2位に上げてもらったものの、岸田氏の将来は石破氏よりさらに暗いと言えるだろう。

総理総裁は党内融和を図るとともに、党の顔として選挙を戦うことになるが、党員の支持すら満足に集められなくて果たして総理総裁が務まるのだろうか。

菅氏が安泰ではない事情

では、今回の総裁選で圧勝した菅氏が安泰かどうかといえば、そうともいえない事情がある。

これまで総理候補と見なされなかった菅氏を二階・麻生・細田・竹下・石原の5つの派閥が担いだのは、第2次安倍政権で官房長官を務めてきた菅氏なら、健康上の理由で突然辞任した安倍首相のレガシーをもっとも受け継げる存在になりえるからだ。

というのも、安倍首相の辞任表明によって内閣支持率は高まった。安倍政権に批判的な朝日新聞ですら、71%が安倍政権を評価するという世論調査の数字がある。

しかしそのブームは長く続くものではない。そして菅政権には次々と難問が立ちはだかるだろう。コロナ禍しかり、経済問題しかり、そして外交問題だ。

菅氏は9月14日の会見で北方領土問題について、「プーチン大統領との間に極めて信頼感がある安倍首相に相談したい」と言及。また「プーチン氏は柔道が大好きで、日本の山下泰裕先生が一緒だと交渉がしやすくなる」とも述べている。

だがそれは外交を甘く見ているのではないか。確かにプーチン大統領は柔道愛好者で、国際柔道連盟の名誉会長を務めているが、自分の趣味を政治に絡めるほど愚かではない。むしろ憲法を改正して最長2036年まで大統領職にとどまれるようにするなど、世界中でもっともしたたかな政治家がプーチン大統領ではないのか。

そもそもそれほど単純にものごとが進むなら、すでに北方領土は返還されているはずだ。現実には安倍政権時に北方領土問題は後退している。

ロシアは今年7月、領土割譲を禁止した条項を憲法に盛り込んだ。さらに「領土保全を侵害する行為」をテロと同等にみなし、刑罰を処する法案を成立させている。

No image

〔PHOTO〕gettyimages

さらなる懸念は、国際社会における日本の存在感が薄れることだ。たとえばG7では安倍首相の任期はドイツのメルケル首相に次いで長く、席順も上位に位置する。しかし首相に就任したばかりの菅氏の席順は最も下位になるはずだ。

また首脳同志は会議間の移動の際に個人的に会話を交わしたりするが、失礼ながら菅氏にそれができるのだろうか。

これについて菅氏は昨年5月に渡米して、ペンス副大統領やポンぺオ国務長官と会談した。外交防衛の局長クラスの官僚ら約40名を引き連れ、総理級の訪米団だったというが、その時に作られた人脈がその後に行かされるなど、大きな成果はあったのか。

もっとも出馬会見などで安倍首相の踏襲しか述べなかった菅氏には、国民が“安倍ロス”でいる間は支持があるだろう。だがそれがなくなってしまった時、自民党は菅氏を「顔」にして選挙を戦うことができるのか。

自民党派閥のエゴ

さて今回の総裁選でまざまざと見えたのは、自民党の派閥のエゴに他ならない。

二階俊博幹事長がいち早く菅支持を表明したのは、求心力を維持するためには幹事長ポストを持ち続ける必要があるからだ。

そういえば二階氏は2017年、総裁任期を「連続2期6年まで」を「連続3期9年まで」に変更することを主導。これにより幹事長ポストを守ったと言われている。

さらに昨年3月には、安倍総裁の4期目への延長の可能性にも言及。そして安倍首相の健康状態を把握すると、いち早く菅氏をポスト安倍に押し上げた。

No image

〔PHOTO〕gettyimages

他の派閥も負けてはいない。9月2日に麻生・細田・竹下の3つの派閥の領袖が異例にも会見を開いて総裁選で菅氏を支持することを表明したが、まるで「俺たちが応援していることを忘れてもらっては困る」と言わんばかりに、菅氏の出馬会見の最中に開かれたのだ。

そして重要なことは、71歳の菅総裁を担ぐのが、81歳の二階幹事長であり、間もなく80歳になる麻生太郎元首相であり、76歳の細田博之元官房長官であり、73歳の竹下亘元総務会長という点だ。なんとなく、日本の近未来を暗示しているように思えるのは、気のせいばかりではないだろう。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加