田舎で「Uターン介護」するために早期退職した50代サラリーマン夫婦の悲劇

田舎で「Uターン介護」するために早期退職した50代サラリーマン夫婦の悲劇

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/06/12
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前編はこちらから→『義母が「トイレで異常行動」…泣きじゃくる妻に、50代サラリーマン夫が取った「意外な行動」』

田舎に住む老親の介護のために、Uターン介護をする人たちが増えている。しかし、よかれとおもって実家に帰ったにもかかわらず、むしろ親からは煙たがれるようなケースも少なくない。

今回紹介するユウイチさん(仮名、50代)もそんな一例。東北地方で実家に一人暮らしする母親(80代)のもとへ妻とともにUターン介護で引っ越したものの、妻と母親が折り合わず……ついに最悪の事態が勃発することになったのです。

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義母と妻が… photo/iStock

箸の置き方から洗濯の仕方まで…

実家に帰省した直後、ユウイチさんの妻は母親の負担を減らしてあげようという一心でいろいろとやってくれていたのですが、むしろそれが母親は気に食わなかったようで、箸の置き方から洗濯の仕方までいちいち文句を言うようになってきたそうです。

しかも、妻の耳にも聞こえるように母親が文句を言うので、ユウイチさんは、「そんな母親に驚いた」と言います。

「『要介護』というからもっと弱っているんだと思っていましたが、僕が考えていた以上に母は元気だったんですね。それに、もともとプライドの高い人でしたが、輪をかけたように勝ち気で、妻と張り合おうとするんですよ」

「要介護1」の母親は、確かに、まだまだ自分でできることは多いと思われます。

一方で、「歳をとった親が頑固になり、怒りっぽくなった」という声を聞くことが少なからずあります。一般的には歳を重ねると「丸くなる」と言われますが、高齢になれば逆にとんがる人が出てくるのもまた事実。特に介護状態になって行動範囲が狭くなるとストレスが溜まってしまい、周囲と張り合ったり、いら立ったりするようになることもあり得ます。

「温水便座コンセント事件」が勃発…!?

近年では「キレやすい高齢者」が問題となることもありますが、ユウイチさんの家でもついに事件が起きてしまったのです。

ある寒い夜、ユウイチさんは、お腹の調子が悪くてトイレに行きました。便座に腰をかけたところ、お尻が冷たくて飛び上がりそうになったそうです。

なぜかと思って確かめてみると、温水便座のコンセントが抜かれていたのです。

どうしてそんなことになっているのかと妻に聞いてみると、なんと母親がコンセントを抜いてしまうとのことでした。

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母がコンセントを… photo/iStock

そこで母親にコンセントを抜かないように話を向けたところ、「電気代がもったいない」と怒り出し、「ここは私の家、ウチにウチのやり方がある」と頑なに主張したそうです。

ユウイチさんにはとっては、「母親のために早期退職してUターンしてあげた」のにという想いが強かったにもかからわず、母親にとっては有難迷惑だったようだと思うととても悲しい気持ちになったといいます。同時に、“自分の家だから、自分流を貫く”のは当然とはいえ、ユウイチさんには許せませんでした。

「誰のために、僕たちは戻ってきたと思ってるんだよ」と怒鳴り、激しい言い争いになってしまいました。

妹の言葉に耳を疑う

ユウイチさんと母親が大ゲンカをした週末、ひょっこりユウイチさんの妹が訪ねてきました。

妹は東京に暮らしており、仕事に育児に忙しいと、母親のことにはあまり関知せず、ユウイチさんがUターン介護をすると決めたときには喜んで賛成していました。

そんな妹が「外で話したい」と言うので、ユウイチさんは駅前のファミレスに連れていきました。そこで妹が話したことは、衝撃でした。

「お母さん、アニキたちに出て行ってほしいと言っているの。息が詰まるって……。もちろん、『何を言うの』って叱ったけど、お母さん、引かないのよ。いったい、何があったの……?」

ユウイチさんは自分の耳を疑いました。

ユウイチさんは、妹の話を妻に打ち明けました。すると妻は、一瞬間を置き、肩を震わせ声をあげて泣き出したそうです。

「僕もそうでしたが、言葉がなくて。ただ、悲しいというか、がっくりきたっていうか……。妻は、結構長い時間、泣いていました。妻には、本当に申し訳ないことをしました」とユウイチさん。

その1週間後、ユウイチさん夫婦は東京に戻りました。

本当に同居が必要なのか

まだ東京のマンションを売却していなかったので、元の生活に戻れたことは不幸中の幸いでした。

「怒涛の2ヵ月間でしたよ。以来、妻は母とは会っていません。僕は、たまに実家に帰省して様子を見に行っていますが、母も僕もあのときのことには触れません。介護保険のサービスを利用して、気楽に暮らしているようですよ。

僕は気持ちが冷めたっていうか、行っても、滞在するのは2時間くらいです。けど、僕のひとり合点だったのかもしれないと反省もしています。同居こそが最大の親孝行だと思っていましたし、母もそれを望んでいると疑わなかった」

こうして、ユウイチさんのUターン介護は、失敗に終わりました。

失敗した最大の要因は、事前の話し合い不足ではないでしょうか。

もともと、母親はユウイチさんのUターンを望んでいたのか疑問です。色んなタイプの親がいて、必ずしも子との同居を希望しているとは限りません。親子とはいえ、ライフスタイルも価値観も異なるのは当たり前で、どちらかに合わせるのは難しいことなのです。

母親にしても、息子や娘が自分のことを気遣って「Uターンするよ」と言い出した時に、「えっ!?」と思っても断りにくいことも想像できます。逆に、子が「こっちにおいでよ」と言ったときに、断り切れずに子の家に移ったものの都会に馴染めず後悔し、涙を流すお年寄りに会ったこともあります。

読者の皆さんは、ユウイチさんのような失敗をしないように、親との同居を検討する場合は、「それは、本当に必要か」をしっかり考えて、じっくり話し合っていただきたいと思います

「ひとり暮らしはかわいそう」は妄想の可能性があります。案外と親が自立的に生きるための「悪くない選択」なのかもしれないのです。

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