
医師がすすめるカラダにイイこと!教えてDr倉田大輔
花粉症、中でもスギ花粉症に悩んでいる方も多いですね。「くしゃみ・鼻水・目のかゆみ」という症状が有名ですが、花粉症は「目:アレルギー性結膜炎、鼻:アレルギー性鼻炎」という局所的な症状だけでなく、皮膚や呼吸器・消化器にも影響を及ぼすことがある全身のアレルギー反応です。
今回は「花粉皮膚炎の概要」と実際に筆者自身が悩んだ実話をご紹介します。
花粉症の諸症状は悪者?
「花粉症」は、花や樹木の花粉がアレルギー源(抗原物質)となり、カラダによる防衛反応(抗原抗体反応)を引き起こします。目鼻症状が知られていますが、これは花粉が目や鼻という外界に接するカラダの場所から侵入し、「異物である花粉を涙・くしゃみ・鼻水で追い出す」防御作用です。

たしかに花粉症の諸症状は筆者たちを悩ませる存在ですが、実は「外敵(花粉)からカラダを健気に守ってくれている、カラダの頑張り」と言えますね。
花粉皮膚炎とは何か??
「花粉皮膚炎」は、目の周り(眼瞼)や顔など露出が多い場所、首など洋服やアクセサリーが擦れやすい部分に発生しやすいです。
蕁麻疹に似て、周りの皮膚との境界がはっきりした「赤み」や「かゆみ」症状、「水ぶくれ」などは作らないという特徴があります。
花粉皮膚炎は春だけに起きるのか?
日本人の約30%程度が悩まされ国民病とも言える「花粉症」は、1970年頃までに行われていたスギの大量植林が原因とされる、スギ花粉症が最も有名です。
「春の季節である2~4月に多く飛ぶ・風に乗って約100kmもの長距離を飛ぶ・土が少ない都市部では地面に着地できず飛散し続ける」スギ花粉による花粉皮膚炎は頻度が高いですが、ヒノキやカモガヤ、ブタクサやヨモギなど秋の植物などでも起こるので季節を問わずご注意下さいね。
ナゼ、花粉皮膚炎は女性に多いのか?
花粉による痒みなど皮膚症状(花粉皮膚炎)は女性に多いという報告結果(2006年に200人対象でアンケート実施)があります。「花粉症」自体は男性・女性問わず起こるのに不思議ですよね。「女性は男性より皮膚のかゆみを感じやすい・鼻や目の花粉症症状が強い女性ほど皮膚のかゆみも強い」とも報告されていますが、男女差が生じる理由ははっきりしません。
筆者はこの男女差について、「化粧と洗顔」2つの可能性の存在を考えています。
1.化粧
花粉やほこりなどが化粧成分に付着し長時間落ちないことで起こる可能性。
2.洗顔
メイクオフ(化粧落とし)を含め女性は男性に比べ洗顔回数が多いでしょう。 ゴシゴシ力いっぱい洗う方が汚れも落ちやすいと考えて強く洗顔する方もいると日常診療の中で感じています。力を入れ過ぎる洗顔はお肌のバリア機能成分や保湿成分も落とすことに繋がります。
化粧やお顔だけでなく、腕や首回りなど露出する部分を洗う時はゴシゴシではなく、できるだけ優しく洗うことは非常に重要です。

筆者を悩ませた「花粉皮膚炎+α」とは?
筆者自身が自ら数年前に体験した「花粉皮膚炎+α」についてご紹介します。
これはあくまでも、医師である筆者の体験談ですので、くれぐれも真似をすることはお勧めしません。
まず、1枚のお写真をご覧下さい。モデルは筆者自身ですが、症例提示用に撮影した訳ではないので、見えにくい点が多いのはご容赦下さい。

著者の目元/著者自身による撮影
『両側の上下のまぶたの赤みと腫れ(浮腫性紅斑)、右目尻の切り傷様』という所見が認められます。一見するとスギ花粉による「花粉皮膚炎」に思えませんか??
この時の状況は
〝秋頃〟に目のかゆみを感じ始める
季節的にはスギ花粉皮膚炎の可能性は低い?
全国や海外出張が多かった
様々な花粉に暴露されている可能性がある
スギ花粉症治療を行っている
アレルギーに対する飲み薬・点眼薬を使用している
アトピー性皮膚炎の既往は無い
アトピー性皮膚炎を患っている方は花粉皮膚炎も悪化しやすい傾向がある
提示した写真は少し改善した時期の写真です。ひどい時は「瞼から浸出液が出て(飲酒後は特に多い)、眼帯を付けたり・ガーゼをアイマスクで固定し睡眠する」状態でした。
「四谷怪談のお岩さんとか目の周りが黒ではなく赤いパンダ」など患者さんはじめ会う人たちには自嘲気味に話していましたが、非常に辛かったのが正直な感想です。
何らかの花粉を原因とする「花粉皮膚炎」だけでなく、様々なアレルギー治療薬(点眼薬や内服薬)が効果を現わさない「花粉皮膚炎+α」という状態が起きていたようです。
この「+α」部分を解決するため本当に苦労しました。
診療や様々な会議に出席することがあり、「発生物質の特定よりも1日も早く症状改善を優先する必要性」から治るのかどうか不安の中焦りだけが出てきました。
まず「症状が目周り(局所症状)に留まるので、一般的な薬のアレルギー(全身症状が多い)の可能性は低いのでは?」と考えました。筆者は最初に「飲んでいた内服薬やサプリメントを一時的にほぼ全て中断や見直し様子を見ること」に取り組みました。
今まで普通に飲んだり食べたりしていた薬や食べ物も製品や製材変更などで添加物などが変更されていることもあるのです。
何かしら症状が出たら全てを疑い中断可能なものは中断する、と考えました。
次に「点眼薬の見直し」です。アレルギー治療用目薬を作用の弱いものから強いものまで複数使用していましたが、「点眼自体ではなく、点眼時にまぶたなど目周りに付着する点眼成分が原因かも?」と疑いました。
点眼回数を可能な限り減らし、目周囲の皮膚への点眼液だれを防ぐ工夫を試みました。
本来はこうした症状が出た時点で皮膚科や眼科などを受診する方が望ましく、みなさんには自己判断での処置対応は決してお勧めしません。
職業柄、自分の症状を自分自身の手で工夫しながら何とか解決したいという想いが筆者にはあったのです。
筆者の身に起きていたことは何だったのか
筆者は春にもスギ花粉症で悩まされていますが、今回の症状が発現した時期は秋であるため、カモガヤ(イネ科)が疑わしいのですが、スギも100%否定することはできません。
『目周りを中心に症状が出る花粉皮膚炎があり、さらに目の痒み対策に点眼薬を使用していた』点がポイントです。
この「+α」の医学的な正式病名は『アレルギー性接触性眼瞼(がんけん)皮膚炎』。
接触性皮膚炎は装飾品などの貴金属アレルギーとして知られていますが、コンタクト洗浄液や目薬(点眼薬)などが目の周りに付着することで眼瞼(まぶた)に炎症が起こることもあります。

筆者はアレルギー治療用の目薬を複数使い、それでも痒くてたまらず目周りを触れ擦ってしまった結果、症状が激しくなってしまった様ですね。
目薬による「アレルギー性接触性皮膚炎」は、抗菌薬・緑内障治療薬だけでなく、アレルギーを治療する薬でも起こり得るから悩ましいのです。
目(黒目や白目)だけに作用する薬剤が、点眼の仕方で誤って皮膚に付いてしまった経験はみなさんもあるのではないでしょうか。
医療機関で処方される目薬だけでなく、市販の目薬でも起こり得ますから、こうした症状が出た際には放置することなく、できるだけ早く眼科や皮膚科を受診(+症状出現に関係し得る使用薬剤を必ず申告)することを筆者自身の経験から〝強く強く〟おススメします。
今回筆者は、「花粉皮膚炎とそれに伴うアレルギー性接触皮膚炎」を悪化させたものの、何とか無事に治し、目の周囲に色素沈着などが残ることもありませんでした。
みなさんの中でも「たかが花粉症だから……」と捉えている方もいらっしゃると思いますが、筆者と同じ轍を踏まないでいただきたいと考え、医師として恥ずかしながら、ここに一連の経緯を記載しました。くれぐれも筆者の真似は禁物です!!
取材・文/倉田大輔(池袋さくらクリニック院長)