菅政権の重大な「誤り」...日本のコロナ対策を遅らせている「保健所縛り」

菅政権の重大な「誤り」...日本のコロナ対策を遅らせている「保健所縛り」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/07/22
No image

新型コロナウイルスの拡大から1年半が経過したが、日本はワクチンの接種率を含め、対策の不備が依然として指摘されることが多い。医師で参議院議員の梅村聡氏は、医療現場の視点から、コロナが「2類相当」の感染症として扱われ、コロナに関する手続きや処理が保健所に縛られている問題点を指摘する。前半はこちら〈ワクチン以外にも解決方法はある…日本のコロナ対策がおかしくなった「最大の元凶」〉

患者が放置されてしまう仕組みが問題

ーーもともと感染症法(旧伝染病法)は120年も前、明治時代に作られた法律だ。

「保健所も本質的には明治時代の仕組みをそのままにして、時空を超えて、いまに至っている。明治時代は感染症が治らない時代だった。性病の梅毒、天然痘、結核…いずれも隔離するしか方法がなかった。

そして保健所は地域の人間に命令して『家から出るな、外に出てまき散らすぐらいなら家の中で死ぬのが皆のためだ』と説いた。その精神が令和の時代の保健所に時空を超えて引き継がれている。

その結果、とりあえず隔離して様子を見ることが最優先された。一方、治療もされずに放置された患者は症状が悪化し、重篤な肺炎になってから入院するため、体外式腹膜人工肺(ECMO)でも助からない事態を招いている」

No image

photo by istock

ーーいまは明治時代ではないのに…。

「天然痘は日本から撲滅され、新型コロナも、外来でも入院しても治療できる時代になっています。ところが、法律の基本的な考え方は明治時代と変わらない。コロナで入院する場合も『治療のための入院』ではなく『隔離のための入院』という法的立て付けになっている。

つまり『あなたの基本的人権を知事が制限して入院させる代わりに、治療費や入院費は国が負担する』という仕組みです。医療が発達していなくて、医療が何もできなかった時代の仕組みでコロナに対応しているわけです」

最初は誰もわからなかった

ーー日本ではかかりつけ医が患者を最初に診察して重症化を防ぐとともに、重症患者の場合は、かかりつけ医が大きな病院に紹介してきた。ところがコロナでは、その体制がほぼ完全に崩壊。指定感染症の適用により、国が「保健所への届け出をすれば、医者の手から離して良い」というお墨付きを与えたこともあり、開業医の約9割は発熱患者を診ない状況が広がってしまった。

「全国に診療所は約10万あり、半分ほどは内科です。本来、診療所はコロナ治療の最前線に立つべきでしたが、コロナが指定感染症に指定されたため保健所の仕切りとなり、診療所はコロナ治療に原則関らなくなりました。

ところが日本の医療機関の8割は民間の診療所や小規模病院です。そこが関わらないのでは、感染爆発が起きれば、早期発見、早期治療ができずに重症患者が増え、結果としてベッド不足が起き、治療を受けられない多数のコロナ難民が生まれることは目に見えていました」

No image

医師で参議院議員の梅村聡氏/筆者撮影

ーーそれで先生は、昨年3月末に日本維新の会の党の中で『コロナを2類相当から外した方がいいのでは』と発言し、国会でも昨年6月と8月の2回、2類相当外しを提案したが『コロナを軽く見ている』と袋叩きにあった…。

「今回のような未知のウイルスの流行は、実際に目にするのは初めてだから最初はどの医師たちもわからなかった。私や長尾先生だって最初はわからなかったが、各種データに加え、オンザジョブトレーニングじゃないですけど、実際に多くのコロナ患者に対応して重症化を防ぎ、亡くならないようにする中で、コロナはかかりつけ医を中心に早期発見、早期治療をしていけば、かなり管理できる病気であることがわかってきた。

ところが保健所縛りによりコロナ患者に接することがほとんどなかった医師には、なかなかそれが実感できなかったし、政治家や官僚、マスコミも理解できなかったのだと思います」

医療と保健所のバランスが大事

ーー至極、真っ当な意見だと思うが…。テレビと新聞がコロナの恐怖を煽り過ぎたため「季節性インフルエンザと同じ扱い」にすることへの不安が国全体にあるのかもしれない。

「私は“新型コロナはインフルエンザと同じで怖がらなくていい”とは一言も言っていません。私は2類だろうが感染症指定が外されようが、当然、これまで通り自分のクリニックの感染予防対策を徹底します。

すでにワクチン接種によりこちらの防御態勢は整っています。私が言いたいのは、患者さんと医療者双方の感染拡大を防ぎつつ、医療の基本である早期発見、早期治療を進めようということなのです。

日本の医療はある程度進んでいるから、公衆衛生(保健所)ではなく、医療が前面に出ていこう。そういうパワーバランスの話をしているのです」

ーー本来なら、開業医を先頭に、発熱患者を奪い合うぐらいの態勢を作るべきだった。

「熱が出ても診てくれないという状況を変えるために、発熱したら、かかりつけの医師がせめて診療時間の一番最初か最後に、1日3人でも5人でも診てくれたらと思う。

そうしたらだいぶ、国民は救われる。感染対策ができないクリニックでもオンラインを使えば発熱患者を診れる。電話でも構わない。日本医師会の中川俊男会長だって、(かかりつけ医に向けて)『病床が逼迫して国民が困っているので、発熱患者をみんなで診察して助けましょう』と言っておれば、ここまで叩かれることはなかったと思います」

菅首相に提言したいこと

ーーそもそもコロナは本来、厚労省が提唱してきた地域包括ケア(医師、看護師、介護士、ケアマネージャー、薬剤師らがチームで行う)で対処すべき病気ではないか。

「地域包括ケアは多職種連携だが、ここに保健所は入っていない。ところが今回は地域包括ケアに入っていない保健所がコロナ対策を仕切ってしまった。その結果、かかりつけ医は発熱患者を診ないか、せいぜいが保健所に届け出て終わりになってしまった。ここは考え直す必要があります。

ワクチンを打って医療者は防御を整えたのだから、まずかかりつけ医が少しずつ、できる範囲で発熱患者を診るようにしてほしい。そしてできれば入院調整も、かかりつけ医が重症化を防いでいる間に、医療従事者同士が保健所を介さずに連絡を取り合ってほしい。

そういうシステムにできれば、同じ検査データでも、この患者はこれから重症化するのか、そうならないかの見分けがつくようになる。そこの見分けがつかないがために、本当は重症化しない人でも、先に入院させてしまって、本格的に重症者が出てきたときにベッドがないと慌てることになる。

ある程度、中長期的に、どの程度の人を病床で診るのかをプロの医師同士で話し合えるようにしてほしい。保健所に任せると『いま空いているからどうぞ』と軽症の人でも先に入院してしまい、ベッドが埋まってしまう。

そうすると重症者が出てもなかなか入院できない。医療従事者同士が話し合うのが地域包括ケア。地域包括ケアには、さらに医療だけでなく、介護も加わる。コロナ患者の8割は軽症もしくは無症状で、自宅療養を求められるのだから、コロナこそ地域包括ケアで対処すべきです」

ーー菅首相に一言。

「今回のオリンピック前の緊急事態宣言の出し方を見てもわかるように、とにかく緊急事態宣言と言っておきさえすれば責任を逃れられる、感染症法の中に収めて保健所が管理しておけば国民に対する義務が果たせていると言い訳できるーーそういう感覚なのだと思いますが、保健所縛りをこれからも続けることは明らかな誤りです」

対応する方法はじゅうぶんある

「その誤りに気づけていないため、感染拡大、緊急事態宣言という負の連鎖に陥っている。誤りを正さなければ、今後も同じことの繰り返しになります。いまでは医療データが集まり、コロナがどのような病気で感染力や重症者率などの解析が進み、ある程度、病気の正体、つまり8割以上が無症状または軽症であることがわかっています。

一方、医療従事者は優先的にワクチンを打ったのでコロナへの防御態勢が整ってきました。マスクの使用や発熱患者と他の患者を分けて診察するなどの感染防御を整え、感染防止に努める一方、季節性のインフルエンザ同様、かかりつけ医も診察して早期発見、早期治療により重症化を防いでいけば、入院ベッド数をやみくもに増やさずとも対応できまるかと思います。

それは多くのコロナ患者を診てきた医療従事者から、よくいただく意見です。そのためには2類相当を外し、保健所が介在しなくても新型コロナ患者に対応できる仕組みにすることが不可欠です。そうしない限り、医療だけでなく経済ももたないのではないか」

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加