森友問題で自殺の赤木さん妻が明かす、責任者がつい漏らした本心

森友問題で自殺の赤木さん妻が明かす、責任者がつい漏らした本心

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  • 更新日:2020/08/01
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学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54)が自殺した問題を巡り、赤木さんの妻雅子さんが、佐川宣寿元国税庁長官と国に約1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が15日、大阪地裁で開かれました。「真実が知りたい」ただその一心で臨んだ雅子さん。第三者による客観公正な調査を求めるものの、安倍首相や麻生財務大臣に応じる気配は全くありません。元全国紙社会部記者で、メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者である新 恭さんが、この口頭弁論の様子を詳細にレポート。文書を改ざんしてまで、責任を免れようとする不誠実な安倍官邸と保身官僚たちの裏を暴いていきます。

財務省森友報告書の責任者が明かした公文書改ざんの真相

公文書改ざんを押しつけられた夫は自殺し、財務省、官邸の関係者たちは、責任をとることなく、のうのうと生きている……

森友学園問題で自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫氏の妻、雅子さんは、7月15日、国と佐川宣寿・元財務省理財局長を訴えた裁判の第1回口頭弁論で陳述し、無念の思いをぶちまけた。

「夫は改ざんしたことを犯罪と受け止め、国民の皆さんに死んでお詫びすることにしたんだと思います。安倍首相は自分の発言と改ざんには関係があることを認め、真相解明に協力して欲しい。安倍首相、麻生大臣、私は真実が知りたいです」

いまだに明らかになっていない真相。国はすべてを知っているはずなのに、核心部分をぼかし、2018年6月4日「決裁文書改ざん調査報告書」なる財務省の内部調査結果を公表して、お茶を濁した。

報告書をまとめた責任者は、当時の財務省秘書課長、伊東豊氏(金融庁監督局審議官)だ。省内の職員や官邸出向組のほか、OBも含めてヒアリングをしており、事実関係を最も知り得る立場にあった。

赤木雅子さんは、裁判開始と時期を合わせて出版した「私は真実が知りたい」(相澤冬樹・元NHK記者との共著)において、伊東氏から直接聞いた証言を公開している。調査報告書では安倍首相の国会発言と文書改ざんの関係を明確にしていないが、雅子さんに対しては本心を漏らしていたのだ。

その内容にふれる前に、報告書ではどのように書かれていたかを確認しておこう。以下は、そのポイントとなる部分だ。

◇17年2月17日の衆議院予算委員会で内閣総理大臣から、本人や妻がこの国有地払い下げに一切関わっていないことは明確にしたい旨の答弁があった。

◇17年2月24日の衆院予算委員会で、本省理財局長は「売買契約に至るまでの近畿財務局と森友学園との交渉記録というのはございませんでした」「面会等の記録につきましては残っていないということでございます」と答弁した。

◇本省理財局の総務課長から国有財産審理室長および近畿財務局の管財部長に対し、総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた。…理財局長はそうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した。具体的な指示はなかったものの、総務課長と国有財産審理室長は決裁文書の公表を求められる場合に備えて記載を直す必要があると認識した。

つまりこういうことだろう。「妻と私が関係していたら議員も総理もやめる」という安倍首相発言のあと、近畿財務局と森友学園との交渉記録などを野党に求められた佐川局長は「記録は一切残っていない」と答弁した。

総理夫人の名が記された書類があるかどうか確認したら、あることが判明した。佐川局長は「記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきである」と省内で語り、それを聞いた総務課長らは決裁文書の書き換えが必要だと認識した。

この報告書にカラクリがあるのは言うまでもない。安倍首相発言を佐川局長がどのように受けとめたのか。佐川局長の「記録はない」という国会答弁や、理財局の部下たちへの「記載のある文書を外に出すべきではない」発言は、安倍首相への忖度によるものか、それとも官邸から働きかけがあったのか。佐川局長は総務課長らに文書の書き換えを具体的には指示していないというが、指示していないのなら、「具体的には」は不要だろう。肝心なところが省かれたり、ボカされたりしている。

むろん、これで雅子さんが納得できるわけがない。著書「私は真実が知りたい」に、伊東氏が2018年10月28日、調査報告書について説明するため赤木さん宅を訪れたときの会話内容が書かれている。雅子さんがICレコーダーで録音していたものだ。雅子さんが、安倍首相の発言が文書改ざんに関係があるのかどうかを問いただすと、伊東氏はこう話した。

「国会が、まぁある意味延長したのは、あの発言があったから。野党は安倍さんの首を取りたくて…あれでまぁ炎上してしまって。で、理財局に対するいろんな野党の『あれ出せ、これ出せ』っていうのもですね、ワーって増えているので、そういう意味では関係があったとは思います。炎上しなければ別にそんなに、何か無理しなくても…」

安倍首相の国会発言があって、野党が財務省に資料を出すよう激しく騒ぎ立てた。佐川局長はひとまず「ない」と突っぱねたが、昭恵夫人の関与をうかがわせる記載があるなら、無理にでも書き換えさせておかねば、と考えた。そういう意味で、首相発言と文書改ざんは関係があったということなのだろう。

首相発言を受けて財務省理財局が改ざんに動いたというのは、もはや世間一般の見方ではあるが、この伊東発言によって初めて裏付けられたと言っていいのではないか。

だが、関係があることはわかったにせよ、どのように首相発言から改ざんに至ったのか具体的な経緯がいま一つはっきりしないのも確かだ。

首相発言のあとの一連の流れ。佐川氏が「記録はない」と答弁し、本省の指示で近畿財務局が改ざん作業を進める。これが、「阿吽の呼吸」や「忖度」のたぐいで、黙々と進められるようなことが果たしてありうるだろうか。

17年2月17日の衆院予算委員会。安倍首相の発言を聞いた佐川氏は驚愕したに違いない。佐川氏は鑑定価格9億円余の国有地を8億円以上値引きして森友学園に売却した件で、野党の質問攻勢を受け、国会対応に苦慮していた。そこに、「関係していたら辞める」と首相が言い放ったのである。野党の追及がさらに強まるのは火を見るよりも明らかだった。

たまたまこの日は首相発言に関する佐川氏への質問はなかったが、今後の国会対応を思うと、ほっとしているヒマはない。佐川氏は、すぐに部下に安倍首相夫妻の関与をうかがわせる文書があるかどうか、調べさせたのではないか。もし、そんな文書が流出したら大騒ぎになり、理財局長としての自分の立場も危うくなる。

案の定、不都合な文書があった。近畿財務局が作成した決裁文書だが、当然、本省も共有している。

◇平成26年4月28日 (森友学園との)打ち合わせの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」との発言あり。

これはマズイ、と佐川局長は思ったはずだ。同年2月24日の衆院予算委では、「交渉記録あるいは面会記録、全て残っておりますね」と共産党の宮本岳志議員から質問され、「交渉記録というのはございませんでした」と答弁してその場をしのいだ。「ある」と答えたら「出せ」と言われる。「ない」で通せればいいが、昭恵夫人の記載箇所をそのまま残しておくのは不安だっただろう。

とはいえ、公文書改ざんが佐川氏の独断だったというのは、いささか早計である。総理の不用意な発言をカバーするため、順調に出世してきた幹部官僚が自発的に違法行為を指示するとは思えない。

おそらく、不都合な決裁文書の存在を確認するや、佐川氏は当時の政務担当総理秘書官、今井尚哉氏(現・首相補佐官)に知らせ、取り扱いについて判断を仰いだのではないかと、筆者は疑っている。

今井氏は総理夫人付きの職員を通して昭恵夫人をサポートする立場だった。影の首相とまでいわれる凄腕の秘書官だ。首相に不利になる文書があると聞いたら、改ざんしろとは言わないまでも、「何とかしろ」と迫ったに違いない。そうなると、佐川局長は逆らえない。上昇志向の強い典型的高級官僚のサガである。

文書改ざんの指示は、理財局国有財産審理室の杉田補佐から近畿財務局に伝えられた。赤木俊夫氏が書き残した「手記」に以下の記述がある。

◇元は、すべて、佐川理財局長の指示です。局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。…杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えしました。

近畿財務局で杉田氏から修正指示を受けたのは池田靖統括官である。池田統括官は森友学園に国有地を売却したさい、交渉の責任者だった。赤木氏は交渉当時は他の部門にいて、いきさつを知る立場にはなかったが、その後、異動して池田統括官の部下になっていた。

池田氏は改ざんの作業をほとんど赤木氏に押しつけたとみられる。赤木氏は抵抗したが、近畿財務局長はゴーサインを出した。「手記」に、ありありとその様子がうかがえる。

◇楠管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから楠部長に直接電話があり、美並近畿財務局長に報告…美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと楠部長から聞きました。…本省からの出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と、調書の修正を悪いこととも思わず…杉田補佐の指示に従い…

赤木氏の苦悩を見続けた雅子さんは、率直な思いをありのまま「私は真実が知りたい」に書き綴った。

◇トッちゃんは、自分が罪に問われることを恐れていた。ことあるごとに「大変なことをさせられた」「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」「最後は下っ端が責任を取らされる」「ぼくは検察に狙われている」とおびえていたことを、よく覚えてる。

2018年3月2日、朝日新聞が「森友文書 書き換えの疑い」とスクープ記事を掲載。スマホでこの記事を見た雅子さんは「この人のやらされたこと、これだったんや」とすぐわかった、という。

3月7日、赤木俊夫さんは「雅子へ これまで本当にありがとう ゴメンなさい 恐いよ、心身ともに滅いりました」との遺書を残し、自宅で首をつって亡くなった。若い二人の部下には改ざんを手伝わせず、一人で背負いこみ、苦し
みぬいた末の死だった。

雅子さんから見れば、俊夫さん一人を犠牲にして、財務省と近畿財務局は組織を守ることに汲々としてきた。上司たちが次々と弔問に訪れたが、遺書を雅子さんが世間に公開するのを心配したり、メディアを避けるべきというアドバイスをするばかりで、真実は何一つ語られなかった。

なぜ夫は死ななければならなかったのか。雅子さんは、財務省の内部調査ではなく、第三者による客観公正な調査を求めているが、安倍首相や麻生財務大臣に応じる気配は全くない。

だからこそ、政官の巨大権力に押しつぶされそうになりながらも、真相解明を求める35万人の賛同者に励まされ、雅子さんは勇気をふりしぼって、大阪地裁に損害賠償請求訴訟を提起したのだ。

冷淡で不誠実な安倍官邸と保身官僚たち。正しくありたいと願う一人の職員が自ら死を選んだというのに、素知らぬ顔でウソをつき、文書を改ざんしてまで、責任を免れようとする。権力の堕落は目を覆うばかりだ。

image by:安倍晋三公式Facebook

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新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』

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