池江奇跡Vに大ハシャギの五輪関係者、2日後の奈落

池江奇跡Vに大ハシャギの五輪関係者、2日後の奈落

  • JBpress
  • 更新日:2021/04/08
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4月3日から開催されている競泳日本選手権で、100mバタフライで優勝し、東京五輪400mメドレーリレーの出場を決めた池江璃花子は、7日には100m自由形でも決勝進出を果たした(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

またしても不穏な空気が漂い始めている。東京五輪・パラリンピックの開催だ。開会式まで残り3カ月強と差し迫っているにもかかわらず、大会開催へのムードは盛り上がらない。

それもそのはずだ。先月25日に聖火リレーがスタート。ところが参加を予定していた著名人らが次々と辞退するなど、出てくる話題はマイナス要素ばかりである。

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大阪府、公道での聖火リレーを中止に

さらには「第4波」とみられる新型コロナウイルスの感染再拡大が始まり、医療非常事態宣言を発出した大阪府は7日に府全域における公道での聖火リレーの中止を決めた。それでも東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は同日のリモート会見で大阪府側から代替案として一般観客を入れずに万博記念公園内で聖火リレーを行う要望があったことを明かし、詳細についても今後煮詰めていくという。

しかしながら、その代替案も2日間で約200人もの聖火ランナーが万博記念公園の敷地内を走る見込みとされていることを考えれば、必ずしも「安全」とは言い難い。

大阪府を筆頭に日本全国で変異株が猛威をふるう「第4波」が広がりつつある中、なぜ聖火リレーを強行しなければならないのか。誰もが首をかしげる疑問に関して武藤事務総長は「全国に聖火リレーが訪れていき、東京大会ながらも日本全体の五輪を示す重要なこと。児童・生徒にも五輪を実感して感じていただく大事なものと思う」と述べた。

どちらかと言えば感情論もしくは精神論に重点を置く回答に終始し、感染再拡大の危険が迫っている現状には特に触れず、聖火リレー継続の安全性に納得のいくような言葉は残念なことに最後まで聞かれなかった。

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3月25日、福島県のJヴィレッジからスタートした聖火リレー。第一走者となったのは2011年サッカー女子W杯で優勝を果たした「なでしこジャパン」のメンバー。トーチを持った岩清水梓を中心に丸山桂里奈などが参加した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

池江の「奇跡の復活」を利用したがる人々の“嫌な感じ”

ここ最近、組織委や五輪関係者の間には異様なほどの焦燥感が漂っているのではないか――。この武藤事務総長の会見を聞いたメディア関係者、そして組織委周辺からもこうした指摘が溢れ出て止まらない。

つい先日もその焦りが生み出す、非常にみっともない内情を耳にした。

競泳の東京五輪代表選考会を兼ねる日本選手権第2日(4日・東京アクアティクスセンター)で、白血病からの完全復活を目指す池江璃花子が女子100メートルバタフライを57秒77で優勝。400メートルメドレーリレーの派遣標準記録を突破して東京五輪出場を決めた。

日本中に勇気と感動を与えた奇跡の復活劇には誰もが心の底から称賛と拍手を送ったはずである。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大と「森前会長辞任」「開会式ブタ演出案」など組織委の度重なる不祥事ぼっ発で世間から開催反対のムードが一向に沈静化しない中、五輪関係者の間で「池江の五輪出場権獲得を支持率回復の起爆剤にしようとする動きが出ている」という話を聞いた時には開いた口が塞がらなかった。

組織委内部で“開催強硬派”と目される人物は池江が五輪出場権を勝ち取った直後、競泳日本選手権が行われた会場で複数のメディア関係者に鼻息を荒げながら次のような本音をポロリと漏らしている。

「我々としては五輪の主役であるアスリートが脚光を浴びてくれれば、この逆風は間違いなく乗り越えられると前から考えていた。そのタイミングで見事に優勝してくれたのが、池江選手。大病を克服し、代表権獲得でミラクルを成し遂げた池江選手の涙に共感しない国民などいるはずがない。彼女が東京五輪のヒロインになってくれれば、もう開催に文句を言う声など自然に収まっていくはず。池江選手にはいい意味で広告塔になってもらい、今後は東京五輪開催の救世主としても思う存分奮闘してほしいと考えていますよ」

組織委、そして日本オリンピック委員会(JOC)の中からも「池江さんの優勝に『これで東京五輪は救われた』と思わず万歳三唱する関係者が数多くいたほど」「早速、広告代理店や複数クライアントと連動して池江のCM起用プランを急ピッチで始動させ、彼女の人気を爆発させて東京五輪への風向きを一気に変えてしまおうと画策する声も出た」などと大ハシャギする様子が複数の関係者を通じて伝わって来ている。政府関係者や五輪開催に前のめりになる政治家からも池江の優勝をSNSでことさら強調するように大喜びするコメントも散見された。

こうした一連の動きに対し“いやらしさ”を感じるのは多くの人も同じ思いではないか。

池江のミラクルを素直に喜ぶだけならいいが、彼女の注目度と人気を東京五輪開催の起爆剤として利用しようという姑息な考えにはまったく同意できないし、強烈な違和感を覚える。逆に言えば、池江人気に頼らざるを得ないところにやはり組織委や大会関係者の中に強い焦りがあるのだろう。

国際水連が五輪関係者に冷や水

ところが、そんな大ハシャギも束の間、僅か2日後に組織委や大会関係者を再び奈落に陥れる衝撃の知らせが国際水泳連盟(FINA)からもたらされることになる。6日になって東京五輪最終予選兼テストイベントと位置付けられている「飛び込みW杯」(18~23日、東京)、「アーティスティックスイミング予選大会」(5月1~4日、東京)、「マラソンスイミング予選大会」(5月29~30日、福岡)の3大会が中止となることをFINAが正式発表したのである。

実を言えばFINAは日本政府に対し、4月に入ってから「大会の成功および公平な運営を保証するための必要な措置を取らなかった」との内容が記された文書を送付済みで猛批判を展開していた。同様の内容を各国水泳連盟にも通達しており、すでに3大会が中止となる可能性が高いことは前段階である程度予想されていたとはいえ、この日の正式発表を伝え聞いた日本水泳連盟(JASF)や五輪関係者の面々にはあらためて落胆の色が濃くなっている。

「どうやら日本側が3大会開催におけるコロナ対策の費用負担をFINAに求めたことで、FINAの反発を招いたようだ。ただ、この東京五輪のプレ大会ともいえる3大会の開催中止はかなり致命的。しかもFINAが各国の水泳連盟にも送付した文書によって『日本はコロナ対策への真剣度が著しく欠けている』と世界の多くの国から印象付けられてしまう危険性もある。これは極めて由々しき事態だ。

悪いことは重なるもので奇しくもFINAが3大会中止を発表した同日、北朝鮮が世界に先駆けて東京五輪出場を取りやめると発表した。これは日本政府、組織委員会や大会関係者にとって、寝耳に水で想定外の出来事と断じていい。コロナから自国選手団を守るというのが北朝鮮の不参加を決めた理由だが、東京五輪に参加すれば罹患するかもしれないというリスクはどこの国にもある共通事項。それだけにいくら孤立した国家の決断とはいえ、他国も追随する可能性は十分ある。

日本の大会関係者や組織委員会の面々は池江の優勝を“政治絡み”で必要以上に盛り上げようとしているが、大会開催の基盤となる肝心のコロナ対策は『第4波襲来』に備えたアップデートができておらず、これまで進められていたはずの具体性すら形がまるで見えてこないのが現状。これでは世界からバカにされるのも当たり前の話だ」(事情通)

海外からの一般観客受け入れは断念したものの、現状では予定通りに開催される東京五輪。しかし相変わらず歯車は噛み合わないままで7月23日の開幕式へ向け、池江の五輪出場を好機としつつ無理矢理に突っ走り続けている感はどうしても拭えない。

臼北 信行

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