再び“連邦議会襲撃”か、中間選挙後に米国内の争乱必至

再び“連邦議会襲撃”か、中間選挙後に米国内の争乱必至

  • JBpress
  • 更新日:2022/09/23
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2021年1月6日、支持者に対して連邦議会へ行進するよう指示した疑いがもたれているトランプ氏の演説(写真:ロイター/アフロ)

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「真っ赤な嘘」と「紛れもない真実」

おどろおどろしい内容の本が2冊、相次いで出た。

The Divider:Trump in the White House, 2017-2021」(分裂の元凶:2017年から2021年、ホワイトハウスのトランプ)

著者はニューヨーク・タイムズのホワイトハウス詰め記者、ピーター・ベイカー氏とニューヨーカー誌記者のスーザン・グラッサー氏。ご夫婦だ。

The Big Truth:Upholding Democracy in the Age of the Big Lie」(紛れもない真実:真っ赤な嘘の時代に民主主義を擁護する)

著者はCBSワシントン駐在記者のメージャー・ギャレット記者と選挙法専門家のデイビッド・ベッカー氏。ギャレット氏はフォックス・ニュースでも働いたことがある。

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The Divider:Trump in the White House, 2017-2021

ともに主流メディアの第一線で活躍する政治ジャーナリストだ。

ドナルド・トランプ前大統領の4年間の政治をホワイトハウスの中枢で得た未公開の情報を基に真相に迫っている。

それでなくとも、トランプ氏が4年間にやってきた政治にまつわる新事実は連日のように出ている。

トランプ・スキャンダルは、国家機密文書秘匿容疑で家宅捜査を受けたことで8月にピークに達した感があるのだが、どっこい、まだ終わりそうにない。

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The Big Truth: Upholding Democracy in the Age of “The Big Lie”

良識ある米国民は辟易している。

半面、2020年の米大統領選挙で勝ったのはトランプ氏と信じて疑わない同氏とその熱狂的な支持者(「MAGA」族=Make America Great Again )は、ジョー・バイデン氏の民主党主導で進む対トランプ追及はすべて「Big Lie」(真っ赤な嘘)と主張、矛を収める気配はない。

新著2冊がこれまで出たトランプ本と異なるのは、6週間後に迫った中間選挙後に何が起こるのかを予見している点だ。

さらに一歩進んで、数々の不正容疑(特に機密文書秘匿や米議会襲撃事件教唆にからむ重罪容疑)をめぐってバイデン司法省が訴追した時、来年以降、何が起こるかについて予想している点だ。

国家分裂の元凶はトランプ

「The Divider」の共著者、ベイカー氏らは、米国が2020年の大統領選以降、真二つに分裂してしまった元凶はトランプ氏にあると断罪する。

米民主主義の根幹である選挙の結果を認めないどころか、支持者を扇動して大統領当選者を副大統領が形式的認定する手続きを阻止する目的で米議事堂に不法に乱入させたトランプ氏の行為こそが、その後の米国内における「冷たい内戦」(Cold Civil War)を招いたというわけだ。

「トランプ氏を熱烈に支持するMAGA族はまさにユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)を切望し続けている。それがトランプという存在だった」

「そしてトランプ氏もシーザーになりたかった」

「国内においては、米国憲法に基づく民主主義の理念に逆らい、ぶち壊した。海外に目を向けると、ロシアのウラジーミル・プ-チン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩国家主席を敬慕した」

「民主主義の理念をぶち壊している以上、中間選挙で自分たちの支持する共和党候補者が当選しない場合、選挙結果を尊重することはない」

「ましてや、トランプ氏が訴追されるようなことがあれば、何をしでかすか分からない」

「The Big Truth」の共著者はこう書いている。

「これまでのどんな大統領選挙であれ、選挙後は勝者を自分たちの大統領として認める超党派の動きが生じた」

「だが2020年はそうならなかった。あれから2年が経とうとしている今現在、トランプ氏は自分が勝ったと言って引かず、それに付き従う一部国民がおり、この国は内戦状態に置かれている」

「フィアデルフィア在住の男性高校教師(50)はこう話す。『独立戦争前は別にして、今、米国は容易ならざる状況に置かれている。断崖絶壁に向かって突っ走っている。収拾がつかないところまで来ている。何が起こるか本当に憂慮している』」

「こうした声を取材しているといたるところで聞いた。2021年1月6日の米議会襲撃事件を頂点に、反民主主義活動は収まるどころか、まるで退路が断たれたかのように広がっている。トランプ氏がその先頭に立っている」

「トランプ氏は、議会襲撃を正当化し、中間選挙で共和党に勝利をもたらすことにより、20年大統領選での自らの勝利の証にしようとしている」

「中間選挙の最悪のシナリオは、トランプ共和党が負けた時だ。トランプ一派がどう出るか」

https://www.thedailybeast.com/cbs-star-reporter-major-garrett-fears-were-on-the-brink-of-civil-war

予備選勝ち抜いたトランプ派候補は36%

9月末までに民主、共和両党の予備選は終了した。

トランプ前大統領が推薦した26州での上下両院選候補者の予備選の勝敗は、9月末現在で21勝5敗となった。

共和党の上下両院議員予備選には552人が当選したが、トランプ支持強硬派は201人で36%を占めている。

一方、24州で行われた州知事、州務長官、司法長官など地方自治体の共和党予備選でトランプ氏が推薦した候補者3人に1人が当選、本選挙に駒を進めた。

今年の春頃には、上下両院ともに共和党有利と見られていたが、8月以降、下院はともかく上院では民主党が勝つのではないかといった予想が出てきた。

NBCの世論調査では、「議会は民主、共和どちらが多数派になるべきか」との問いに対し、結果は46%対46%で互角。

経済、治安、不法移民対策では共和党を支持するものの、人工中絶や健康保険問題では民主党の政策を支持する人が多い。

特に人工中絶違憲の最高裁判決には61%が反対している。

ガソリン価格を筆頭に物価が下がる傾向を見せ始めたため、バイデン氏の支持率が上向きになったのに対し、機密文書秘匿などでトランプ氏の支持率が34%と、退任後最低になったことも世論の動向に反映されている。

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/3648456-voters-split-on-which-party-should-control-congress-poll/

https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-09-18/biden-s-approval-hits-45-in-nbc-poll-showing-gain-for-democrats

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/3648507-trumps-favorability-rating-drops-to-new-low-poll/

負ければ選挙結果を認めない!

上院選で接戦となりそうなのは、アリゾナ、フロリダ、カンザス、ミシガン、ニューハンプシャー、ノースカロライナ、ペンシルベニア、テキサスなど19州。

ワシントン・ポストは、予備選を勝ち抜いた共和党候補19人に「選挙結果がどうであれ、それを尊重するか」を質した。

結果は「尊重する」と答えたのは7人、残り12人は「尊重しない」あるいは「回答を拒否する」と答えていた。

民主党候補は17人が「尊重する」、2人が「回答を拒否する」だった。

https://www.washingtonpost.com/politics/2022/09/19/meet-republicans-who-might-not-accept-defeat-november/

中間選挙で共和党が負けるようなことになれば、共和党の多くの議員が結果を不満として、2020年の大統領選の時と同じように選挙の「無効」を言い出す可能性がある。

前出の新著の著者たちが予想しているように、これに呼応して共和党支持者が全米各地で反対集会やデモをするのは必至だ。

特にトランプ支持の過激派組織「QAnon」が反対集会・デモを暴力化させることは十分あり得る。

現に米連邦捜査局(FBI)は、「QAnonが民主党主導の政治に反発し、暴力行為に出る公算大だ」と警告してきただけに、中間選挙後の動向が懸念される。

https://www.nytimes.com/2021/06/15/us/politics/qanon-fbi-violence.html

「反乱法」で空挺師団出動命令も

中間選挙後の不穏な事態よりもっと深刻な問題がある。トランプ氏が訴追された場合だ。

トランプ氏の弁護団は、FBIが押収した機密文書の精査に第三者の「弁護団は「特別管理者」(スペシャル・マスター)の介在を要求、米連邦フロリダ地裁裁判長はこれを認めるなど、9月に入って反転攻勢が功を奏している。

だが「しょせん時間稼ぎに過ぎない」(米司法省関係筋)。

中間選挙まで60日を切ったため、11月8日以前にトランプ氏が訴追されることはなくなったが、11月8日以降、年内から年明け、いつメリック・ガーランド司法長官が訴追を命じても法的にはおかしくない。

(バイデン氏が大統領経験者であるトランプ氏の訴追をやめさせる大統領令でも出せば、別だ)

トランプ氏もむろん訴追されることに怯えている。

同氏は9月15日、保守系ラジオとのインタビューでこう予防線を張った(というよりも「先制攻撃」(Preemptive Attack)を仕掛けたといったほうがいいかもしれない)。

「もし私が訴追されたら、この国は今まで経験したことのないような大きな諸問題(Big Problems)を抱えるだろう。米国民は誰一人としてそんなことになるのを望んでいないと思う。

「脅かすつもりはないが、むろん米国民はそんなことは支持しないだろう。これはあくまでも私の個人的見解だが」

https://www.washingtonpost.com/politics/2022/09/15/trump-justice-department-investigation-fbi-search/

トランプ氏の腹心、リンゼイ・グラハム上院議員(共和、サウスカロライナ州選出)は、「諸問題」の中身について8月、こう述べていた。

「トランプ氏が訴追されたら、暴動が起こるだろう」

トランプ氏の発言を受けて、民主党のリチャード・ダービン上院司法委員長(前上院院内幹事、イリノイ州選出)は直ちにこうコメントした。

「実に危険なレトリックと言わざるを得ない。2021年の米議会襲撃と同じような暴力沙汰をやるよう扇動する発言だ」

万一、トランプ支持派の過激分子が一斉蜂起した場合、バイデン氏はどうするか。

米国には「反乱法」*1がある。

同法に基づき、出動する軍隊は米陸軍第101空挺師団(1万8000人)だ。ケンタッキー州フォート・キャンベルに駐屯する。

*1=「反乱法」は、大統領が州の状況について連邦法の執行が不可能と判断した場合や、市民の権利が脅かされているとみなした場合、州知事の承認は不要だと定めている。この法律は1807年に制定された。大統領に対し、「ネイティブ・アメリカンの敵対的襲撃」への防御として、国民軍の出動命令を認めるものだった。

その後、国内の騒乱対応や市民権を守る目的でも連邦軍を活用できるよう、権限が拡大された。

https://today.tamu.edu/2020/06/05/can-the-president-really-order-troops-into-us-cities/

https://en.wikipedia.org/wiki/Insurrection_Act_of_1807#:~:text=The%20Insurrection%20Act%20of%201807,disorder%2C%20insurrection%2C%20or%20rebellion

皮肉なことに、トランプ氏は大統領当時、2020年5月から6月にかけてミミネソタ州ミネアポリスで起こった暴動*2の際に「反乱法」を適用して第101空挺師団を出動させようとした。

結局、出動命令は出さなかった。

*2=黒人のジョージ・フロイド氏が警官に射殺された事件を受けて、市民による抗議の余波からデモ隊が暴徒化した。建物破棄、放火、略奪など被害総額は5億ドル。逮捕者は604人。

https://en.wikipedia.org/wiki/George_Floyd_protests_in_Minneapolis%E2%80%93Saint_Paul

やや先走りしすぎたが、今回ご紹介したおどろおどろしい2冊の本は、サスペンス・ドラマではないことだけはお断りしておきたい。

高濱 賛

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