グローバルダイニングの時短営業訴訟。飲食業界の本音は

グローバルダイニングの時短営業訴訟。飲食業界の本音は

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2021/04/07

◆東京都を相手に訴訟を起こしたグローバルダイニング

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非常事態宣言中の歌舞伎町

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために1月7日から関東を中心に発令されていた緊急事態宣言が、3月25日をもって全ての都道府県で解除された。しかし緊急事態宣言が明けてもなお飲食店への時短営業要請は続いている。4月に入り、要請通りに時短営業を続けている飲食店もあるが、21時以降の営業を再開した店舗も増えているのが現状だ。

そんな飲食業界を賑わせているのが東京都から特別措置法に基づく時短営業の要請に応じず、時短営業命令を受けた飲食チェーン「グローバルダイニング」が東京都相手に訴訟を起こしている裁判。グローバルダイニングの長谷川耕造社長は「お金の問題ではない」という理由から損害賠償請求額を104円に設定したことでも注目を集めており、3月22日に開始されたクラウドファンディングでは4月2日現在で目標金額1000万円に対し、支援者が2800人、支援金が1800万円を超えるなど支持されている。

◆グローバルダイニングの英断に支持が集まる

飲食店が東京都相手に起こした訴訟について、同じ飲食店経営者たちはどのように考えているのだろうか。都内で居酒屋やラーメン屋などを複数経営する小規模飲食グループのオーナーは次のように語る。

「コロナ禍で居酒屋でもランチ営業を開始するなど試行錯誤して営業していましたが、売り上げは全く伸びず、前年同月比で半分以下が当たり前のような状況でした。

あまりの苦しさからスタッフ同士の会話で『要請を無視して20時以降も営業してはどうか』という話は何度も上がっていたのですが、行政はもちろん、“自粛警察”の目も気になり時間外営業はしていません。そんな中、この訴訟について初めて聞いたときは『よくやってくれた!』と素直に思いました。感染症対策は万全だし、言われたルールの中で営業しているのに飲食業界だけが悪者にされている印象があったので、溜飲が下がる思いはありましたね」

◆協力金で儲かった店はほとんどない

一部では、協力金で一時的に儲かったといった報道も出たのだが、実際はどうなのだろうか。恵比寿で飲食店を経営するオーナーは「そうした店はごく一部」と指摘する。

「時短営業を守って1日6万円、1か月で180万円の協力金を受け取っても都心部の店はほとんど赤字だと思いますよ。うちの場合、賃料で月50万円、スタッフ3名の給料を払い、さらに光熱費や維持費もかかってくるので諸々払うと完全に赤字です。

時短営業を守って得しているのは地代がかからなかったり、一人経営の小型店や郊外での家族経営店など、ごく一部の条件を満たしている場合くらい。ほとんどの飲食店は苦しい状況なんじゃないでしょうか」

◆闇営業した飲食店の本音

時短営業を守り、悲鳴を上げる経営者たちがいる中、名目上は時短営業とし、協力金を受け取っているにも関わらず、こっそり時間外営業を行っていたというカフェのオーナーは「いけないこととは分かりつつ、店を守るために仕方なく営業していた」という。

「近くの飲食店で同様に時間外営業を行っているお店があったので、行政の見回りが来たかどうかの情報共有をしながら営業していましたが、毎日かなりヒヤヒヤしていました。20時前後にお客様のふりをして抜き打ちで調査に来たこともありましたね。協力金を貰いながら時間外営業をすることに罪悪感はありましたが、やらないと潰れていたので後悔はしていないです」

とは言え、深夜まで営業を続けることは神経を磨り減らす毎日だったという。

「ツイッターやインスタグラムなどで辛い現状を投稿したら“いいね”つきますが、正直状況は変わらない。むしろ、ネットで晒されて炎上したら、それこそどうにもならない状況になる。お店を開けていたから儲かったでしょ?と言われますが、20時を境に街から人がいなくなりましたから“儲かる”とは言えないレベル。まぁ、焼け石に水というのが的を射ているかな……。

近所でウチと同様に時間外営業してた店があるんですが、その店は満席で断ったお客さんが外で並び始めてしまって行列ができて、通報されたなんて話もききましたしね。こういった訴訟で我々の状況が少しでも変わる可能性があるのは嬉しいですよ」

まさに開けるも地獄、閉めるも地獄の状況に置かれていたというのである。

◆よくぞ言ってくれた!

数々の飲食店経営者たちが今回の訴訟について、賞賛の声をあげている中、多くの飲食店のプロデュースを手がけ『人気飲食チェーンの本当の凄さがわかる本』(扶桑社)の著者でもある稲田俊輔氏にも話を聞いた。

「まず率直な感想は同業者として『よくぞ言ってくれた』ということがあります。今回の争点となっているお店の規模に関わらず、全店一律の保証というのは規模も体力もないお店を救済するという意味では不公平ながらに一定の意味はあると思いました。

ただグローバルダイニングさんのような大型店の立場になると、本音で言えばたまったもんじゃないという話になるのは当然かと思います。そう言った意味でさすがに政策が大雑把だと私も感じておりました」

さらに稲田氏は悔しかった点として飲食店側の努力を信用してもらえなかったことだと続ける。

「特に時短要請に言えることなのですが、夜の飲食店に対するイメージとして、『大勢の人が集まってお酒に酔ってワイワイ騒ぐ場所』という旧時代的な消費モデルがあるとしか思えない。カウンター席はパーテーションを設置したうえで深夜まで営業可能にするとか、テーブル席は片側しか使わず2人までなら大丈夫みたいな。

お酒が入ってワイワイ騒ぐわけではなく、美味しいものを黙って食べるとか、そういう魅力も飲食店にはある。事実、おひとり様での利用も多い。そこをアピールして最大限の感染症対策をするというやる気マンマンだったわけですよ。そういう方向性でコロナ禍の活路を見出そうとしていた飲食店を飲食店というだけで一斉に否定されたのは悔しかったですね」

◆飲食業界はスケープゴートにされたのか

感染拡大を防ぎたいという想いは行政も飲食店も同じ。緊急事態宣言が明け、春の陽気と共に活気が戻り出す街とは裏腹に未だ続く時短要請。withコロナ時代に突入した飲食店の戦いはこれからも続く。

こうした飲食業界の状況を都内のあるパチンコ店オーナーは「とても他人ごとじゃない」と語る。

「昨年、私たちのパチンコ業界は徹底した感染症対策をして、背に腹を変えられぬ思いで店を開けた。しかし、メディアも行政もそんな我々を“ネタ”にするように、立ち入り検査や朝から並ぶお客さんを報道と言ってテレビに映した。

でも、結局、パチンコ屋でクラスターは起きたんですか? 最終的には9割以上が営業自粛を受け入れたんですよ。今の飲食業界の方々はあの時の我々と同じですよ。結局、政策のスケープゴートにされてしまっている印象があります」

昨年の緊急事態宣言禍でパチンコ業界は長く休業を強いられていたが、その後クラスターは発生せず、今回の緊急事態中でも変わらずに営業を行っていることを考えると、多くの飲食店オーナーが言うように「なぜ飲食店だけが」という悲痛な叫びには同情せざるを得ない。<文/谷川一球>

【谷川一球】

愛知県出身。スポーツからグルメ、医療、ギャンブルまで幅広い分野の記事を執筆する40代半ばのフリーライター。

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