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小山田圭吾の起用を「最後まで撤回できなかった」五輪組織委員会の「深すぎる闇」

小山田圭吾の起用を「最後まで撤回できなかった」五輪組織委員会の「深すぎる闇」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/07/21
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なぜもっと早く辞めさせられなかった?

開催4日前というタイミングで東京オリンピック開会式の音楽演出を担当していたミュージシャンの小山田圭吾が辞任した。

学生時代に障害者のクラスメイトを虐待していたことを自慢した27年前のインタビュー記事などが非難され、差別反対や共生社会の実現を掲げる五輪・パラリンピックの精神にそぐわないと、世界的な批判を受けていた。

当初、五輪組織委員会は「本人は十分反省している」と意に介さず、小山田本人も謝罪文をツイッターに掲載して仕事の継続を明言していた。が、結局は辞任。

多くの人々は「やっぱりこうなったか」と思っていることだろうが、なぜ組織委は小山田をもっと早くに辞任させられなかったのか、そもそもなぜこんな人選だったのか。その解答こそ「東京五輪の正体」に迫りうるものだ。

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小山田圭吾〔PHOTO〕Gettyimages

辞任数日前、組織委の関係者と電話をしたとき「小山田の辞任は避けられないと思うんですが、問題はそれを誰が決断するかでは?」と聞いたら、「そのとおりです」と言われた。

「組織委にはたくさん力のある人々が絡んでいて、そこの人脈から起用された人物については、その起用に関わった人でないと部外者は口を出せないですよ。ハッキリ言うと、余計なことを言って、どこで誰の怒りを買うか分からない。

だいたいオリンピックで起用されるクリエイターのほとんどが、何かのコネだったりするんです。これは言い訳すれば、ゼロからギャラだとか日程だとか交渉すれば、条件交渉がめんどくさくて長引きますから、パッと決まるのが理想で、そういうとき、例えばクリエイターの長年の友人みたいな方が『俺が頼んでおくから任せて』と言えば、それで済む。

そうやって一部の権限で起用しやすい面々で埋まっていくところがあるので、何か問題があっても簡単に『切れ』とは誰も言えないんですよ」

しかし、今回の問題で振り返られたインタビュー内容はあまりにひどいもので、いくら過去の話であっても人選ミスであることは否めない。

1994年発行「ロッキング・オン・ジャパン」と1995年発行「クイック・ジャパン」に記載された記事では、小山田が私立の小中高一貫校に在学中、障害あるクラスメイトを、「全裸にしてグルグルにひもを巻いてオナニーさしてさ。ウンコを喰わしたりさ。喰わした上にバックドロップしたり」と笑いながら明かしていた。

「五輪人脈」の問題

さっさと小山田の起用を撤回するのが難しいという「五輪人脈」の事情は、小山田本人もわかっていたのではないか。

彼の謝罪文は、「非難されることは当然」としながらも、(当時の記事について)「事実と異なる内容も多く記載」があったが「指摘をせず、当時はそのまま静観」していたという反論もあり、しかも被害者には「直接謝罪をしたい」とするなど、配慮に欠ける「加害者側の弁明」が火に油を注ぐような内容だった。そこでは、自分がクビになる可能性についてもまったく触れていなかった。

7月19日の時点でも組織委の高谷正哲スポークスパーソンは、小山田を「現在は高い倫理観を持って創作されているクリエイター」として留任を強調していた。これは、高谷氏が組織委の演出面の人脈からは遠い人物で、それゆえ「余計なことを言って、組織委のなかのどこで誰の怒りを買うか分からない」という心境だったからかもしれない。

しかし、加藤勝信官房長官が「許されるものではない」と対応を促すと状況は一変。筆者の得た情報では、この会見のあとで組織委のひとりが小山田本人に「自ら辞任という形にできないか」と決断を迫ったらしいとの話がある。さすがに政府からの苦言には、本人に辞任をお願いするしかなかったか。

「そのいきさつは分かりませんが、おそらくですが、報酬は予定どおり支払うから、その形をとって今回は納得してくれ、ということだったのでは」(前出・組織委関係者)

誰に気を使っているのか

そこまでして組織委が気を使う「力のある人々」とは誰なのか。前出の関係者は「広告代理店が中心ですよね」と言った。

別件でもその図式が分かる話がある。カシマスタジアムでおこなわれる東京オリンピックのサッカーを観戦予定の茨城県鹿嶋市の市立校は、小中学生たちが会場に持ち込む飲み物について「コカ・コーラ社製の飲料に限る」と通知をしていたことが判明した。組織委の担当者が各校に「それ以外の商品はラベルをはがせ」と指示していたのが発端だった。

これと同じことを過去の五輪でも聞いた。ロンドン五輪で現地取材したテレビディレクターが「撮影で映る映らないに関係なく、会場内で持ち歩く飲み物はコカ・コーラ社のものをと会社から指示された」と言っていたのだ。

「普段の番組制作でも、もちろんスポンサー企業の商品以外は映さないのは鉄則ですが、画面に映らないところまで問われることはまずありません。なぜならスポンサー企業の人はまず制作現場に来ないからです。つまりスポンサーの目に見えるところが重要なんです。

でも、オリンピックの場合、自分たちが撮影していなくても、無数のメディアが撮影しているので、どこで撮られるか分からない。だから持ち物まで規制されたんです」

つまりは今回、招待される地元の小中学生たちの観戦がテレビで流される可能性が高いから、組織委が持ち込み飲料までコントロールしようとしたわけだ。

テレビ界では視聴者を「お客様」のように見立てているが、実際にはお金(製作費)を出してくれる番組スポンサーこそが神様である。皮肉にもこれと同じ図式を露(あらわ)にしているのが組織委で、五輪公式スポンサーこそが「お客様」であると見ているわけだ。

そして、ディレクターが「スポンサーは現場にまず来ない」と言ったとおり、組織委がその「お客様」と直接、顔を合わすことは少ない。そしてスポンサーの代わりに動くのが仲介役の広告代理店だろう。

中心にいる人々

過去、盗作疑惑で撤回された佐野研二郎の公式エンブレム問題でも、選考で審査委員を務めたのは広告代理店出身の人間だった。同様に今回、小山田に自主的な辞任を求めたのも組織委にいる広告代理店出身の人物だったと言われる。そこは内々のやり取りであるため確証は取れないが、小山田の辞任を組織委が簡単に決断できなかったのは、大騒ぎになるまでエンブレム問題に何もできなかったのとそっくりな構図だ。

おそらく小山田の人選が行われたのもそうした人々の間であるはずで、東京五輪の演出関係を請け負ったクリエイターの面々が数年前、そのまま別のイベントで顔を合わせている事例もあった。昨年1月にパワハラで五輪開会式の演出担当を辞任した電通の菅野薫氏もまた小山田との仕事歴があり、このあたりの人脈は組織委にとって最も口を出しにくい部分に見える。

広告代理店が諸悪の根源と言ってるわけではなく、もちろん広告代理店にも大きく果たせた役割があることは承知している。しかし、3月に「オリンピッグ」の案が批判されて開閉会式の演出を退任した佐々木宏氏が電通マンだったり、東京五輪では広告代理店関係者が絡んだトラブルがかなり多い。

障害者虐待で知られた小山田をパラリンピックの仕事に起用するなどずさんな采配を見ると、広告で五輪の費用を賄いすぎた結果、一部企業に国家事業の仕事を任せすぎることになって起こっているのではないかという視点も出てくる。そのあたりの疑念を払拭したければ、組織委は小山田の起用経緯についてハッキリ世間に公表すべきだろう。

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