
U-17ワールドカップで若き日本代表が得た財産と課題とは何か(写真はイメージです) 撮影:中地拓也
U-17日本代表の年代別ワールドカップでの冒険が終わった。インドネシアで開催されたU-17W杯で、ラウンド16で敗れたのだ。決して満足な結果ではないだろうが、若きサムライたちにとって大事なのは、この経験をどう活かすかだ。サッカージャーナリスト後藤健生が、大会を通じて見えた成長と課題をつづる。
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■ラウンド16での敗退
インドネシアで開催されているU-17ワールドカップ。日本代表は11月20日に行われたスペイン戦に敗れ、前々回(2017年)、前回(2019年)に続いて、またしてもラウンド16敗退となってしまった。
チームを率いた森山佳郎監督にとっても3大会連続でのラウンド16での敗退となった。大会前から「ラウンド16である程度余裕を持って戦えるようにして、ファイナリストを目指したい」としていた森山監督だったが、スペイン戦の日本は厳しい状況での戦いとなった。
試合開始直後からスペインにボールを握られたのは想定内だったろうが、そこでボールへのチャレンジが足りず、8分には早くも失点を喫してしまう。
その後は日本が次第に盛り返し、20分以降はむしろ日本にチャンスが多くなり、なかなかゴールは奪えなかったものの、40分には右サイドで佐藤龍之介がボールを奪い、中央から名和田我空がゴール右隅にコントロールショットを決めて同点とすることに成功する。
しかし、後半にはスペインに一方的に攻め込まれ、今大会絶好調の高岡伶颯や大型FWの徳田誉などを次々に投入したものの、決定機も作れないままタイムアップとなった。
■予想された苦戦
グループリーグの3試合では後半に入って相手の足が止まってくると日本が攻勢を取る展開が多かった(グループリーグでの日本の全得点は後半に決まった)。だが、スペイン戦では後半に入ってむしろ日本選手の方が動きが落ちてしまった。
これは、予想できたことだった。
日本はグループDで2勝1敗。アルゼンチン、セネガルと勝点で並んだが得失点差で3位通過となったため、最終セネガル戦から中2日でラウンド16の戦いに臨まなければならなかったのだ。一方、グループB首位通過のスペインは中3日。さらに、スペインがグループリーグと同じ会場(スラカルタのマナハン・スタジアム)で戦えるのに対して、日本はグループリーグの舞台となったバンドンからスラカルタまで移動しなければならなかった。
バンドンからスラカルタまでは直線距離で約400キロ。日本国内であれば新幹線で2時間程度の距離だが、インドネシアでは交通インフラが整備されていない。10月に中国によって建設された東南アジア初の高速鉄道がようやく開業したが、ジャカルタからバンドンまでだけで、それから先への延伸はまだ計画段階にも至っていない。
■原因は「3位通過」
在来線で移動すればスラカルタまでは7時間以上もかかる。バンドンには大きな空港もない。そこで、日本チームは試合翌日の午後にジャカルタまでバスで移動して1泊し、試合前日の午後便でスラカルタに到着し、そのまま練習場に直行という強行日程を強いられた。
グループリーグ終了直後にも、森山監督が「2日がかりの移動だよ」と嘆いていたが、その影響は大きかったようだ。
もちろん、チーム力自体もスペインの方が上だったが、しかし、良いコンディションで挑戦してほしかったのは確かである。
日本がそうした状況に追い込まれたのは、「3位通過」となったことが原因だった。
だが、少なくとも今大会に限って言えば「3位通過」は決して恥じるべき成績ではない。大会前から、指摘されていたように日本が所属したグループDは「死の組」だった。
後藤健生