テレビ解説者・木村隆志の週刊テレ贔屓 第139回 『美容(ビューティ)ゴッドハンド』露悪的な美容整形番組から一歩進化か

テレビ解説者・木村隆志の週刊テレ贔屓 第139回 『美容(ビューティ)ゴッドハンド』露悪的な美容整形番組から一歩進化か

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/09/16
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テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第139回は、13日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『あなたを美しくします! 美容(ビューティ)ゴッドハンド』をピックアップする。

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悩みを抱え、「外見を変えて人生も変えていきたい」という女性の思いに一流の美容外科医たちが応える……というコンセプトは、かつて同局で放送されていた『B.C.ビューティー・コロシアム』を彷彿させる。同番組が終了してから時代が変わり、整形手術に対する価値観も変わる中、どんな構成・演出なのか興味深い。

○■主役は整形希望の女性ではなく医師

オープニングのファーストカットは、美容整形をしたい女性3人の顔写真で、そこから怒涛のナレーションラッシュ。

「今夜こちらの女性たちが美しく変わります」「コンプレックスに悩むシングルマザーのキャバ嬢がまさかの大変身。韓流アイドルを夢見る22歳がかわいく大変身。娘から亡霊と呼ばれた48歳の母親が若返って大変身」「そんな彼女たちを美しく変身させたのが、神の手を持つ3人の美容整形ドクター。銀座の若き手術王子が挑むのは女性の天敵『脂肪ちゃん』、業界大手のクリニックが誇る最終兵器がナチュラル整形の極意を初公開、脂肪の魔術師が見せてくれたのはメスで切らずに10歳若くなる方法。その技、まさにゴッドハンド」

ここまでのナレーションとVTRは、「『ビューティー・コロシアム』と大差ない」という印象を受けた。しかし、ここから医師たちの素顔にフィーチャー。ウェイクボードを楽しみ、筋トレに励み、グラマラスな妻と過ごす姿が映し出される。さらに、「失敗したときはどう対処?」「『この人整形だな』ってわかる?」「整形を断ることはある?」「脂肪吸引って痛い?」などのストレートな疑問に切り込むという。

美容整形を希望する女性、美容整形を手がける医師、美容整形の真実。「どれかを1つを深く掘り下げる」というより、「全方位的な美容整形番組」というイメージなのか。正直なところ、オープニングの段階ではつかめなかった。

続いて、MCの千原ジュニアと竹内由恵が「ビューティーゴッドハンドの登場です!」と呼びかけて医師たちが登場。派手な演出でスタジオに現れたのは、「銀座の若き手術王子」深堀純也医師、「湘南美容クリニックの最終兵器」居川和広医師、「メスを使わずに10歳若返らせる脂肪の魔術師」大橋昌敬医師の3人だった。

あっ、やっぱり主役はタイトルの通り、美容整形の医師なのか。このタイミングで気づいた人は少なくないだろう。ならば、技術的な話に加えて、医師たちのキャラクターをどこまで掘り下げて赤裸々な姿を見せてくれるのか。あらためて期待感が募った。
○■目は7つ、鼻は4つ、顔は9つの手術法

医師たちの紹介がひと通り終わり、番組開始から8分が過ぎたころ、ようやく美容整形を望む女性が登場し、本編スタート。22歳のシステムエンジニア・花田実里弥さんは、「小学生時代から憧れていた韓流アイドルの顔になりたい」という。

そんな花田さんに、ディレクターが「『エッ、そんな理由?』って思っちゃうんですよ」と尋ねた。ノリこそ軽かったが、タレントではなくディレクターの声を使う演出はドキュメンタリーを思わせる。しかし、花田さんは「アプリで出会った韓国人の恋人と同棲中で、ゆくゆくは結婚して韓国で暮らすのが夢」という、かなりのガチンコぶりを見せた。

この流れで花田さんを掘り下げると思いきや、番組は「銀座の若き手術王子」深堀医師をクローズアップ。深堀医師は「手術は1日5~6件で大好き」と語ったほか、人気の脂肪吸引をやりすぎて腱鞘炎になる医師も多い中、両手で行える技術の高さを披露した。

ここで花田さんとは別の患者で、整形オタクの39歳・ミリちゃんが登場し、脂肪吸引の様子に密着。両太ももから吸引した脂肪2500㏄を生々しく映して、視聴者を驚かせた。さらに小顔になりたい20代女性が、ほほの内側にある脂肪・バッカルファットを取り出す様子を映したが、モザイクをかけても、やはり生々しい。

ちなみにこの手術は、「10分程度で費用は22万円。切開の跡も口内で目立たないため最近人気」という。メリットばかりでリスクや痛みなどにまったくふれないのは、ややアンフェアだったかもしれない。

次に、「年間2,000人以上の整形手術を行い、性格は几帳面で完璧主義者」「学生のとき二重の手術を受けて人生観が変わり、美容外科医を目指した」などと深堀医師のパーソナル情報を放送したあと、一転して美容整形の技術を細部に渡って徹底紹介。

目の手術は「二重全切開、拳筋短縮、roof切除、目頭切開、目尻切開、グラマラス形成術、下眼瞼脱脂術」の7つ。鼻の手術は「鼻尖形成術、鼻中隔延長術、肋軟骨移植、人中短縮術」の4つ。フェイスラインの手術は「口角拳上術 ほほ脂肪吸引、顎レディエッセ注入、顎下脂肪吸引 メーラー脂肪吸引、バッカルファット術、エラボトックス、顎先ボトックス、額脂肪注入 コメカミ脂肪注入、目の下脂肪注入 内腿脂肪吸引、ほほこけ脂肪注入」の9つ。

ちなみに花田さんの手術総額は498万3,000円という。その金額以上に、あまりに専門的であり、初めて聞く言葉の乱打に驚かされた。この番組、かなり情報量が多そうだ。
○■医師の豪華すぎるプライベートに密着

……と思ったら、再び深堀医師に密着。手術前日、自宅タワーマンションにスタッフを招き入れてくれたのだが、料理担当のスタッフ、大窓から広がる夜景、大理石のバーカウンター、業務用のダーツ機など、漫画のようなブルジョアルームだった。

さらに深堀医師は、手術当日の朝、愛車にサングラス短パン姿で乗って川に向かい、はじめたのはウェイクボード。こんなネタとしか思えない姿が「日々のルーティン」と言い切るのだから、美容整形にまったく関係がなくてもスタッフがオンエアしたくなって当然だろう。

その後、花田さんの手術当日に密着したが、やはりゴールデンタイムのためか手術シーンは少なく、術式などの説明はCGでカバー。また、深堀医師は13時間30分に渡る手術だけでなく、食事管理とトレーニングによるダイエットを指示し、元美容部員のスタッフによる韓国風メイク講座まで手配していた。「『手術が終わればそれでいい』のではなく、いかにして美への意識を高め、それを日常にできるか」が深堀医師にとっての美容整形という。

最後に、美容整形を終えた花田さんがスタジオに登場し、ジュニアの「かわいらしいねえ」を筆頭に全員が絶賛。本人も、「鏡見るのが好きになりました」「彼氏は『韓国人っぽくなったね』と言ってくれました」と満足気に語り、なぜかTWICEのTTダンスを披露して終了した。

2人目は29歳のキャバクラ嬢・大河愛美さんが、業界大手・湘南美容クリニックの最高峰で「ナチュラル整形」の得意な居川医師の手で変身。目と鼻を中心に16か所の手術で338万4,730円、歯の完全セラミック化に396万9,000円で、総額735万3,730円の超高額整形となった。

3人目は美容整形クリニックで働く25歳の看護師・高橋斧奈さんの母親・正美さん48歳が、「メスを使わずに10歳若返らせる脂肪の魔術師」こと大橋昌敬医師の手で変身。「細すぎる」「中年女性」という前2人とは異なる美容整形のバリエーションを見せ、総額307万4,500円だった。

番組のエンディングは「Epilogue」として女性たちのその後をリポート。キャバクラ嬢の大河さんは新たに務める店の写真撮影に堂々と挑み、韓流アイドルになりたかった花田さんは彼との結婚を心待ちにし、脂肪で若返った高橋さんは若いママ友との交流に前向きな姿勢を見せていた。

そして、「今回出会ったビューティーゴッドハンドたちが見せてくれたのは、心の扉を開けるもう1つの方法でした」というナレーションに添えられたラストカットは、美容整形を終えた3人の顔。つまり、オープニングのファーストカットとエンディングのラストカットを対比させて終了したのだが、「美容整形は心を変える」という結論も含めて、『ビューティー・コロシアム』とまったく同じだった。
○■視聴者目線で鋭かった質問コーナー

その他で目を引いたのは、「ゴッドハンドぶっちゃけトーク 美容整形の裏側 大暴露!!」というサブコーナー。3人の医師が美容整形にかかわる素朴な疑問に答えていく企画だが、視聴者目線の芯を食った質問ばかりだった。

「『この人にしてほしい』というリクエストで最近多いのは?」に「誰というのがなく、インスタの写真などが多い。加工されている顔でアニメもあった」、「断ることはある?」に「頭蓋骨のサイズを小さくするのは難しい。その他でも毎日3割くらいはやりすぎないように断っている」。

「美容整形を自分で試すことはある?」に「自分で自分をやってみることはある」、「一番安い美容整形は?」に「糸で二重にする施術。2~3万円のケースも」、「患者との恋愛はある?」に「土産はけっこうもらうが恋愛はない。ただ、自分で手術しておいて『タイプだな』と思うことはある」。

その他にも、「脂肪吸引の痛みは筋肉痛くらい」「使われなかった脂肪は液体窒素タンクで長期保存して後に使用できる」などの具体的なコメントがあり、過去にここまで美容整形の情報を詰め込んだ番組があっただろうか。そこに「今、美容整形を扱うのならこれくらいやらなきゃダメだろう」というスタッフサイドの意気込みが見えた。

情報が充実していた一方で物足りなさを感じたのは、人間ドキュメント。『ザ・ノンフィクション』の前チーフプロデューサー・張江泰之氏が当番組のプロデューサーを務めただけに最も期待した点だったが、医師、女性、家族、いずれもゴールデンで放送するほど特質すべきところは見られなかった。「現在はこれくらいカジュアルなんですよ」ということかもしれないが、それならばゴールデン向きのコンテンツにはなりにくいのかもしれない。

また、当番組が『ビューティー・コロシアム』からの進化版、あるいは令和時代のアジャスト版であるならば、「男性、LGBT、外国人などを含めた多様性」「美容整形後の姿はCMをまたがずに見せ切る」などの新たな形を見せてほしかった感もある。ともあれ、『ビューティー・コロシアム』のような露悪的な構成・演出がない安心感があり、何より初めての放送だっただけに、次回以降はブラッシュアップした番組を見せてくれるのではないか。
○■次の“贔屓”は…『イッテQ』テイストの明るいドッキリ『うわっ!ダマされた大賞』

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、20日に放送される日本テレビ系バラエティ特番『うわっ!ダマされた大賞2020』(19:58~21:54)。

「日本テレビのドッキリ」と言えばこの番組。『世界の果てまでイッテQ!』のスタッフとキャストが中心の番組だけに、明るさとわかりやすさを前面に出したドッキリが多く、笑いの密度も濃い。主に年2回ペースで放送されて20回目を迎える今回は、「生放送や新しい生活様式のドッキリもある」というから楽しみだ。

レギュラー放送されているフジテレビの『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』、TBSの『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』も含め、視聴率トップを独走する日テレの特番を引き合いに「ドッキリ番組の現在地点」も掘り下げていきたい。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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