日本とぜんぜん違う! ニュージーランドのタトゥー事情を聞いてみた

日本とぜんぜん違う! ニュージーランドのタトゥー事情を聞いてみた

  • BuzzFeed
  • 更新日:2021/11/25

さまざまな民族が暮らすオセアニアの島国・ニュージーランド。出身部族を象徴するトライバルタトゥーや、ファッションとしてタトゥーを入れる人が多い。

ニュージーランド・ヘラルド紙によると、2019年に新採用された警察官の95%が、体のどこかにタトゥーを入れていたという。日本よりも比較的広く、そして長い間タトゥー文化が受け入れられていると言えるだろう。

たとえば、ラグビーのニュージーランド代表チーム「オールブラックス」。

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Chris Hyde / Getty Images オーストラリアで開催されたザ・ラグビーチャンピオンシップ、対アルゼンチン戦でのハカ。2021年9月18日撮影。

マオリの民族舞踊「ハカ」のパフォーマンスが記憶に残っている人も多いだろう。腕や脚にタトゥーを彫っている選手がいるのがわかる。

約504万人の人口のうち、16.5%を占めるとされているのが、先住民族マオリ系の人々だ。

2020年11月に、ニュージーランドで初めて、先住民女性として外相に起用されたナナイア・マフタ氏も、あごにマオリのタトゥーを入れている。

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Hagen Hopkins / Getty Images ナナイア・マフタ氏。顎に入れるマオリ伝統のタトゥーは「モコ・カウアエ」と呼ばれる。

マオリ族伝統のタトゥーは、「タ・モコ」と総称される。

ニュージーランド政府公認機関で、ニュージーランド留学のプロモーションをはじめニュージーランドの教育を世界に発信するエデュケーション・ニュージーランド本局のチーフ・マオリ・アドバイザー、カール・ウィクソン氏によると、タ・モコが意味するのは「まずいちばんにアイデンティティ」だという。

「ニュージーランドには、100近い数の部族がいる。タトゥーは、自分の部族やルーツを表現するためのもの」とウィクソン氏。

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提供画像 マオリ族伝統のタトゥー「タ・モコ」

モチーフには、ルーツを表すデザインに加え、自分の職種などの社会的ステータスを加えることもあるという。
「わたしは集団内でヒーラー(治療師)だ、リーダーだ、といったように、役職に応じてデザインを取り入れる。まずは部族。その上に自分の特徴を足したデザインになることが多い」

出身部族のある地域の自然、母なる大地も重要な要素になる。それらを題材とした逸話や神話も、タ・モコに取り入れられる。

ウィクソン氏のタ・モコは、ハイイロミズナギドリがモチーフになっている。

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提供画像 カール・ウィクソン氏。

ウィクソン氏は、ニュージーランド南島のナイタフという部族の出身だ。南島には、マオリ語で「ティティ」と呼ばれるハイイロミズナギドリが多く生息している。

ハイイロミズナギドリは食用にもなるのだが、ウィクソン氏の親族は、慣習的にハイイロミズナギドリの捕獲に携わっているのだという。そのため、自身のルーツに関わりの深いハイイロミズナギドリをモチーフとして取り入れているそうだ。

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Gerald Corsi / Getty Images/iStockphoto ハイイロミズナギドリ。細長い形の羽が、ウィクソン氏のタ・モコにも反映されている。

伝統的な彫り方では、先祖の土地のものを使う

現代の染料はインクだが、伝統的なタ・モコの彫り方では、材料集めの段階から自分の先祖や土地を敬う形で行われる。

自分の先祖や出身部族の土地にある木の枝や土などを染料として使い、石や骨を用いて肌に彫っていくという。

今もごく少数ではあるが、伝統的な方法にこだわり、この方法でタ・モコを入れる人もいるという。

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Graphicaartis / Getty Images 1773年出版、イギリスの作家ジョン・ホークスワースによる航海記「An Account of the Voyages Undertaken by the Order of His Present Majesty...」より。イギリスの海軍士官で探検家のキャプテン・ジェームズ・クックの航海中に記録した、タ・モコを施したマオリ族の男性。

タ・モコのデザインは対話から生まれる

方言があるように、タトゥーのデザインやモチーフも地域や部族によって異なる。

ウィクソン氏によると、その中でもタ・モコが特徴的なのは、「トホンガ」と呼ばれるマスターのような人が存在する点だ。トホンガはタ・モコのリーダーとして認められた存在で、国内にも数人ほどしかいないとウィクソン氏は説明する。

先述したように、タ・モコのデザインには部族のモチーフだけではなく本人のアイデンティティも反映されることが多い。

トホンガやタ・モコアーティストは、デザインを考案する前に、相手との「コレロ」が欠かせない。コレロとは、マオリ語で「対話」を意味する言葉だ。

相手の人間性、性格、好きなもの、これまで歩んできた道のりを知り、その上でデザインを提供するという。

「いろいろな言葉を拾い、それを物語にするのがトホンガやタ・モコアーティストの仕事。『これを彫ってください』と既存のデザイン見本を渡されて、それを彫ったタトゥーはタ・モコではない」とウィクソン氏は説明する。

既存のタ・モコをコピーしたものには「キリトゥーヒ」という別の名がついている。入れるまでのプロセスがタ・モコの伝統と一致していなければ、そのタトゥーはタ・モコとは呼べない。

しかし、必ずしもマオリ出身者のみにタ・モコが許されているわけでない、とウィクソン氏は語る。

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「コレロによって生まれたデザインを施すのがタ・モコ。マオリ出身者でなくても、そのプロセスを経てタ・モコを入れられる」

「そういった部分で、タ・モコ関係者はマオリ以外の文化と協業することにオープンな人が多いと思う」

「ただ、キリトゥーヒが文化の盗用になるかという点においては、人によって受け取り方が違う。マオリ文化や伝統を盗まれた・コピーされたと感じる人もいれば、それをマオリ文化への賞賛だと思う人もいるだろう」

「重要なのは、『どんな意図でそのタトゥーを入れたか』」

タトゥーに結びつく人種差別、男女差別

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Indiginz / Getty Images/iStockphoto

タトゥーに寛容な印象のあるニュージーランドでも、タトゥーに対する偏見はあるとウィクソン氏は語る。

「タトゥーにネガティブな印象を持っている人はいる。ギャングのタトゥーと、伝統的なタトゥーが混同されてしまうケースが多い」

1840年、540人の先住民マオリ首長とイギリス君主との間でワイタンギ条約が締結され、ニュージーランドはイギリス領となった。

イギリス領時代、政府の同化政策のもとマオリ語をはじめとする先住民文化は禁止・抑圧されてきたが、やがて政府内外でマオリ文化を支援する声やマオリの影響力が強まった。1970年代から、マオリ文化を尊重し、再認識するための回帰運動は活発化している。

しかしウィクソン氏によると「それも本当に最近の話」だ。タ・モコの再認識は回帰運動の中でも遅く、本格的に盛り上がり始めたのは1990年代から2000年初頭にかけてだという。

「だから、タ・モコに見慣れていない人もまだ多い。タ・モコを醜いとか、変だとかいう見方をする人もいる。そういった点では、人種差別にも密接に絡んでいる」

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タ・モコが理由で職に就けないケースも稀ではない。

たとえばニュージーランド航空は客室乗務員やパイロットなど職員に対し、肌が露出する場所のタトゥーを禁止していた。同社CEOいわく「多様性を認めるため」、タ・モコなど伝統的なタトゥーの露出は認めるという方向性で規則が修正されたが、それもまだこの2年での話だ。

ウィクソン氏は、タトゥーを入れているのが男性か女性かによっても、差別意識に男女にも差があると指摘する。

「オールブラックスのように、男性がタトゥーをしていると勇敢で、ヒーロー的なイメージに受け取られる。一方で女性が顔に入れていたら、美の価値観の違いによる批判を受けることがある。その場合、マオリ以外の男性からのことが多い」

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増えるタ・モコアーティスト

しかしウィクソン氏によると、タ・モコへの関心はニュージーランドでさらなる高まりを見せており、近年タ・モコを入れる人や施す人が増加しているという。その理由は2つある。

1つは、1987年にマオリ語が国の公用語に認定されるなど、マオリ文化の回帰運動が影響している。マオリの文化的アイデンティティを見直し、その表現の一つとしてタ・モコに関わる人口が増えたという。

もう1つは、タ・モコを含め、タトゥー自体の露出が増え一般的になってきた点にある。

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エデュケーション・ニュージーランド駐日代表の北岡美佐子氏は、「ヘアメイクやファッションタトゥーよりも、アイデンティティやルーツに深く通じるという点がミレニアル世代以降に受け入れられ、タ・モコがまた増えているのかもしれません」と語る。

マオリ文化の回帰運動も、「決して表象的なお飾りではない」と北岡氏。

「多文化共生の基盤を築き、観光や留学産業を通じて多大なる経済効果をもたらしています」

「ニュージーランドの学校に留学すると、マオリ語やマオリ文化に触れる機会がたくさんあります。ニュージーランドの授業では、『キ・オラ』(マオリ語でこんにちは)や『カ・パイ』(よくできました!)など、マオリ語のフレーズが飛び交っています。ニュージーランドの教育に、マオリ文化は深く、そして自然に溶け込んでいることを改めて実感します」

「知られざるニュージーランドの魅力や感動を、日本の皆さんにもっと知ってほしいです」

Rikako Takahashi

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