『愛の不時着』と『2gether』を比較したら「萌え」に必要な条件がわかった

『愛の不時着』と『2gether』を比較したら「萌え」に必要な条件がわかった

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/10/18
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海外ドラマのおかげで、コロナの不安やストレスから少し解放された、という人は多いのでしょうか。私も例にもれず、様々な恋愛ドラマにハマっていたのですが、中でも傑作と名高い韓国ドラマ『愛の不時着』と、日本に萌えの旋風を巻き起こしたタイのBLドラマ『2gether』の2本には助けられました。

====それぞれのあらすじ====

『愛の不時着』
韓国からパラグライダーで不時着したヒロイン、ユン・セリ(ソン・イェジン)が、北朝鮮の兵士リ・ジョンヒョクに助けられ、最初はお互い反感を抱いていたのが、いつしか禁断の恋に……。軍事境界線を行き来する壮大なラブストーリー。

『2gether』
大学でオネエキャラの同期からの激しいアプローチに困ったタイン(Win)が、学校イチのイケメン、サラワット(Bright)に偽の彼氏になってほしいと頼み、だんだん偽の恋愛が本物になっていく展開。毎回いろいろなパターンで超絶イケメンのサラワットがタインを口説いたり愛を表現する姿を見せてくれる素晴らしいドラマ。

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『愛の不時着』はドラマティックな展開から目が離せず、『2gether』は萌えが止まらない。緊迫感とユルさ、どこか対照的な恋愛ドラマを観て、気づいたことがありました。『愛の不時着』はときめきやスリルを得ることができましたが、「萌え」の要素はあまり感じられませんでした。一方、『2gether』のストーリーには深刻さがなく、その分「萌え」に心身を委ねることができました。視聴者もその時の状態によって求める感覚が違うと思いますが、『愛の不時着』の波乱万丈ぶりに翻弄されてちょっとエネルギーを消耗したところで、『2gether』のユルさや甘さが癒してくれた感がありました。

萌えと心の耐性について考えてみると、ストーリーがシリアスすぎると、真摯な喜怒哀楽の感情移入にエネルギーを消費し、萌える体力や精神力が残っていないような体感が。 スマホにたとえると、重いゲームアプリを動かしていると、他のアプリがメモリ不足で動かなくなってしまうような……。とはいえ、2つのドラマはタイプは違いますが、絶妙なバランスで構成されたストーリーに胸キュンの演出があり、視聴者を没入させることに成功しています。

それぞれラブストーリーとして共通していそうな箇所をピックアップして、深刻さとユルさを比較してみたいと思います(『2gether』は『Still 2gether』(続編)も含み、時系列は前後しています)。

※以下、『愛の不時着』『2gether』『Still 2gether』に関するネタバレが含まれています。

「恋愛ドラマのあるある」を比較

※『愛の不時着』がA、『2gether』がBです。

〔突然のキス〕
A:船の中でイ・ジョンヒョクとユン・セリが隠れているところを軍人に見つかりそうになり、カップルを装うためとっさにキス
B:サークルの新歓イベントで先輩にゲームをするように言われ、タインとサラワットがプリッツを端から食べていってハプニング的にキス

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イラスト:辛酸なめ子

〔見失った相手を探す〕
A:ユン・セリが市場で迷子になったとき、キャンドルをかかげて探しまわるリ・ジョンヒョク
B:サークルの合宿の夜、タインが森の中にひとり入って行って迷子になってしまう。懐中電灯を照らして探すサラワット

〔予期せぬ密着〕
A:リ・ジョンヒョクがユン・セリを韓国に帰してあげようと一緒に抱き合ってパラグライダーに乗る
B:タインの兄の目から逃れるため、狭いソファで一緒に寝ることになり、「落ちないように俺がずっと抱いてやる」とタインをバックハグするサラワット

〔廃墟で身を寄せ合う〕
A:雪の中、自分に会いに来てケガした状態で帰るイ・ジョンヒョクを心配し、後を追うユン・セリ。吹雪で遭難しかけて2人は廃校で暖を取る
B:森の中で迷って足をくじいたタイン。サラワットが発見し、廃バスで雨宿り

〔敵の襲撃〕
A:宿敵で上官の、チョ・チョルガンの部隊に襲撃されるリ・ジョンヒョクとユン・セリ
B:「ようイケメン、俺の彼女にいいねを押させたな!」といいがかりをつけられ上級生から襲撃されるサラワット

〔家族の策略〕
A:ユン・セリの兄夫婦が鬼。常に策略を練ってセリを陥れようとする
B:タインの兄が、サラワットとタインの仲を疑い、部屋に黄色いビニールテープを貼って、居住空間を分けようとするが失敗

互いを思い合う2人

〔別れの予感に号泣〕
A:ユン・セリの誕生日に、サプライズのために隠れていたリ・ジョンヒョクと部下たち。それを彼らが北朝鮮に帰ってしまったと思って号泣するユン・セリ
B:サラワットの前に元カノが現れ、抱き合っている2人を目撃してしまい号泣するタイン

〔ペアアクセサリー〕
A:誕生日、リ・ジョンヒョクがユン・セリにカップルリングをプレゼント。「一生外さないわ」と感動するユン・セリ
B:同棲をはじめた日、タインがまちがって二つに割ったギターのピックをペアのブレスレットに仕立てて、サラワットがタインにプレゼント

〔負傷した相手を助ける〕
A:空港へ向かう中、リ・ジョンヒョクがユン・セリを助けようとしてトラック隊に狙撃される。ユン・セリが自分の血を輸血して彼を救う
B:サラワットがサッカーの試合で骨折したかと思ったらただのすり傷だった。タインが血が怖いと言いながら傷の手当をする

〔思わず漏らした本音にドキリ〕
A:韓国に潜入中、セリの家でお酒を飲んで「北に帰りたくない」と本音をもらすリ・ジョンヒョク
B:サラワットが、女性を口説きたいと言ったタインに「お前は俺のものだ。絶対に誰も口説いたりするな」と酔った勢いでキス

〔離ればなれになり…〕
A:北朝鮮と韓国で会えなくなるのを悲しむユン・セリとリ・ジョンヒョク
B:サークルの合宿で車で30分の距離に2週間離れ離れになって、泣いたりお互いの幻覚を見るタインとサラワット

〔会いたくて…〕
A:危険な坑道を這いつくばって進んだり、約20時間かけて北朝鮮から韓国に入国し、ユン・セリに会いに来たリ・ジョンヒョク
B:2週間の合宿中、こっそり抜け出して家に戻り、タインが泣きながらサラワットのぬいぐるみに話しかける姿を柱の陰から見つめるサラワット

〔つきっきりで看病〕
A:ユン・セリがリ・ジョンヒョクをかばって撃たれ、致命傷を負い、生死の境をさまよう。一時危篤状態に。リ・ジョンヒョクが不眠不休で見守る
B:タインが朝食を抜いて、サッカーの試合の最中に倒れて病院に運ばれ、サラワットが病室でつきっきりで見守る

〔相手の体を気遣い…〕
A:北朝鮮に帰る前に、ユン・セリの体を思いやって冷蔵庫にキムチや野菜など食料を大量にストックしておいたリ・ジョンヒョク
B:合宿に行く前、タインの体を気遣い、大量の野菜ジュース(おそらく番組スポンサーの商品)を冷蔵庫にストックしておいたサラワット

〔離れたくない…〕
A:軍事境界線で号泣しながら別れのシーン。何度も抱き合って引き離され、連行されるリ・ジョンヒョク
B:サラワットが合宿に出発する日の朝、キスしようとしたところ、部活の先輩が迎えにきてイラッとするサラワットとタイン

〔相手が寂しくないように…〕
A:北朝鮮と韓国で離ればなれになったあと、リ・ジョンヒョクが韓国にいるあいだに用意していた1年分の日時設定メールが毎日ユン・セリのもとに届く
B:サラワットが2週間の合宿の間「寂しくなったら見て」と言った動画を再生するタイン。「帰ったら好きだと言うよ」といったエモいサラワットのメッセージに泣く

「萌え」に「深刻さ」は要らない

改めて、なんとも対照的な2作です。2人の間を阻むものは、『愛の不時着』では韓国と北朝鮮の間の軍事境界線ですが、『2gether』ではタインの兄が貼った黄色いテープの線です。なぜでしょう、 深刻度が低いほど萌え感に浸れます。

もし『2gether』に銃撃シーンとか心肺蘇生シーン、外国に別離という展開が入ってきたら、視聴者のうち何人かはショックで命を落としてしまうかもしれません。萌えに深刻さが加わると、心臓がもたない恐れがあります。ただでさえ、配信当日は「死ぬ」「無理」という感想がSNSに溢れているので……これ以上の刺激は禁物です。

温度差は違いますが、この2つのドラマには音楽という共通点もあります。ピアニストを目指していたリ・ジョンヒョクと、軽音部でギターを弾くサラワットとタイン(ときどき作曲)。『愛の不時着』のように海外に出ることもなく、『2gether』の舞台は大学とその周辺の範囲におさまっています。海外に行ったりバンドがメジャーデビューしてしまうと互いに遠い存在になってしまう……「2gether」の半径数十キロ圏内の狭い舞台はサンクチュアリとなり、萌えという感情を醸造しているのです。

延々と部活の話で、波風が立っても小さく、平和な空気が保たれている『2gether』。同様に、ピースフルでユルい空気にタイのBLカップルたちが守られ、今後も萌えを供給してくれることを願います。

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