
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で福岡県立高出身の左腕が米国のマウンドに立つ。日本代表「侍ジャパン」の今永昇太(29)=DeNA=は北九州市の北筑高に2009年に入学。当時は165センチと細身だった。1年秋から監督になった井上勝也さん(41)=現香住丘高監督=は「腕立て伏せが10回もできなかったが、それでもフォームがきれいで体にしなりがあった」と素質を見抜いていた。
担任でもあった井上さんが語る性格は「お調子者」。2年秋の新人戦では直球を過信し、変化球を全く投げずに打ち込まれた。「かなり怒りました。スピードガンとの対決ではないから、チームのことを考えて試合をつくりなさいと」
3年生になると、球速が130キロ台前半から142キロまで伸びるなど急成長。その要因に井上さんは「探究心」を挙げる。ある日、今永はグラウンドにブロックを並べてジャンプを始めた。テレビで紹介されていた他校のエースがやっていた練習方法だった。「情報を集めていろいろな練習法を見つけて試していました。今永には練習しろと言ったことはないです」。あるときは上半身をひねるトルネード投法にフォームを変えていた。前年の甲子園で春夏連覇を果たした興南高(沖縄)のエース島袋洋奨をまねたという。「すぐにやめさせました」と井上さんが笑うほど何でも吸収しようとする姿勢があった。
高校時代、井上さんは「いつでもエースであれ」という言葉を今永に贈った。「いつでも見られているんだという意味を込めたんです」。WBCでは韓国戦で1点リードの場面で登板し3回1失点の好投で流れを引きよせた。準々決勝のイタリア戦も1回を投げ2奪三振の投球で相手の勢いを止めた。「これからも積極的な投球をしてくれたら」。世界で大きな仕事を果たす教え子を楽しみに見守っている。(前田泰子)
西日本スポーツ